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唐突にホタルを見に行った話【後編】

日が暮れてから、いよいよナイトツアーに参加した。ホタルの前に、星がすごい。満天の星とはまさにあのことだ。天の川まで見えたんだから。人工衛星が通り過ぎていくのも見えた。タイミングが良ければ、人工衛星よりも明るい宇宙ステーションが見えることもあるらしい。ツアーバスを降りて少し歩く途中、大きな流れ星も見えたらしい。全く違う方を見ていて、残念ながら見逃してしまったが。

茅葺き屋根の通りは軒並み灯りが消えていて、屋根と空の境が見えないほど真っ暗になっていた。いよいよ昼間に行っておいて良かった、と思った。星はかなり綺麗だったけれど、そこでは結局、ホタルは見つからなかった。時期的にギリギリだったみたいだし、ガイドさんによるとやはり年々数が減っているらしいし、仕方ないか、最近夜に曇る日が多かったらしい中、星があれだけ見えただけでもよしとしよう、と半ば諦めて宿へもどる途中、ふとガイドさんがツアーバスを停めた。降りてすぐに、バスの全ての明かりが落とされたから周りがよく見えなかったけれど、あそこは恐らく大きめの橋の上だった。ホタルがいる可能性があるとのことで、みんなでしばらく上の方を見ていたら、いた。少し遠くで光っていたから、最初は星かと思った。淡く黄緑色に光りながら飛んでいて、単純に、うわあ本物だ、という感想が一番先にきた。やはり、実体験に勝る知識はない。一匹見つけたらもう目が慣れて、次々周りに飛んでいるのが見えてきた。ゲンジボタルもヘイケボタルも両方いた。光り方の違いで見分けられる。中にはこちらへ近づいてくるものもいて、同じツアーに参加していた小さい子が大喜びしていた。バスに乗り込むとき、数匹バスにくっついているのも見えた。人間のせいで滅びかかっているというのに、ちょっと警戒心が薄すぎやしないか。まあ、乱獲みたいな直接的な要因よりも、河岸の護岸工事なんかの間接的な要因が大きそうだから、不思議でないといえば不思議でないのかもしれないが。

それからこれは余談だが、翌日、宿で出た朝ごはんの焼き鮭があまりにも美味しくて、もしもいつか鮭に転生するようなことがあったら、川で天寿を全うするかここの焼き鮭になりたいかもしれない、と思うほど美味しかった。

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