アート・テイタム・トリオ
【過去の投稿です】
数珠つなぎで聴こえるピアノの音色は、チャーリー・パーカーのサックスを思わせる。意識が空の彼方へ引っ張られていくような快感を覚える。タイニー・グライムスも手数の多さを発揮するが、ある意味テイタムの高速ピアノに温もりをプラスしているような音遣いだ。さらにスラム・スチュワートが全体を落ち着かせるようにベース音を奏でている。但し、全員見事なスイング感、ブルース・ファン的にはジャンプ感だ。
アート・テイタムについては、本盤を聴くまで「凄いピアニスト」だという程度の認識で、その音楽自体にはゆっくり向き合っていなかった。今回もタイニー・グライムスとスラム・スチュワートも絡んでるしと思って手を伸ばした次第。結果的にはジックリ聴いてみるべきミュージシャンである事を痛感した。
ウィキペディアで調べてみると、アート・テイタムは1909年、オハイオ州トレドの生まれ。先天性白内障で、目はほとんど見えない状態との事。20歳頃にはラジオ局のハウス・ピアニストになり、その後名を馳せていく。同世代のファッツ・ウォーラーは彼を「神」と呼び、カウント・ベイシーは「世界の8番目の不思議」と絶賛。ステファン・グラッペリは、2人で演奏していると思い込んでいた。オスカー・ピーターソンは幼い頃彼の演奏を聴き、ピアノを弾くのが恐ろしくなったとか。ウラディミール・ホロヴィッツも驚嘆し、クラシック音楽界の重鎮たちも彼の出演するナイトクラブに押し掛けた。そういえば、レイ・チャールズの伝記映画『レイ』でも、憧れのアート・テイタムの演奏を涎を垂らさんばかりに聴き込むレイの姿を描いた場面があったのを思い出す。
テイタムのクラブの厨房には、田舎から出てきたばかりのチャーリー・パーカーが皿洗いをしており、テイタムの演奏が始まると厨房の入り口で聴き入っていたという。パーカーの意識もおそらく、空の彼方に飛んでいたのではないだろうか。もちろん、その後自分が飛ばす側になるのだが・・・。
I Got Rhythm (1944)
Moonglow (1944)
I Would Do Anything For You (1944)
Honeysuckle Rose (1944)
DARK EYES by 78rpm
I Know That You Know