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ウィリー・ディクソンのエピソード

【過去の投稿です】2017.5.28.記


『BSR』誌最新号のウィリー・ディクソン特集。妹尾みえさんの巻頭記事を読み、改めて彼の偉大さを知る。「人に歴史あり」とはよく聞くが、彼の歴史は、そのままブルースの歴史に投影されている。しかも、才能あるミュージシャンが、ブルースの重要曲・レーベルに深く関わった事で、都会に於けるブルース・シーンが確固たる存在となった・・・と書けば、順風満帆なイメージに捉えられるが、彼の「歴史」や「思い」を知るにつけ、苦悩や努力が読めてくる。

丸っこい体格に笑顔の写真がほとんどで、悠々たる人生を連想するのだが、14人兄弟の7番目に生まれ、母親が一人で育てる環境。幼い頃からゴミ拾いなどで生活を助ける。母親は読み書きができる敬虔なクリスチャンだった為、ウィリーも言葉の魅力は感じ取れたのだろう。刑務所入りも数回経験、獄死する者も眼前にする壮絶な経験もしている。もっともこれは彼特有の経験とは言えないだろうが・・・。彼が人生を投げなかったのは、持ち前の人懐っこさを忘れなかった事と、ブルースの奥深さに取り憑かれたが故だろう。

マディ・ウォーターズに出会った時、マディが悲しみの歌とされるブルースを活気あるものとして変革しているのに刺激を受け、「ストップ・タイム」の活用で迫力と渋みを打ち出し、男らしさ・逞しさといった部分を強調するなどして、ブルース進化の一端を担った。記事では、ウィリーのブルース観にも触れられている。彼はブルースをポジティブに捉えたが、ここでいう「ポジティブ」とは「良いことも悪いことも素直に伝えることが人生の励みになる」という事だ。苦楽双方飲み込んでこその人生だ。人の笑顔が輝いて見えるのは、苦難の皺が囲んでいるからではないだろうか。

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