レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.92(2)
[101枚目]●フランク・ストークス『ザ・コンプリート・レコーディングス』<Pヴァイン>(11)
【Disc 1】
THE BEALE STREET SHEIKS (Stokes and Sane)
①の1ヶ月後(27年9月)の再録音。少しペースは遅いようだが、ノイズが無い分ギターの響きなどよく聴こえる。
⑧と同じパターン。こちらもノイズが無いのでストークスの畳みかけるヴォーカルに加え、セインの単弦奏法もより軽快に感じる。
歌われているクランプ氏は、1910年から5年間メンフィスの市長を務めた人物。元々は、彼のキャンペーンソングとしてW.C.ハンディが作曲したものである。当時全米有数の荒れた都市だったメンフィスの浄化に苦心した人だったという。「ミスター・クランプは容赦しない」という大意だが、皮肉めいた部分も持つようだ。ストークスのヴォーカルが一段と逞しい。
11. Chicken You Can Roost Behind The Moon
元はミンストレルソング。この曲をタイトルにしたアルバムもある(イタリアの<モンク>MK323LP)。語尾を引き伸ばして歌うストークスのヴォーカルが爽快だ。目の前で歌われたら心震えるだろう。
冒頭からのギターの絡みが録音バランスの悪さで捉えきれていないが、それもロマンのような気がする。
13. Ain't Goin' To Do Like I Used To Do
この曲から⑲までは、29年3月シカゴ録音。録音物として残されたものでは、セインと組んだ最後のセッションである。ライナーで解説されているセインの低音弦チョーキング奏法が味わいある。
ギターのカッティング、単弦奏法とも、さりげないのだが聴き応えがある。美しい。
このセッション全体に言えるが、音質が特に悪い。想像力も加味して聴かなければならない側面もあるが、ヴォーカルも演奏も間違いはない。
軽快なギターが聴けるのだが、あいにく音が悪い。
ギターのフレーズは⑯の方がやや良いか。しかし、後半は盛り返す。
音質が落ち着いているので、ギターの絡みが一段と楽しめる。
セインの単弦奏法が特に印象に残る。
これで【Disc 1】は終了。次回は【Disc 2】で<ヴィクター>の作品集となる。ヴァイオリンなども絡み、違う味わいも楽しめる。
(つづく)