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アスンシオンの夏のような春。

予定よりも早くパラグアイへやって来た。ティルカラの天気が向こう1週間は崩れるというので、行き先を入れ替えたのだ。どこからも遠いこの国へは夜行バスを乗り継いで来ようかどうか最後まで迷ったが、距離のことを考えてみればこれほど近くに来ることもなかなかない。

フフイでの宿のオーナーはなかなかのキャラクターで、スクレからの仲間たちが去っていった翌日、空になったホステルで夜気に打たれているとちょいちょい顔を出す。一緒に座っていいかと言うのでどうぞと言うと、デザートのビスコッティとワインを持ってやって来た。ほとんどシロップみたいな甘いモスカートに浸して食べるビスコッティがおいしい。最後にそれを飲み干す彼女の足の脈瘤が気になって仕方ない。彼女はもともとパラグアイの人だそうで、里帰りのときに使う早くて安いバスを教えてくれた。 

そんなわけで翌日の午後、フフイにしばしの別れを告げ、一路パラグアイはアスンシオンへ向かう。座席を深く倒せる「カマ」は日曜までいっぱいだというからどれほど混んでいるかと思えば車内はガラガラで、ふたつ独り占めの座席で足をのばして寝た。国境は人で溢れていたものの思いがけずスムーズに超えて、しかしそこから間違ったバスに乗ったので街の外側を大きくぐるりと周って、旧市街に接近できないまま降ろされた。

なんとか宿に到着してシャワーを浴びると早速美容院を探しに出た。豊かすぎる髪の毛が広辞苑ほどの厚さに育っている。短くしてというと容赦なく刈りまくられて、久しぶりのショートカットに。夜はこの地域の料理を求めて近くの食堂へ入った。パラグアイ名物のチパグアスは切らしているというから、サラダと、メニューに唯一「Arroz(米)」の文字が光るものを注文すると「いやでもこれはゴニョゴニョゴニョだよ」というから「おっけおっけー」と伝える。「パンかサツマイモか」と問うので「サツマイモでしょう!」と答えると本当にふかしたサツマイモが四切れ、皿に横たわって出てきた。サラダもサツマイモもおいしくてメインを待っているとさっきのウェイターが白飯を片手にこちらへ向かってくる。お互いに何が起こったかわかっていて、到着するや否や「鶏肉かなんかのせようか?」なんて気の利いたことを聞いてくれる。「なんでものせちゃっておくれよ」と伝えると、トマトで煮込まれた鳥肉が載ってテーブルに戻ってきた。白飯かと思ったごはんには卵が混ざっている。どれもとてもおいしくて(とても安くて)幸せな気持ちで店を出た。

暑いアスンシオンの春。短くなった髪の隙間を夜風が通り抜ける。

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