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感動、そして学び(202406時点)


※アメブロの記事から、コピペと修正
(時期は2024年6月頃)
※フィギュアスケート男子シングルについて
※画像と内容は無関係です。

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来る2024年5月、宇野昌磨選手が競技生活からの引退を表明しました。

個人的には、もっと長く現役生活を続けるものだと思いこんでいたのですが、ずっと観ておられた方は薄々勘づいていたようです。
視野が狭くなりがちだからこそ、この競技から距離を置いた自分から言えるのは「お疲れさまでした」そして「ありがとうございました」でして…そこで、何の、何に対して「ありがとう」という感謝なのか、彼から一体何を学んだのか、具体的に整理していきます。

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フィギュアスケートの知識、他国の選手など


どの種目・競技でも、試合や選手を追いかけていければ、ある程度の知識は自然と覚えられます。フィギュアの場合は、ジャンプの名前、SPとFSの違い、そして、1シーズンの流れ(大会の名前と規模と、おおよそ開催される時期)。
何も知らないあの時に比べれば、ずいぶん詳しくなりました(ニワカですけど)(笑)。

でも、宇野選手だからこそ覚えられたものがあります。

それは他国と、他国の選手たち(男女問わず)。これも、自然と覚えられるものですが、宇野選手を通して覚えると「選手個人を嫌いになることがない」。

傍目から見るに、フィギュア界隈はとても狭く、深い。加えて選手数が少ないため、1人に過大なる熱量が寄せられ、結果として「狂信的」になりやすい。それ故、自らの推し選手が、別の選手を批判したり、敵意をむき出しにすると、その怒りと勢いはそのままファン界隈から「総攻撃」になります。(どのジャンルでも狂信的ファンはいるんですけど、フィギュアは世界が狭いので、自浄も効きにくいし、狂信的ファンが「力」を持ちやすいんですよね)。
宇野選手はどの選手に対しても敬意を示し、攻撃的になることはありませんでした。

そんな彼の穏やかな性格を受け継いで、宇野選手ファンのスケオタの方は、他の選手も好意的に見ている方が多く、逆に他選手のファンも彼に好意的な方が多くて、SNS上ながら、広い意味での「家族」みたいな繋がりが宇野選手ファン周囲にはありました。

特に、カザフスタンの故デニス・テン氏の訃報に関しては、世界各国のフィギュア関係者が哀しみの追悼をする中、宇野選手も追悼の意志を丁寧に表明したことで、テン氏のことを知らなかった自分は必死に調べましたよ…「~スタンという国、いっぱいあってよぉ分からんな」状態だった自分が、カザフスタンという国をはっきり「認識」できたのは、実はこの事件の影響です。(あの時の「See you again」は今思い出しても泣いちゃう)

演技と感動

彼にのめり込んだ、一番最初のきっかけは平昌五輪のフリー演技。

最初のジャンプで転倒したので、このまま崩れるかと思いきや、そのまま見事に演じきり……最後の方で微笑んでいたのが衝撃的でした。

今以上にフィギュアスケートに関して無知だったこともあり、5年以上経った今は、平昌五輪において「●●選手の、素晴らしい演技に感動!」の記憶は自分にはなく、ただ宇野選手の笑顔だけが記憶に残っています。

個人的に
平昌五輪より、その直後の2018世界選手権の方が、強い感動を覚えました。

自らが負傷した状態で来年につなぐ3枠を獲得せねばならない。SP時点では、日本勢の結果は絶望的でしたが、友野選手がFSで大躍進。希望が見えたところで、彼のFSは転倒を繰り返し、伸びない技術点…「まだ(ジャンプの)コンビネーションがありません」の無機質さが残酷さえ感じる実況の後、怒涛の最後3つのジャンプでコンビネーション。最後の最後で凄まじい勢いでのびていく技術点。

自分の中では、高校野球における伝説の試合
「繋いだ、繋いだ!日本文理の夏はまだ終わらなーい!!」に匹敵する勢いです。(その時の対戦相手が中京大中京というのもちょっと面白い)

一見して小柄で可愛らしい容姿ながら、心の中にはサムライがおる…!と感じた一瞬でした。この記事を書くにあたって、久しぶりに観ましたが…泣いちゃいますね…。(個人的には、その後のプレカンも好きでして…)

自分のブランク期間の試合結果も検索しましたが、彼の現役生活はまさに「侍」「武士」。シーズン大きな休養なしの完走、全日本と世界選手権、GPシリーズ皆勤。

特に全日本選手権。
競技人口が少なすぎるが故に「特例」を発しやすい男子フィギュアにおいて…「特例あるし、全日本なんてどうでもいいし」声が大きくなったであろう中で…多くの他の選手たち(女子、ペア、アイスダンス含めて)が最も大切にしている「全日本選手権」の価値を、彼は身をもって守った訳です。

10年連続1位か2位というのも、「大きな怪我をすることなく、試合ができる状態に調整して、試合で結果を出し続けた」こと。
そもそも「欠場」というのは、他種目のトーナメント戦でいうと不戦敗。フィギュアでいうと、スコアは0点ですから、10年間も一度も休まなかった&高いクオリティを維持した…まさに鉄人です。

つい数か月前、ちょっと思い出した際に宇野選手のいくつか演技を観たのですが…言葉を失いました。フィギュアスケートに関しては、もはや無知に等しい状況ですが、ここ数年で別人に見える…。2024世界選手権のエキシビジョン、キレッキレじゃないですか…一方で「Dancing On My Own」はゆったり目の曲風なのに重厚感がえぐい…

ブレない体幹、可動域の広い全身、空気が変わるほど明確な緩急の付け方、そして「音楽」を奏でる凄まじい表現の幅の広さ…プロの方にきっちりついてもらって練習したら、陸上でのダンスも相当高いレベルで踊れるのでは…?と思わざるをえません(ご本人はあまり好きじゃなさそうですが・笑)。(※後にぐるナイに出演した時、簡単な流行のダンスをやっていましたが、フツーに上手くて驚きました笑)

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誰からも愛される…?

この言葉、個人的には美辞麗句だと思ってます。

極端な例ですが「膨大な数のファンがいるけれど、心から信頼できる人(友人・恋人など)は誰もいない」「周囲に集まってくるのは、ビジネスか金か名誉に便乗したいだけ」の人と、「ファンの数は控えめだけど、心から信頼できる人がいる」「ファンが知らないプライベートの部分で、周囲との関係が良好である」人。
これ、前者でも「誰からも愛される」と評されますからね。自分は後者を好むので、マスコミの美辞麗句は鵜吞みにせず、可能な限り観察と考察をしてしまいます。

今回、彼の引退に関して印象に残ったものをいくつか。

コーチであるステファン・ランビエール氏がインスタグラムにあげた写真…ステファン氏と、山田満知子氏と、樋口美穂子氏と、宇野選手。
…このお写真、宇野選手が新旧コーチどちらとも良好な人間関係を築いていないと、撮ることができませんし、3人とも宇野選手を愛していたからこそ、引退の時にステファン氏が選択したのでしょう。
氏のお言葉に「昌磨の周りにいる人々が、コーチとして仕事をするための環境をつくってくれた」、宇野選手も「出会う方に恵まれた」と語っていたので、良好な人間関係の中、競技生活を送れたのだろうと推察します。
(ここで思い出しましたが、裏方さんのyoutubeチャンネルがありますね。ああいうのを「やろうよ!」となれる雰囲気だったんじゃないかな)(職場でも部活でも、雰囲気の良いところはそういうノリがあります)(楽しいですよね)

後、コラントッテのイベント…の山本草太選手。

宇野選手について調べていくと、必ず彼の名前が出てきます。自分が沼っていた頃は、丁度怪我をしていた頃だった(はず)ので、表には出てきませんでした。
ジュニア時代はお互い切磋琢磨していたのに、片方は世界のトップで闘い五輪メダリスト、もう片方は怪我の予後が悪く、試合すら満足に出られない。無関係の外部の自分からすれば、「ギクシャクするよなぁ…」と誠に勝手ながら思っちゃう訳です。どっちがどうとか関係なく、状況的に。
自分がノータッチだった数年の間に、山本選手は見事に復活を遂げており、心配されていたファンの方の心中を思うと、誠に勝手ながら(2回目)感動の拍手を贈りたくなる自分がいます(我ながらうざいですね…)。

宇野選手の強い推薦で、コラントッテとアドバイザリー契約を結んだ件。

涙腺が緩みました。宇野選手がスケートリンク貸し切り練習時に、山本選手も参加させてもらえた良いお話に加えて、若き頃宇野選手にベランダに締め出されたといううっかり笑えるお話……「そら、周囲との良好な関係を築けるよな!愛されるよな!」と至極納得です。

こういう話を、マスコミによって「いかにも!」と美談風に語られるよりかは、「ほとんど取り上げられないけど、日常的に転がっているささやかな優しさ」風に、じわじわ知る方が、自分的には心に大きく響きます。
コラントッテ契約選手、フィギュアスケート選手が爆増していて驚きましたが、山本選手の件を見るに、まさに宇野選手の人徳ですね。

一番若いのはジュニアの中田選手ですが、宇野選手より11歳も下(冷静に考えると、彼の人生の年数半分以上は全日本表彰台にいる訳だから…)。この年齢差は高橋大輔氏との年齢差に近く、彼もそういう年齢なんだなと。ということは、宇野選手を憧れと公言している鍵山選手も中田選手も、きっと自身を憧れとする下の選手が出てくるでしょう。

コラントッテのアスリート一覧を検索すると、宇野選手筆頭にフィギュアの男子選手は前の方に出てくるので、コラントッテ側もかなり気合が入っているのだろうと感じます。フィギュアファンは年齢層が高めの女性が多く、購買力に期待できるので、宇野選手を起点として、フィギュアスケート男子選手と多く契約するようになったのは、先見の明があるというか何というか…。

ちなみにコラントッテは、関西ではまぁまぁ有名な様で、「フィギュアの宇野昌磨くんがつけてるやつ」も言われましたし、部長からは「(阪神の)岡田監督がしてるやつ!」と言われました(違います・笑)(調べましたが別メーカーでした・笑)(コラントッテつけているのは、阪神なら大山選手と梅野選手ですね)
引退発表直後には、あちらこちらで競技生活を「完走した」ねぎらいの記事が出ましたが、その記事から宇野選手の性格的な温かさが感じられたのは、書き手も宇野選手の人柄の良さを高く評価しているからこそでしょうか。それとも、ただの自分の贔屓目でしょうかね。

努力の先に見えるのは

自分が宇野昌磨というアスリートを通して一番学んだこと。

努力を積み重ねると、何が見えるのか。答えは「成功」…は、自分は求めていません。「努力すれば、絶対に夢は叶う」「人の持つ可能性は無限大だ」…このような言葉を、自分は端から信じていません。
自らの意志で努力を重ねる姿は、たとえ達成できなくとも周囲の人々の感情…「この人の為に何かできないか」を、動かすことができる。

トリプルアクセル習得は、まさにその一例で、宇野選手の凄まじい努力が、先輩スケーター無良氏の「4回転やってみたら?」を引き出したこと。継続した努力は必ずしも成功を導くとは限らない、けど今後の自分の力になる。その力の一つは「周囲の人々の応援・協力」。

加えて、これに外せないのは
「自分の環境は恵まれている」=「自分の成功談は他の人に当てはまらない(当てはまることもあるかもしれない、と考える程度)」が、宇野選手の意識の根底にあること。
例え自ら努力をして成功を掴んでも、「自分はこれだけ努力したからできた」と自身のお手柄に依存していると、「だからお前も頑張れ、できるはず」と良かれと相手に押し付けてくるんですよね。

時代が変われば状況も変わる、運もある。人一人の努力だけではたかがしれています。

宇野選手は、努力を重ねて成功を掴んだアスリートですが、そもそも「フィギュアスケートという金銭的負担が大きい競技を続けられるほど、ご家庭に財力があった」恵まれた環境の持ち主。多分に彼はそれを自覚している。
彼の言う「周囲の人に恵まれた」は、まさにこの意識から出た言葉でしょう。

「自分は、周囲の人・環境に恵まれている」と自覚しているからこそ、他者への感謝・配慮・思いやりがきくし(鍵山選手など、実際日々会っていた後輩選手たちから「優しい」との評)、2018世界選手権筆頭に「誰かの為に踏ん張れる」訳で、周囲からも信頼され愛される(コラントッテイベントの友野選手の「漢」は納得しすぎて震えました…あの世界選手権を目の前で観てましたもんね…)
思い出に残った試合の理由を「ステファンが喜んでくれたから」て…それ…もうね、自分で惹きつけているんですよ、「自分を愛してくれる人たち」を。

ご自身に確固たる「自己愛」があるから、ブレないし、他人に対して素直に称賛と愛情を伝えることができる訳で…2018世界選手権プレカンで、聞かれてもいない(質問はネイサン選手について、だった)3位の「コリヤダ選手が人として好きです」発言、自分は忘れていませんからね(笑)。

2022年夏の甲子園で優勝した仙台育英の須江監督の言葉(流行語大賞特別賞)
「青春って、すごく密なので」
がありますが、宇野選手を中心とした男子フィギュア選手にも、それに近いものを感じました。自分1人ではなく、誰か仲間と共に目標に向かって努力した・頑張った時間と空間。

名も無きモブ国民その1として、最大の拍手と賛辞を送ります。
ありがとう。

(で、まだ余談が続きます…)

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