【週刊プラグインレビュー】ADPTR AUDIO / SCULPT
今回はADPTR AUDIOの新作プラグイン SCULPTを紹介します。
まず、簡単な製品デモをご覧ください。
サウンドサンプルはこちら
総評
彫刻のようにオーディオのエンベロープを彫像できる頼れる誠実な先輩って感じです。頭の中に思い描いている理想のアタック・サステイン・リリースがあれば、ほぼそれを実現できます。
後述する様々なシステムによって圧倒的にクリアな聴き心地を実現しているため、ミックス前の素材の荒編集から、マスタリングでのダイナミクスコントロールまで幅広い業務に対応しています。
デジタルプロセッサの利点を生かした細やかなダイナミクスコントロール、トーンコントロールはこれからの音像の在り方・音の作り込みを提案してくれているようにも思えます。
しかしながら、モジュールの入れ子構造になっているプラグイン構成・見慣れないツマミや歪みが無さすぎる聴き慣れないサウンドが原因で、非常にとっつきづらいプラグインになっています。
使い慣れていけば、それらが計算され尽くしたデザインであり、自由度高く音のコントロールのために必要な要素だったと気づけるはずです。
なので、今回のレビューではできる限り機能を噛み砕いて、とっつきづらい部分の解消を行い、とにかく触ってみてもらえるように心がけていきます。
個人的に、SCULPTはリズムシーケンスやループの整地・ピアノやオフマイクのサウンドデザイン等に活躍しています。
音階やリズムが譜面としては合っているんだけど、曲中に上手く納めようと思った時に、トランジェントやサステインが間違ってる素材ってありますよね?ひとりだけ描いている完成図が違うというか・・・。
フレーズとしては合っているはずなのに、どのフェーダー位置にしても楽曲としておさまらないアイツです。
立ちすぎてるハイハット・アタックしかないアコギ・リリース長すぎるピアノ・オーバーコンプなバックコーラス・まとまりの悪いオフマイク etc…
それらを整理して、楽曲を"素材の寄せ集め"ではなく、"合奏"に聞かせるためのツールだと今では思っています。
概要
SCULPTは、多機能ルックヘッド・ダイナミクス・プロセッサ / ブロードバンド・ダイナミクス・プロセッサと公式では名付けられています。
従来のコンプレッションに新しいレベルの透明性と柔軟性を加え、全く新しいコンセプト、広範なメーター、直感的なインターフェイスを搭載しています。SCULPTは以下の4つのモジュールを並列で備えています。
アップワード&ダウンワード コンプレッション / エクスパンション
トーンバランス補正機能
トランジェントプロセッサー
これらのツールを使うことで、目指すべきエンベロープをデザインしていくことになります。
今回のSCULPTは、ADPTR AUDIOが開発する3つ目のプラグインになります。
1つ目は、リファレンストラックとの比較ツールMetricAB
https://www.plugin-alliance.com/en/products/adptr_metricab.html
2つ目は、ラウドネスレベルの監視・調整を行うStreamliner
https://www.plugin-alliance.com/en/products/adptr_streamliner.html
今回は初めて直接音に変化を加えるラグインです。
使ってみた印象としてはいかにもADPTRっぽい律儀で誠実な音の仕上がり。
ADPTR AUDIOの企業理念を理解すると、よりプラグインが楽しく深く扱えるので引用させていただきます。
要約すると、私たちは道具を作っているんだけど、道具もまた我々を形作ってくれるように、人間と扱う道具の間には相互関係があるよね、って話。
で、ADPTRとしてはそういった関係性に着目していて、どうやったらツールによって新しいインスピレーションと視点を与えられるのか、より早く目的を達成するにはどうしたら良いかを追求してプラグインのデザインを行なっていますよ、という話になります。
人間のクリエイティビティを削がないようなプラグインデザインを心がけているっていう時点でめっちゃ信頼できますよね。
確かに出音はいいんだけど、デザインや操作性が無茶苦茶で結局使うの止めるプラグインとかあるあるです。
こういった企業理念も含めて代表のMarc Adamoが製品を語ってくれている動画はこちら。長いのでお好きな人だけどうぞ。
基本構成
Gain History Graph
インプットとアウトプットでどのような信号の変化があったか履歴を表示する(表示スピードは秒数や小節数で指定可能)
灰色がインプット、赤がブーストされた部分、青がカットされた部分、白線がアウトプットMaster Gain Change Meter / Master Range Slider
オーディオのゲインの変化を縦軸で表示
レンジスライダーを調整することで、Sculptによるゲイン変化の最大量を決めるMaster Meters
現在のRMS値と入出力における変化を描画する
LRとMSモードの切り替えが行えるSelected Module Control Panel
選択しているモジュールの詳細な設定を行うMain Module Mixers
Sculptの4つのモジュールのコントロールを行う
選択したモジュールに応じて 7.Tone Areaの表示が変わるMaster Mixer Panel
マスターバイパス・ドライ/ウェット・ミッド/サイドのマスターコントロールを行うTone Area
現在選択されているモジュールに応じて、サイドチェインEQやトーンバランスを表示し、そのコントロールを行う
表示ルールはGain History Graphと同様Auto-Gain Panel
Sculptの特徴である先進的なオートゲインシステムをコントロールするSystem Bar
マスタープリセットの選択やオーバーサンプリング等の設定を行う
特に他社製品にないポイントとして、楽曲のセクションに合わせてプリセット保存ができるオートゲインセクション・周波数バランスにどのような影響を与えたかを視認するTone Areaが挙げられます。
SCULPの特徴
どのポイントでSCULPTを使用するのか?
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