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他のコーチングと一線を画する「認知科学コーチング」とは

はじめに

コーチングといえば「答えはあなたの中にある」という共感型のコーチングを思い浮かべる方も多いと思います。

厳密にコーチングの定義をしようとすると、この考察で論文が書けるぐらい大変です。「(論文)ヘルスコーチングの展望:コーチングの歴史と課題を基に(西垣悦代, 2013)」の中には、「定義」という言葉がたくさん出てきます。

流派も歴史も様々で、どうやら一義的に定義をすることは困難なようですが、一般的には、

・答えはクライアントが持っている
・コーチは質問やフィードバックは行うが、原則として介入はしない
・クライアントは、自らの自分にある答えに気づき、目標達成をする

と認識されていると思います。

しかし、ここで紹介する「認知科学コーチング」は上記とは異なるものです。次のような特徴があります。

・ゴールは現状の外側にある
・コーチはゴール設定に必要なプッシュを行う(傾聴で終わらない)
・クライアントは、心理的盲点にあるゴールを見つけ、目標達成をする

この「認知科学コーチング」について、その仕組みと、どのような人が対象になるのかをお伝えしたいと思います。

1. 認知科学コーチングとは

コーチの役割は「クライアントを目的地(ゴール)まで送り届けること」ですが、最初からゴールが明確に決まっている人はほとんどいません。

認知科学コーチングでは、「ゴールは見つけるものではなく、設定するもの」という考え方になります。

認知科学とは「情報処理の観点から知的システムと知能の性質を理解しようとする研究分野」のことです。人間は、情報処理のプロセスとして以下のような「入力」→「情報処理」→「出力」ということを行っています。

情報処理のプロセス

たとえば、

「日本最大のSDGsオンラインイベント」の広告を見かけた(入力) → おもしろそう!(情報処理)→ インターネットで調べてみる(出力)

「日本最大のSDGsオンラインイベント」の広告を見かけた(入力) → よくあるイベントだな…(情報処理)→ スルーする(出力)

のような流れになります。

この「情報処理のプロセス」には重要なポイントが2つあります。

・人はそれぞれ異なる情報処理のプロセスを持っている
・内部モデル(情報処理のパターン)が変わると、行動(出力)が変わる

認知科学コーチングでは、この情報処理のプロセスを応用して、「内部モデルを書き換えることで行動を変容させる」ことをします。

内部モデルを書き換える

2. 認知科学コーチングは何をするのか

「現在の状態のままいけば十分に起こりうると予想される将来」とは、認知科学コーチングにおいては、「未来」ではなく「現状」と定義されます。

認知科学コーチングでは、クライアントを現状の外側に飛躍させるため、マインド(脳と体)のカラクリを使い、ゴールを現状の外側に設定し、クライアントのパフォーマンスの最大化・成長を実現します。

クライアントは、最初に以下のプロセスを経験します。

・自分の「やりたいこと」に耳を傾ける
・「やらないといけない」を手放す
・現状の外にゴールを設定する

認知科学コーチングではゴールを設定していきますが、ゴールとは「将来こうなりたいという自分の姿、その時に見えている世界」のことです。

3. ゴールに必要な3つの条件

ゴール設定には、3つの条件があります。

①本音でやりたい(want to)と思っていること
②「現状の外」に設定する
③複数の領域にオールライフで設定する

以下で、これらを1つずつ説明していきます。

ー ①本音でやりたい(want to)と思っていること

認知科学コーチングにおける「want to」の定義は以下です。

・心の底からやりたいと思っていて、たとえ止められたとしてもやめたくないこと
・気がついたらやってしまっていること

自分にとって権威となる人(親、先生、上司、先輩、パートナーなど)から止められてもやってしまう行動は、自分軸の「want to」である可能性が高いです。

なぜゴールに必要な条件の1つになっているかと言うと、自分のゴールが心の底からやりたいことでなければ、ゴール達成への行動が継続しないためです。

そして、「want to」の対義語となるのは、他人軸の「have to(しなければならない)」です。

これまでの人生の中で、所属する組織から、あるいは自分の役割に対して、いろいろな期待や義務、ルールが与えられてきた中で、それらの「外圧」によって行動してきたことは「have to」です。

ゴールは、自分が心からやりたい(want to)と思うことで設定することが必要不可欠です。

ー ②「現状の外」に設定する

「現在の状態のままいけば十分に起こりうると予想される将来」とは、認知科学コーチングにおいては、「未来」ではなく「現状」というお話をしました。

それでは、「現状の外」とはどういうものでしょうか?
一言で言うと、次の言葉になります。

今のままの自分では成し遂げることができないこと

近代で最も有名な「現状の外」のゴールと言えば、1969年に達成した「人類が初めて月に降り立ち、月の石を地球に持ち帰ること」だと思います。


月面着陸ほどスケールは大きくないとしても、以下のようなものは、「現状の外」である可能性が高いです。

・あなた自身が難しいかもな…、と思ってしまう
・周囲の人が現実的じゃないと止めてくる
・実現へのプロセスが見えない

「3年以内に今の会社で1つ昇格する」「ダイエットをはじめて今から3kg痩せる」など、そこにたどり着くプロセスが見えるものは「現状」です。

なぜ、「現状の外」にゴールを設定するのかには理由があります。
それは、「脳が持っているクリエイティビティ(創造性)を最大限発揮するため」です。

「現状の外」にゴールを設定した時点では、たどり着くまでのプロセスが見えません。

しかし、「現状の外」にゴールを設定することによって、人は無意識のクリエイティビティを発動させ、達成するためのプロセス・経路を創造していきます。

一方で、「現状のゴール」では、脳はクリエイティビティを発動させる必要がないため、脳が積極的に動くことはないのです。

ー ③複数の領域にオールライフで設定する

3つ目の条件は、複数領域でゴールを設定する、ということです。

バランスホイール

仕事・趣味・人間関係・社会貢献・家族・知性・健康美容・資産と、8つの領域でゴールを設定していきます。

仕事:社会・人の役に立つこと。自分の職業における理想
趣味:
社会・人の役に立たないこと。本音のwant toであること
人間関係:
未来のゴールを実現するための、仕事とプライベートの人間関係
社会貢献:
自分の利益にはならない領域への貢献
家族:
自分の親、自分がつくる家族、自分の子どもにとって、どう在るか
知性:
抽象度を高め、体系知識を身につける学び
健康美容:
上記のゴールに対して必要な運動・栄養・休息・美容の在り方
資産:
上記のゴールを実現するために必要な収入と資産

オールライフでゴールを設定すると、未来のゴールを達成したときの臨場感が高まります。

例えば、仕事のゴールだけを追求した結果、健康や家族を犠牲にしてしまう、ということが起こりかねません。仕事のゴールを達成できたとしても、それって人生が幸せなんだっけ?となってしまいます。

複数のゴールを設定し、それぞれの整合性が合う状態をイメージできることで、ゴールの臨場感を高めることにつながります。

ゴールの臨場感が高まると、ゴールが現実のものに近づいてきます。

4. 未来のゴール達成に対する、根拠のない自信を持つ

クライアントの未来のゴール達成能力を決めるのは、「根拠のない自信」です。認知科学コーチングでは、これを「エフィカシー」といいます。

エフィカシーとは「未来に対して自分であれば成し遂げる能力がある、という自己評価」のことであり、言い換えると根拠のない"謎の自信"のことです。

真逆の概念に「セルフエスティーム」があります。これは、過去から現在の自分の実績や能力に対する信頼のことです。例えば、「東大を卒業している」「大企業の部長をしている」「公認会計士の資格を持っている」などの実績を根拠にするものです。

ですが、セルフエスティームは未来の根拠にはなりません。「未来のゴール」はプロセスの見えない「現状の外」にあります。そのため、「私なら出来そう」という「根拠のない自信」が必要になってくるのです。

エフィカシーのポイントは、次の2つです。

・「他人評価」ではなく、あくまでも「自己評価」である
・根拠のない ”謎の自信” である

未知な世界に行くときに、自分の中にあるリソースだけでは周囲から見ると勝負にならないと思われるかもしれません。それでも、私なら出来る、と思えること。これがエフィカシーが高い状態です。

5. 「無意識」にゴールへの経路を見つけてもらう

では、どのように「現状の外」にあるゴールに到達するのでしょうか?

経路の見えないゴール(未来)が設定されると、なんとかして経路を見つけようとして脳がクリエイティビティを発動し、動きはじめます。

つまり、自分の無意識に任せる、ということです。

人間の脳の処理能力には限界があり、普通に過ごしていると大量の情報を知覚してしまい脳が処理できなくなってしまいます。そのため、人間の脳には毛様体賦活系(Reticular Activating System/通称RAS)という機能があり「自分にとって必要な情報だけを脳にインプットするフィルター」のような働きをしています。

私たちは日常的にRASによって入ってくる情報を取捨選択しています。

例えば、
・ベンツを欲しいと思っていると、街中でベンツを見かけるようになる。興味がない人はベンツが走っていても気がつかない。
・英会話を勉強したいと思っていると、駅前にある英会話スクールの看板が目に入ってくる。興味がない人は、どこに英会話スクールがあるか知らない。
・インドネシアに関わりのある仕事をしていると、新聞にインドネシアについて書かれている記事が目に飛び込んでくる。興味がないと、気がつかない。

「カクテルパーティーのように、たくさんの人がそれぞれに雑談しているなかでも、自分が興味のある人の会話、自分の名前などは、自然と聞き取ることができる」という現象はカクテルパーティー効果と呼ばれ、これもRASが機能しているためです。

一方で、「無意識」が選択しなかった情報は、心理的盲点(認知科学ではスコトーマと呼びます)となり、情報が入ってきません。

RASとゴールの関係ですが、未来のゴール設定に臨場感と責任感を持てたとき、脳はゴールの重要性を認識し、RASが機能するようになります。そうなると、本来は日常的に接している大量の情報から、ゴール達成に必要な情報が入りはじめます。ゴール達成に必要な情報が入りはじめると、ゴールまでの経路が見えてくるのです。

この脳の仕組みを利用することが、「ゴールへの経路を見つけるのは、自分の無意識に任せる」ということです。

6. セルフトークでゴールの臨場感を高める

最後に、どのようにゴールの臨場感を高めていくのでしょうか?

そのカギとなるのが、セルフトークです。
セルフトークとは、無意識レベルで自分に語りかける言葉(心の中で思っていても口に出さないことや、自分で全く意識していないが考えてしまっていること)です。

人はおおよそ1日あたり数万語を自分に対して語りかけていると言われています。自分に対して無自覚に1日数万語も自分に語りかけているセルフトークによって、「私はこんな人間だ」という自己イメージが形成されます。

Word・Picture・Emotionという概念があります。

・人は、自ら語りかける言葉によって映像をイメージし、その映像に対して感情が生まれてくる
・「言葉」→「映像」→「感情」の順番で感情が想起される

この特性により、「言葉」が自己イメージを形成します。つまり、「言葉」を変えていくことで、自己イメージを書き換えることもできるのです。

「現状を維持」するための言葉を使っているか、「未来の自分」の言葉を使っているのか。セルフトークを使いこなすことが、ゴール達成能力の重要な要素となります。

7. 認知科学コーチングをオススメできる人、できない人

ここまで紹介してきた認知科学コーチングですが、すべての人にとって良い手段である、とは思っていません。オススメできる人、できない人をまとめてみました。

・オススメできる人

・現状よりも人生をよりよくしたい
・率直なフィードバックを求めていて、すぐに行動を変化させたい
・本当はもっとやりたいことがあるような気がする
・自分には今よりも可能性があると思っている
・自分で制約をかけてしまっている気がするので、それを外したい
・仕事が義務感(have to)にまみれていて楽しくない

・オススメできない人(必要がない人)

・正解や具体的なアドバイスをもらいたい
・自分の成長は親、上司、先生、会社、コーチ次第だと思う
・現状に満足していて、何かを変える必要がない
・大きな変化はしたくない
・現在、体力的、精神的に弱っている
・とにかく誰かに悩みを聞いてもらいたい
・自分の人生を決めるのは自分ではなく自分を取り巻く環境だと思っている

最後に

現在はプロコーチ認定前で、研修課題として無料60分間のモニターセッションを行っています。

この記事を読んで認知科学コーチングのセッションに興味を持ってくださった方は、Facebookのメッセンジャーでご連絡ください。また、友人・知人などで「認知科学コーチングに興味を持ちそう」という方がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介ください。

面識がない(あるいはFacebookでつながっているけど殆ど交流がない)方のほうが、難易度が高くなり練習になるので大歓迎です。また、他のコーチを紹介してもらいたい、などのご要望があれば、遠慮なくご相談ください。

モニターセッションへのお申し込みが予想以上に多くいただいたため、現在は募集を停止しています。

【期間限定:4月3日まで 申し込み多数のため、3月21日 23:59で締め切ります ※選考はあります】
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【重要!】誰にコーチを依頼すべきか

コーチングに興味を持ったとしても「どんな人にコーチを依頼すればいいのだろうか?」と考えてしまう人も多いと思います。

コーチング実践の成否を分けるとされる要因として、どの流派でもあげられるのは、コーチとクライアントとの「相性」と言われています。

相性を確かめるのには、何人かのモニターセッションを試してみるのがよい方法になると思います。ですが、それにしても事前に相性がよさそうかどうかは判断しておきたいところだと思います。私の自己紹介と行動特性がわかる記事を紹介しますので、参考にしてみてください。


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