見出し画像

住む家を決めずに留学した話

大学4年の夏、私はインドネシアへ留学した。
半年前から休学し、バイトをいくつか掛け持ちしながらお金を貯めた。留学先の大学と直接やりとりして、学生ビザの手続きも進めていた。英語とインドネシア語の勉強も欠かさなかった。

なんとかなる、そう実感していた。
お金もある程度は準備できたし、苦手に感じていた英語でもなんとかやりとりができていた。ビザの手続きがかなり遅れていたが、出国当日、空港に向かう途中に大使館で受け取ることができた。一人で海外は初めてだったけれど、お金と連絡手段さえあればなんとかなるでしょ、そんな軽い気持ちだった。

大学近くのホテルに到着してまずはじめにしたことは、現地で使うスマホを入手すること。日本から持ち込んだスマホは、海外で使うと料金をかなり取られるためなるべく使いたくない。そこで、持ってきたパソコンをWi-Fiに繋ぎ、必要そうなインドネシア語の単語をあらかじめメモ。それを持ってホテル近くのモールへ行き、ギリギリのインドネシア語で安いスマホを買った。容量はめちゃくちゃ少ないけれど、常に使える連絡手段は確保した。

次に私がしたことは、住む家を探すこと。
ホテルは2泊3日でとっていた。その間に下宿(コス)を探さねばならない。
まずは、どんなコスに住みたいかを考えた。トイレは部屋に備え付けがいいなとか、冷蔵庫もあったらいいなとイメージできたら、それを伝えられるように単語を調べてメモする。そしてそのメモを持って街をひたすら歩き回った。「Terima Kost」という看板がコスのサイン。見つけたら外から様子を伺い、綺麗そう、大丈夫そうと思ったら片っ端から中へ声をかけた。ただ、なかなかうまくいかない。やっと管理人のおじさんと仲良くなったと思ったのに、現地の大学の学生証をまだ持っていなかったためにその学生用のコスには入れなかった。日が暮れた。こうして一日が終わった。

なんとかなると思っていた私はここでやっと焦った。明日中にコスが見つからないとどうなるんだ私。さっき勢いで撮った管理人おじさんの写真を見ながら落ち込む。
とりあえず、パソコンを開く。コスの情報サイトがあるらしかったので片っ端から調べた。情報が正確なのか分からなかったが、とりあえず目星をつけた。明日は朝から歩くぞ、と決めた。

次の日。大きなモールのすぐそばにある通りを少し入ったところに、目星をつけたコスはあった。しかし、人がいない。声をかけようにも誰もいない。悲しかった。今日もダメかもしれない。
引き返そうと思ったが、もう少し進んでみようとふと思った。その通りはなだらかな下りになっていて、右手には塀の向こうにモールが建っていたが、道端には草木が生えていて、静かでなんだか落ち着くなぁと思った。
すると、左手に白い建物が現れた。庭のような広いスペースもある。そこには管理人さんご家族と何人かの大学生や社会人、ネコちゃんたちも住んでいた。

わたしはここで、約半年を過ごすことになる。結果的になんとかなってしまって、当時はハッピー!であった。しかし振り返ると、周りの人たちがなんとかしてくれたのかもな、と思う。大学まで徒歩で約30分、シャワーはお湯が出なかったけれど、ここで本当にたくさんの経験をさせてもらったのだ。その話はまた別の機会にとっておく。

あの時のみんなは元気にしているだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?