唐突にホタルを見に行った話【前編】
唐突にホタルを見たくなって、前回の投稿をしたあと少し寝てから、本当に福島県まで行ってきた。とはいえ、当然ながらホタルは夜に見たい生き物だ。現地には昼ごろ着いてしまったので、記事は二つに分けることにした。今回は日が暮れるまでの暇つぶしの話だ。本題であるホタルを見に行くナイトツアーの話は、次回の更新を待って頂きたい。多分、二日か三日以内くらいに出るはずなので…。
ひとまず、一番近くにあったので猪苗代湖に寄った。日本で四番目に大きい湖らしい。トップが琵琶湖で、二番目が確か霞ヶ浦で、三番目がどこだったかな…。北海道かどこかの湖だった気がする。四番目とはいえ十分大きくて、普段あんなに大量の水を目にできるところに住んでいないから、しばらく水面を眺めてみて、やっぱり水って面で動くんだな、という変な感慨があった。近くまで降りられるところがあったので、水をちょっと触ってみた。ぬるい。大きい白鳥の遊覧船が見えたので、夜まで暇だし乗ってみようと思ったら、どうやら機械の調子が悪かったらしく、今から戻って来る亀型の遊覧船を待ってくれ、とのことだった。近くにいた客の一人が、一緒に来た人に向かって「白鳥は熱中症だってよ」と言っているのが聞こえた。言い得て妙だと思った。遊覧船の中で爆音でかかっていた、湖周辺の地域の文化の話や、植生・生態系の解説が面白かった。マリモに近い、珍しい水生植物があるらしい。突然朗読劇みたいなものが始まったりもした。住民を困らせる化け物がいて、お坊さんが機転を利かせて退治する、というよくあるタイプの現地の民話だった。化け物の声に尋常じゃないほどのエコーがかかっていてほとんど聞き取れなくて、思わず少し笑ってしまった。
まだ時間があったので、今回申し込んだナイトツアーの場所を明るいうちに見に行ってみることにした。茅葺き屋根の建物が、用水路のついた広めの道の脇に立ち並んでいる場所で、それぞれの建物がお土産屋さんや食べ物屋さんになっている。比較的標高の高いところだったからか、用水路の水は冷たかった。道に面した軒先に、鮎の塩焼きとか工芸品とかご当地お菓子とか、色々並んでいるのを冷やかしながらふと目を上げると、屋根に植物が生えていた。種名はわからないけれど、茎が太めで、下手すると小さい木に分類されそうな、結構しっかりした「植物」だった。えっ、栄養源はどこから、茅が吸った雨だけで育つものなのか、とか思いながら振り返ったら、数軒後ろの家の屋根にオレンジの百合が生えていた。なかなか面白いものを見た。せっかくだから、みそ団子を買って食べた。外がしっかりめの食感で、中がふわふわしていて美味しかった。夜にはお店が閉まっているらしいので、昼に一度来ておいて本当に良かった、と思った。(続く)