日商簿記検定2級攻略④~手形・電子記録債権~

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1 はじめに

 今日、手形決済は近年のペーパーレス化により、使用頻度が大幅に削減されており、試験範囲も縮小傾向にあります。これに対し、電子記録債権という新しい項目が最近の試験範囲に追加されました。では、早速両者について学んでいきましょう。

2 クレジット売掛金

 商品をクレジットカードなどで販売した場合はには、売掛金と区別するために「クレジット売掛金」勘定で帳簿処理をします。また、販売会社またはカード会社に手数料を払うため、販売時に手数料を計上します。
 なお、カード会社は、販売会社に代わって購入者から売上代金を回収し、販売会社はカード会社から手数料を差し引いた残額を受け取ります。
 ⑴ 商品販売時
   カード会社に対する債権を「クレジット売掛金」勘定で処理すると同時に、カード会社に対する手数料は「支払手数料」勘定で処理します。
 (借)クレジット売掛金 ×××(貸)売上 ×××
    支払手数料 ×××
 ⑵ 代金受取時
   カード会社から手数料を差し引かれた手取り金を受け取った時に、「クレジット売掛金」勘定を減少させます。
 (借)当座預金 ××× (貸)クレジット売掛金

3 手形

 手形とは、一定の金額(手形代金)を一定の期日(満期日)に一定の場所で支払うことを約束した手形証券をいい、約束手形と為替手形がありますが、約束手形のみが出題範囲となっています。
 ⑴ 約束手形の帳簿処理
   手形の振出人は手形債務者となり、手形の支払期日(満期日)に手形金額を支払うことから、約束手形の振り出し時に「支払手形」勘定の貸方にその手形金額で記入し、支払時には借方にその支払額を記入します。
   手形の名宛人はその指図人(裏書譲受人)は手形債権者となり、手形の受入れ時に「受取手形」勘定の借方に手形金額で記入し、満期日にその回収額を貸方に記入します。
   なお、「支払手形」は、「主たる営業取引から生じた手形債務」を表す勘定科目であり、「主たる営業取引以外から生じた手形債務」(固定資産の取引に伴う支払なそ)の場合は、「営業外支払手形」を使用します。受取手形も同様です。

 問1-1 ㈱Aは㈱Bから商品10,000円を仕入れ、代金は約束手形でを振り出して支払った。
 答1-1(借)仕入 100,000(貸)支払手形100,000
 問1-2㈱Aが㈱Bに振り出した約束手形10,000円の支払期日が到来し、当座預金口座から引き落としされ、㈱Bは当座預金で取り立てた(両者の仕訳)
 答1-2
 ㈱A側(借)支払手形 10,000(貸)当座預金 10,000
 ㈱B側(借)当座預金 10,000(貸)受取手形 10,000

 ⑵ 手形の裏書・割引
   手形を裏書き譲渡した場合あ取引銀行で割り引いた場合には、「受取手形」を直接減額する帳簿処理を行います。
   なお、手形の支払人が満期日に無事決済出来れば、裏書譲渡又は割引した手形は何ら債権・債務が少女ないが、その手形が不渡りになった場合には、裏書等をした裏書人(当社)が手形代金を支払う義務を負うことになります。
   このため、債務を保証することによる危険性を時価で評価し、時価相当額を「保証債務」(流動資産)とするとともに、同額を「保証債務費用」(営業外費用)に計上します。
   その後、裏書譲渡又は割引した手形が無事に決済された場合でも、不渡りになり手形代金を支払った場合でも手形遡及権は消滅するので「保証債務取崩益」(営業外収益)を計上し、保証債務を取り消す処理を行います。

例題 次の一連の取引の仕訳を示しなさい
問2ー1 当期に㈱Bから商品代金10,000円の支払のために受け取った同店振出の約束手形を銀行で割り引き、割引料100円を差し引かれ、手取金は当座預金とした。なお、割引時における保証債務の時価は、手形額面金額の1%である。
問2-2 上記の約束手形が無事決済された旨の通知を受けた。
答2-1(借)当座預金  9,900 (貸)受取手形 10,000
       手形売却損  100
       保証債務費用 100    保証債務 100
答2-2(借)保証債務 100(貸)保証債務取崩益 100

 ⑶ 手形の不渡り
   手持ちの手形が不渡りになった場合は、「受取手形」から「不渡手形」に振り替えるとともに償還請求に要した諸費用を「不渡手形」い含めます。償還昇給に要した諸費用を「不渡手形」に含めるのは、これらの費用が手形債務者の負担に帰すべきものであるからです。
  イ 不渡手形発生時の処理
  (借)不渡手形 12,000(貸)受取手形 10,000
                現金   2,000
  ロ 不渡手形代金を回収した場合
  (借)現金 13,000(貸)不渡手形 12,000
             受取利息 1,000
  ハ 不渡手形代金が回収不能となった場合
       上記イの不渡手形代金が回収不能となり、貸倒れとなった場合
  (借)貸倒損失 12,000(貸)不渡手形 12,000

   次に、裏書手形及び割引手形が不渡りとなり、裏書又は割り引いた時に「保証債務」を計上していた場合には、不渡り発生時に手形遡及義務は消滅するので、「保証債務」を消去して「保証債務取崩益」を計上します。
  ニ 不渡手形発生時の処理(保証債務あり)
  (借)不渡手形  12,000(貸)受取手形 10,000
                   現金   2,000
     保証債務費用 120   保証債務費用 120

例題 次の一連の取引について仕訳を示しなさい
問3-1 ㈱Bから商品売上代金の支払のために受け取った同店振出しの約束手形10,000円が不渡りとなった。
問3-2 上記の不渡手形について、支払拒絶証書の作成費、通知日など1,000円を現金で支払った
問3-3 ㈱Bから手形金額、諸費用とともに約定利息2,000円を同店振出の小切手で受け取り、直ちに当座預金に入れた
問3-4 ㈱Cが当店宛に振り出した約束手形100,000(当期に取得した)を取引銀行で割り引き、割引料6,000円を差し引かれ、手取金を同行の当座とした
なお、割引時における保証債務の時価は、手形額面金額の1%と見積もられた。
問3-5 上記の割引手形が不渡りとなった旨銀行から通知を受け、手形金額、償還請求の費用5,000円及び満期後の約定利息1,000円を請求されたので小切手を振り出して支払った。同時に㈱Cへの同額の償還請求をした。
問3-6 ㈱Cは破産のため、上記償還請求金額全額の貸倒れが決定した
答3-1(借)不渡手形 10,000(貸)受取手形 10,000
答3-2(借)不渡手形 1,000(貸)現金 1,000
答3-3(借)当座預金 13,000(貸)不渡手形 11,000
                  受取利息 2,000
答3-4(借)当座預金  94,000 (貸)受取手形 100,000
       手形売却損  6,000 
       保証債務費用 1,000    保証債務 1,000
答3-5(借)不渡手形 106,000(貸)当座預金 106,000
       保証債務 1,000    保証債務取崩益 1,000
答3-6(借)貸倒損失 106,000(貸)不渡手形 106,000

4 電子記録債権・電子記録債務
  電子記録債権・債務とは、発生・譲渡について電子記録を要件とする金銭債権・債務をいい、電子記録債権記録機関に発生の登録を行うことで発生します。売掛債権や手形債権と比較すると、作成・交付・保管コストの削減(印紙税は不課税)や紛失・盗難リスクを回避することができる特徴があります。
 ⑴ 電子記録債権・電子記録債務の発生
    電子記録債権・債務の発生記録が行われた場合は債権者は本来の債権である「売掛金」や「受取手形」勘定を「電子記録債権」に振り替えます。また、債務者は本来の債務である「買掛金」や「支払手形」勘定を「電子記録債務」に振り替えます。
 
 ⑵ 電子記録債権の譲渡
   電子記録債権を譲渡する場合には、電子記録債権の譲渡人が電子記録債権記録機関に「譲渡記録の請求」を行い、電子債権記録機関が記録を行うことで譲渡の効力が生じます。電子記録債権の債権金額と譲渡金額が異なる場合は、その差額を「電子記録債権売却損益」勘定で処理します。
 ⑶ 電子記録債権の消滅
    債務者の預金口座から債権者の預金口座に支払が行われた場合、電子記録債権記録機関で記録が行われ、電子記録債権は消滅します。

問4-1 ㈱Aは㈱Bに対する売掛金100,000円について電子記録債権の発生記録を行った
問4-2 ㈱Aは上記電子記録債権のうち、80,000円を㈱Bの承諾を得て銀行に75,000円で譲渡し、代金は当座預金に振り込まれた。
問4-3 ㈱Aは㈱Bから残りの代金について当座預金に振り込まれた
答4-1(借)電子記録債権 100,000(貸)売掛金 100,000
答4-2(借)当座預金 75,000  (貸)電子記録債権 80,000
       電子記録債権売却損 5,000
答4-3(借)当座預金 20,000(貸)電子記録債権 20,000

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