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Classic Movie Reading Vol.1「ローマの休日/自転車泥棒」を観覧して

Classic Movie Reading Vol.1「ローマの休日/自転車泥棒」を配信にて視聴しました。
11/4 14:00公演の感想です。
前半はローマの休日、
ローマの休日はWキャストで、11/4はジョー・ブラッドレー役を今井文也さん、アン王女役を中島愛さんが演じられました。
キャストさん達の声の演技もさることながら、台本をもつ左手に対して右手の動きが印象に残りました。
アン王女やおつきの人、大使といった役柄では腕をストンと降ろし、時には拳を握るなど
最低限の動きで気品や落ち着きを表現し、ジョー・ブラッドレーや市民の人々は手をポケットにつっこんだり、大きく手を動かしながら演技をされていて、街の活気や賑わいが伝わってきました。
アン王女を演じる中島さんが、眠る演技をされている時に伏し目をされたのですが、翌朝のジョーが通信社に行ったシーンに切り替わり後ろに下がっている間も伏し目を続け、前に出るシーンじゃなくても眠っている演技を続けていらっしゃられたのが丁寧に演技をされているなと思い、印象に残りました。
物語が進み、アン王女が初めて公務ではなく自分の意思でローマを歩くシーンで中島さんがとても楽しそうに声が弾んで、それに付いて行くジョーやアーヴィングも笑顔でこの一日がそれぞれにとって素敵な日になったんだなと温かい気持ちになりました。
それと同時にアンは王女であることを隠し、名前をアーニャと偽っていること、ジョーは新聞記者であること、独占スクープを狙って一緒にいることを隠していると思うと切なくなり、複雑な気持ちになりました。
夜になり別れのシーンで、もうお互いのことに気づいていても離れがたい、でもそれぞれの場所へ戻らなければいけないというシーンの今井さんと中島さんの掛け合いが切なくて、胸が絞めつけられる思いでした。
ラストの記者会見のシーンで王女と新聞記者に戻った二人が挨拶をする時、二人の恋は恐らく実らないのだろう、でも芽生えた気持ちには嘘は無いということが台詞の端々から伝わってきました。
ジョーに昨日撮った写真は好きにしていいと言われたアーヴィングが写真を封筒に入れ、アン王女に渡した時、一緒に過ごした時間は本物だったんだなという確信が中島さんの演技から伝わってきました。
個人的に太田さんのアン王女の大使、カメラマンのアーヴィング、そして市民の演じ分けが凄く分かりやすくて頭の中で場面転換がすっきり出来ました。
お一人で何役もこなされていたキャスト様方が、舞台の上で衣装やメイク等の視覚的な演じ分けが難しい中、声や口調、仕草で見事に演じ分けをされていているのをみるといつも凄いなと感動します。
後半は自転車泥棒、
序盤の森田さん演じるアントニオと維東さん演じる妻のマリアの会話の中で、息子のブルーノを演じている山本さんがアントニオとマリアに交互に目線を向けながら、嬉しい話題の時はパッと笑顔になり、困っている話題の時はえっ…というような表情をされたりと、台詞が無いシーンの間ずっと表情で演技をされていたのが印象に残りました。
その仕草からブルーノの純粋さや健気さが垣間見えて微笑ましくもあり、物語の背景である戦後という時代を思うと少し物悲しく感じたり、色んな感情を思い浮かべながら物語に入り込んでいきました。
アントニオが仕事に必要な自転車を買い戻すため、マリアが嫁入り道具だったシーツを全て質屋に持っていき、それが質に無事入れられた時も、これで自転車が買い戻せる、仕事が出来ると皆で喜んでいて、少し前のマリアの台詞「シーツが無くても寝られるでしょ」で受けた衝撃から繋がって希望が出てきて、私も嬉しくなりました。
物語が進み、アントニオがブルーノの頬を打つシーンは息をのむほど迫力がありました。
お父さんの自転車を取り返す為に一生懸命着いてきたブルーノの困惑と悲しみが「なんで打ったの!?」という台詞から、アントニオの家族の為にという責任感と自転車が見つからない苛立ちが「生意気ゆうな!!」という台詞からひしひしと伝わり、それがぶつかり合って観ていてとても辛いシーンでした。
その後の山本さんの「パパなんて大嫌いだ!!」の台詞にこれまでの辛い気持ち、悲しい気持ちが全部乗っかっているようで、きっとブルーノは本心で言ったのでは無いと思っているのですが、胸が苦しくなりました。
その後、アントニオから「寒くないか…?」
と静かに問いかけられたブルーノが「…うん」とぽつりと返事をし、そこから「疲れたか…?」「…うん」と会話をするシーンで、自転車を取り戻して仕事をしなければという重責に潰されそうになっていたアントニオが【お父さん】に、アントニオの助けになる為にたくさん我慢して頑張って辛くなってしまったブルーノが【子ども】に戻ったような気がして安心しました。
ですがその安心もつかの間、ラストでアントニオが追い詰められ自分が自転車泥棒をした後、ブルーノからどうして…!?という悲しみのこもった「パパ!?」という叫びや、捕まった父を見て「パパ…パパ…!!」と泣き出した山本さんの演技に、森田さんの表情が罪の意識に苛まれ、罪悪感でいっぱいのアントニオを表現されていて、辛くて辛くてたまりませんでした。
アントニオの罪が見逃されたのも、逆に見逃されたからこそ罰になっているのではないかと考えてしまうくらい辛いシーンでした。
物語の終わりはハッピーエンドではないけれど、森田さんと山本さんの演技から、アントニオとブルーノの絆やお互いへの愛情が伝わってきて、この父子が愛おしくなったラストでした。

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