日商簿記検定2級攻略⑤~引当金~
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1 はじめに
2 貸倒引当金
貸倒引当金とは、期末における受取手形、売掛金、貸付金などの金銭債権について、翌期における貸倒れの見込額として計上する貸方項目の勘定項目です。
⑴ 貸倒引当金と貸倒引当金繰入額
当期以前において発生した受取手形、売掛金、貸付金などの金銭債権のうち期末時点で保有されるものは翌期以降に回収されますが、債務者の財務状況によっては保有する債権の全額が回収されるとは限らず、その一部が回収不能、つまり、貸倒れとなる可能性があります。
しかし、当期末の金銭債権が翌期以降に貸倒となった場合、その発生した当期の費用とすると適正な期間損益計算の観点からは不適切であるため、当期に 負担すべき額を費用として 見積計上するとともに、債権金額から貸倒れの見積額を控除して貸借対照表に計上する必要があります。その際、当期の負担額を損益計算書に見積計上する費用項目を示す勘定科目が「貸倒引当金繰入額」であり、債権金額から控除される貸倒の見積額を示す貸方項目の勘定科目が「貸倒引当金」であります。
⑵ 貸倒見積高の算定
受取手形、売掛金、貸付金などの金銭債権の貸借対照表価額は、取得金額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とされています。
貸倒見積高は、金銭債権に過去の貸倒実績率等を乗じて算定します。ただし、回収できる可能性が低い金銭債権については、他の金銭債権と区別して、個別に回収可能額を見積、貸倒見積高を算出します。
⑶ 貸倒時及び貸倒処理済の債権回収時の処理
債権が生じたのが、当期が前期以前であるかにより、会計処理が異なります。
イ 当期に発生した債権が貸し倒れとなった場合は「貸し倒れ損失」として処理します
(借)貸倒損失 ××× (貸)売掛金 ×××
ロ 前期以前に生じた債権が貸倒れとなった場合は、同債権に貸倒引当金が設定されていることから、その貸倒引当金から貸倒額を控除し、設定していた引当金に不足が生じた時にはその不足額を「貸倒損失」として処理します。
(借)貸倒引当金 ×××(貸)売掛金 ×××
貸倒損失 ×××
ハ 前期以前に生じた債権で過年度に貸倒処理済みの債権が回収された場合は、「償却債権取立益」として処理をする
(借)現金預金 ×××(貸)償却債権取立益
※ 当期に、貸倒処理した債権を当期に回収した場合には、「貸倒損失」を減額します。
⑷ 貸倒引当金の設定(差額補充法)
期末債権の貸倒日つもりだかと貸倒引当金残高(決算整理前)を比較して、貸倒見積高が貸倒引当金残高(決算整理前)より多い場合はその差額を「貸倒引当金繰入額」として費用計上し、貸倒見積高が貸倒引当金の期末残高(決算整理前)より少ない場合はその差額を「貸倒引当金戻入益」として戻し入れます。
[期末債権の貸倒見積高>貸倒引当金残高(決算整理前)の場合]
(借)貸倒引当金繰入額 ×××(貸)貸倒引当金 ×××
[期末債権の貸倒見積高<貸倒引当金残高(決算整理前)の場合]
(借)貸倒引当金 ×××(貸)貸倒引当金戻入益 ×××
例題 決算にあたり期末売掛金残高1,000,000円に対し3%の貸倒引当金を設定したときの仕訳をしなさい
問1-1 貸倒引当金残高が0のとき
問1-2 貸倒引当金が10,000円あるとき
問1-3 貸倒引当金が40,000円あるとき
問1-4 翌期において売掛金40,000円が貸倒れとなった場合の仕訳
問1-5 翌期において売掛金10,000円が貸倒れとなった場合の仕訳
3 返品調整引当金
返品された商品は再利用できるため、実際の損失は販売益部分に限られます。したがって、販売益に相当する金額について引当金を計上します。
なお、「返品調整引当金繰入額」は、損益計算書に置いて売上総利益の向上項目という形式で表示します。
⑴ 決算時の処理
翌期以降に返品が予想される商品の販売益について「返品調整引当金」を繰り入れます。
(借)返品調整引当金繰入額 ×××(貸)返品調整引当金 ×××
⑵ 返品受入れ時の処理
返品された商品の原価を「仕入」勘定で処理し、販売益部分は引当金を取り崩します。
(借)仕入 ×××(貸)売掛金 ×××
返品調整引当金 ×××
4 売上割戻引当金
売上割戻とは、得意先との特約がある場合に、一定期間に多額又は多量の取引をした得意先の販売金の一部を免除することです。将来予想される売上割戻に備えて設定する引当金が「売上割戻引当金」です。
なお、「売上割戻引当金」は、損益計算書に置いて売上高から控除します。
⑴ 決算時の処理
翌期に予想される売上割戻高を見積もり、「売上割戻引当金」を繰り入れます。
(借)売上割戻引当金繰入額 ×××(貸)売上割戻引当金 ×××
⑵ 売上割戻時の処理
「売上割戻引当金」を設定した前期以前の売上について売上割戻を行った時は、「売上割戻引当金」を取り崩します。
(借)売上割戻引当金 ×××(貸)売掛金 ×××
5 商品保証引当金
販売した商品について故障があった場合に、一定期間内であれば、無料で修理を行うこと保証する契約を締結することがあります。この場合、当期に販売した商品に対する保証費用が 翌期以降に発生する場合に備えて設定する引当金が「商品保証引当金」です。
⑴ 決算時の処理
翌期以降に発生する保証費用の額を見積もり、「商品保証引当金」を繰り入れます
(借)商品保証引当金繰入額 ×××(貸)売上割戻引当金 ×××
⑵ 支払時のの処理
「商品保証引当金」を設定した分について、保証期間中に修理を行った時は、その支払額を「商品保証引当金」を取り崩します
(借)売上割戻引当金 ×××(貸)売掛金 ×××
6 修繕引当金
翌期以降に修繕が予定されている場合に備えて設定する引当金が「修繕引当金」です。
⑴ 決算時の処理
翌期以降の修繕費の額を見積、「修繕引当金」を設定します。
(借)修繕引当金繰入額 ×××(貸)修繕引当金 ×××
⑵ 支払時の処理
修繕引当金を設定した分について修繕費を支払ったときは、「修繕引当金」を取り崩します
(借)修繕引当金 ×××(貸)現金預金 ×××
7 退職給付引当金
「退職給付引当金」はとは、従業員が退職したときに支払う退職金や年金を見積、これに備えて設定する引当金です。
⑴ 決算時の処理
当期負担分の退職給付費用を「退職給付引当金」勘定に設定します
(借)退職給付費用 ×××(貸)退職給付引当金 ×××
⑵ 退職者に退職一時金を支払った時の処理
(借)退職給付引当金 ×××(貸)現金預金 ×××
8 おわりに
いかがでしたでしょうか、2級の範囲では、簡易の金額の算定になっておりますが、1級、簿記論となると複雑な計算が出題されます。その基礎として、勘定科目だけは必ず2級で覚えてください。
例題解答
答1-1(借)貸倒引当金繰入額 30,000(貸)貸倒引当金 30,000
答1-2(借)貸倒引当金繰入額 20,000(貸)貸倒引当金 20,000
答1-3(借)貸倒引当金 10,000(貸)貸倒引当金戻入益 10,000
答1-4(借)貸倒引当金 30,000(貸)売掛金 40,000
貸倒損失 10,000
答1-5(借)貸倒引当金 10,000(貸)売掛金 10,000
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