【週刊プラグインレビュー】Waves / L2 Ultramaximizer
今月はWavesから販売されているブリックウォールリミッター「L2 Ultramaximizer」(以降L2)についてレビューをしていきます。
今更です。
今更Waves L2です。
各種リミッターが出揃った2023年にわざわざL2を使うという意味に関して少し考えてみたいと思います。
2Mixに対するL2での処理
11年前に公開された2MixへのL2の使い方はこちらをご覧ください。
去年公開されたWavesのリミッターシリーズの紹介はこちらをご覧ください。
動画内でも説明されている通り、
リミッターはSuper fast Compressor with High ratioと捉えられます。
突出したピークを叩きピークレベルを均一化します。
その際にBite / Crunchと表現される歪みが発生するのですが、そのキャラクターが各社プラグインによって異なるので、それがプラグイン選択の理由になります。
近年ではマスターに対しては割とクリーンめのリミッターが好まれる傾向にあり、fabfilter Pro-L2などが代表格として挙げられます。
Waves L2は古いプラグインなのもあって「L1よりは歪まないんだけど、流石に現代だと使えない音だなぁ・・・」というのが個人的な印象でした。
良くも悪くもCD全盛期のサウンド感というか。
最近のサウンドにとっては流石に時代遅れすぎるかーとも思っていたのですが、2Mixへの使用とは異なる形でWaves L2の姿を多く見かけるようになりました。
それはトラック単位でのリミッティング・説得力のある歪みを作るためのL2です。
トラックに対するL2での処理
例えばCLAによる、バッキングギターのバスに対してのリミッティング
(この動画ではL1ですが、Mix With The Masters等で使用が確認できます)
Vocalのピークコントロール
Illangeloの各トラックでのピークコントロール
特にIllangeloのケースは驚きました。
The WeekendやPost Malone, Fall Out Boyなどのバッキバキに新しいサウンドをプロデュース・ミキシングしている彼が使っているとは・・・。
Slate Digital VCCでのクリッピングを多用していた彼が今L2を使っているのには何かきっとワケがあるのだろう!と思ったのが今回のレビューの大きな動機になりました。
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概要
ぶっちゃけ公式のこの記事を読めば全ておさらいできるのですが、改めてWaves L2の特徴をおさらいしましょう。
※ここからは筆者の勉強も兼ねてL2に関する基礎知識が続くので、実践的な話を先に読みたい方は有料部分まですっ飛ばしてください。
L2-Ultramaximizerは、高性能なリクォンタイザとIDR(Increased Digital Resolution)と呼ばれるディザリングシステムを組み合わせ、音のピークを制限しながらレベルを最大化するツールです。
L2を理解するためには2つのデジタルオーディオに関する知識を知っておく必要があります。
1.ピークコントロールを介したデジタル信号の最大レベル
デジタル信号の最大レベルは、ファイル内の最も高いピークによって定義されます。
単純なノーマライゼーションを行う場合は、最も高いピークを見つけ、このピークが最大値になるように全体の信号を上げます。しかし、これらのピークの多くは非常に短いものであり、通常は最小限の聴覚的な副作用でレベルを数dB下げることが可能です。
これらのピークを透明に制御することで、通常のノーマライズよりもファイルの全体のレベルをさらに数dB上げることができ、平均信号レベルを高めることができます。
L2は、先読み技術を使用してオーバーシュートの可能性を排除し、信号のピークを予測して再形成する方法を採用しており、聴覚的なアーティファクトを最小限に抑えます。
2.ディザリングとノイズシェイピングを介した信号の最大解像度
デジタルオーディオの信号を処理する際、オリジナルのデジタルデータが変化すると、通常、その信号を表現するために必要なビット数が増加します。プラグイン内部で行われるビット数の切り詰めは、信号の詳細度(解像度)を失う結果となります。
人間の耳は、ビット数を元にステレオ音場を感じます。そのため、この領域でのビット数の妥協は音場の広がりや透明性の喪失として音に現れます。
それを避けるためには、信号を適切にディザリングしノイズを整える必要があるので、L2ではIDRを使って処理を行なっています。
なぜL2を使うのか
適切なディザリングとは簡単に言えば、信号に微小なノイズ(ディザ)を加えることです。
これにより、ビット数の切り詰めによる低レベルの歪みが、単純なヒスノイズに変換され、聴感上不自然なノイズが取り除かれます。ただし、バックグラウンドノイズはわずかに増加します。
Waves IDR
IDR(Increased Digital Resolution)は、WavesとMichael Gerzonによって開発されたWaves独自のノイズシェイピングディザーシステムで、処理中のデジタル信号の解像度を保持し、実際に増加させるための技術です。
IDRは、データを意図的に48ビットから24ビット、24ビットから20ビットなどに再量子化する場合に特に役立ちます。
IDRをL2内で活用することで、最終ファイルの準備、マスタリング、および量子化または再量子化の際に最適な結果を得ることができます。
ちょっと正直デジタルオーディオに関する知識が疎いので、細かく説明できる自信はないですが、ピークレベルのコントロールとビット数の変換においてL2は優れてるとこあるぜ!って話ですね。(ざっくり)
L2の使い方
おそらくメインコントロールやARC(Auto-Release Control)に関しては皆さん慣れてらっしゃると思うので割愛して、主にIRCの使い方を説明します。
DITHERの選択
L2には、2つの種類のIncreased Digital Resolution(IDR)ディザーテクノロジーがあります。
[Type1]非線形歪みがない
[Type2]ディザーレベルが低い
どちらを選ぶべきかは最終的な2Mixの理想像によって異なります。
[Type1]は、これは「純粋主義」のテクノロジーです。低レベルでの非線形歪みや変調ノイズを生じないように設計されており、最適なディザーノイズと心理音響ノイズシェイピングを組み合わせています。
[Type2]は、ノイズの追加量を最小限に抑えるように設計されています。その結果、Type1よりもノイズレベルが低くなりますが、一部の低レベルの歪みが発生します。
SHAPINGの選択
聴感上不快なノイズと知覚されるノイズ量を減少させ、知覚される音楽の解像度を増加させる方法は、ノイズの形状を変化させることです。
基本的に、ノイズシェイピングはノイズのエネルギーを、私たちが聞こえにくい周波数範囲に移動させます。
L2のIDRセクションで提供されているノイズシェイピングの3つのオプションは、ノイズのエネルギーを15 kHz以上の高い周波数に押し上げ、私たちの耳が最も敏感でない範囲で低い周波数のノイズエネルギーを減少させます。
[Moderate]は最も軽いノイズシェイピングカーブです。
[Normal]はほとんどの状況ですべてのビット深度に対して推奨されるオプションです。
[Ultra]は非常に高品質な設定で、高品質なデジタルメディア向けにマスタリングされた高解像度ファイル(16ビット以上)の最後の段階でのみ使用することができます。
仮に信号が再び処理されるかデジタルで編集される場合、比較的高い高周波数エネルギー量が望ましくない副作用を引き起こす可能性が理論的に考えられます。したがって、Ultraはファイルの準備の最後の段階で使用するのが最適です。
選択の行い方
同じ素材を、IDRの両方のタイプと異なる種類のノイズシェイピングで聴いて、IDR技術の効果を試してみてください。
調査するのに最も明確な箇所は、音の終わり、または「テイル」中の音符やリバーブです。この時間に量子化誤差が聞こえやすいです。
ディザリング全般については非常に微妙な問題ですので、高品質な音源(できれば20ビット、ダイナミックレンジが広いもの)の比較的長いオーディオ(2-3分程度)を聴くことをお勧めします。ジャズやクラシックの録音が理想的です。
IDRとノイズシェイピング設定のトレードオフが完全に理解できない場合、CDマスタリングには通常、[Type1]と[Normal]のノイズシェイピングがうまく機能します。
16ビット以上のファイルには、最小のノイズを求める場合は[Type2]+[Ultra]、最大の解像度を求める場合は[Type1]+[Ultra]が適しています。
とまぁ色々書いてきましたがぶっちゃけわかってません。
まぁなんとなし出音で判断すればオッケーだと思います笑
2Mixに使うのかトラックに使うのかでもかなり印象は変わりますしね・・・。
実際にどんな変化があるのか、使い場所によってどのように設定を変えていけば良いのかは次項で検証していきます。
検証
さて、実際に音を聞きつつL2の検証をしていきたいと思います。
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