レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.43
【ブログの過去記事】
[52枚目]●ダーティ・ダズン・ブラスバンド『ホワッツ・ゴーイン・オン』<シャウト/ジェネオン>(06)
マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』を、曲順もそのままにカバーした作品。マーヴィンへのオマージュというより、元盤が持つメッセージ性の高さを憑依させたかのようだ。本盤の主題は、ハリケーン・カトリーナ。未曾有の大災害に対して、政府は早い段階で補助を打ち切った。黒人低所得者層の住民が多い地区だったからか、対応は遅々として進まず。やむなく商店に駆け込む住民を「暴動」の一言でマスコミは片付けた。
①「ホワッツ・ゴーイン・オン」では、低音の響きが、根の深い怒りを思わせ、身が引き締まる。歌の代わりにラップが入り、ストイックなラッパー、チャックDが務める。自らの政治生命の終わりを覚悟したというニューオーリンズ市長の政府非難とも取れるインタビューのサンプリングで始まる。ところで、この市長、後に収賄で捕まっており、何やら釈然としない部分もある。
②「ホワッツ・ハプニング・ブラザー?」は、ベティ・ラヴェットの訥々としたしゃがれ声が、主婦目線の訴求力を生んでいる。
他に、このアルバムのゲスト・シンガーは、アイヴァン・ネヴィルとG・ラブだが、いずれも淡々とした歌い口で、アルバム全体が「冷静な表現」に満ちている。ブラス・サウンドならではの温かみも功を奏している。また、「メッセージ性」を強調すると、堅苦しい印象を与えるが、③「フライン・ハイ」⑦「ライト・オン」などは、ファンキーなタッチが心を躍らせる。
日本盤には、カトリーナに関する詳細な状況も交えたライナーもあり、音と合わせて非常に有意義な一枚ではある。しかしながら、今回カトリーナに関して自分なりに検索しても、2015年の記事までしか見当たらず、過去の出来事として葬られてはいないか心配な部分もある。
アルバムとしての完成度も高い一枚。未曾有の大災害を再度想起する契機にもなる。
What's Going On by the Dirty Dozen Brass Band featuring Chuck D
What's Happening Brother Lyrics
Flyin' High (In The Friendly Sky)
Inner City Blues (feat. Guru)