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1日ラマダン体験

ラマダンとはイスラム教の信仰の一環で、イスラム暦の9月にあたる1ヶ月(グレゴリウス暦とは対応しないらしい)、日の出から日没まで一切の飲み食いを断つというものだ。その狙いは、体を清めることによって改めて信仰を深めることや、自己抑制を高めることであったり、イスラム教の聖典であるコーランを今一度読み直す期間だったりもするらしい。


*このnoteはラマダンを1日だけでもやってみよう!という非常に軽い気持ちから来る体験について書いたもので、深い信仰を持たれている方々からすれば不快に映るかもしれません。その点、ご了承ください。


ラマダン in ポルトガル

さてここで念押ししておきたいのだが、僕の留学先はヨーロッパにあるポルトガルであって、決してイスラム教が広く信仰されている国ではない。ただ、寮の友達の一人にムスリムがいて、先月の中頃に断食(サウム)を始めていたのがこの1日ラマダンのきっかけだ。彼自身は服薬をしなければいけないという並々ならない理由から断念していたのだが、それに興味を持った寮の友達同士でいつか1日試してみようという計画がずっとあった。

3月31日、キリスト教のお祭りイースターの一環として豪華なランチを楽しんだその日の夕方、腹ごなしの散歩をしながらせっかく明日休みだしラマダンをやってみよう!という話になった。今日はキリスト教で、明日はイスラム教という節操のない感じではあるが、物は試しだ。次の日の異文化体験に少しのワクワクと一抹どころではない不安を抱えながら、その日はいつも通りの時間に眠りについた。


断食の苦しみ

4月1日、奇しくもエイプリルフールの日、冗談のような1日ラマダン体験が始まった。流石に起きてから日没までずっと飲まず食わずというわけにはいかないので、日の出前の早朝5時に朝ごはんを食べる。これをサフールというらしい。目覚めて共用のキッチンに向かうと、同じく眠い目をこすりながら起きてきた今日のチームメイトたちがいた。もちろん皆ラマダンは初体験だ。今回のラマダン講師のトルコ人の友達からは、喉が渇くから塩と砂糖は摂り過ぎないようにとのアドバイスをもらったので、それに従いながらそれぞれ思い思いの朝食を取った。他の皆を起こさない音量でトルコ音楽をかけながら。


その後は昼過ぎまで寝た。起きていると空腹に拍車がかかりそうだったからだ。他の初ラマダン勢も同じことをしていた。二度目の起床の後、顔を合わせると他の皆は案外すっきりした顔をしている。あんまり喉は乾いてないしお腹も減ってないとのこと。この時点で僕はだいぶ空腹だった。喉の渇きは平気だったのだが、お昼時ということもあってかとにかくお腹が減っていた。

ここでメンバーの二人がショッピングモールに買い物に行こうという。そこまで歩いて30分、坂も上らなくてはいけない。気を紛らわすために何かしなくちゃ!という説得に負けて行くことになったが、道中やはりエネルギー不足を感じた。体がいつもよりスムーズに進んでいかないような感じを受けた。

女性陣が服を見たいというので、Primarkというヨーロッパ版ユニクロのようなところにまず行った。僕と、フランスの大学から来た男友達は特に見たいものもないのでTシャツを物色したり、キャンドルを嗅ぎ回ったりしていた。どこの国でも女性の買い物に男は連れ回されるものだという見解は二人の間で一致した。

それほど長い時間はかからず、次は大型のスーパーへ。ラマダン期間中は日没を迎えると大勢で晩ご飯を共にするイフタールというものをするのが一般的らしく、僕たちもそれに招待されていたのでそれに持ち寄る料理を考えなくてはいけなかった。しかし、スーパーと言えば食材の宝庫。あらゆる方角から誘惑が襲ってくる。時間は午後5時頃、空腹がピークに達してくる頃だった。とても過酷だったが、何とか食材を買い揃え帰宅することができた。


待ちに待ったイフタール!

時刻は7時。イフタールの会場となる友達の家へ向かう。今度はショッピングモールとは別の方角にまた30分の歩き。なぜか買い物へ向かう往復1時間、そして友達の家へ向かう30分の計1時間半を僕たちは全て歩いた。タクシーが安いのになぜか使わなかった。エネルギーが足りていない体に鞭打ちながら、日没はまだかとぶつぶつ文句を言いながら会場へ向かった。このラマダン体験、他の面々は一貫して涼しい顔をしていてあまり苦しい思いをしていなさそうだった。僕は昼頃からずっと空腹に悩まされていたというのに…

日没は午後8時3分、料理は間に合わなかったがキッチンでその時を迎えることになった。断食明けには預言者ムハンマドの習慣に倣って、デーツの実を食べるのがお決まりらしいので僕たちもいただいた。甘くて美味しい、栄養が体に染み渡るようだった。


イフタールのご馳走たち!

調理中に友達の家には次から次へと人がやってきて、最終的には17人の大所帯になった。断食をした人もそうでない人もいたが、それぞれ持ち寄った食べ物を分け合いとても楽しいディナーになった。特に美味しかったのはチェコ人の子が焼いたというパイ。甘いアップルパイと塩気のあるチーズパイ、どちらもとても美味しかった。


感想

さて、1日ラマダンを終えての感想だが、これを1ヶ月やり切るのは至難の業だと感じた。聞いただけでも過酷そうだが、実際にやってみると日中何もやる気が起きないし、体を動かすエネルギーの不足をこれでもかというほど感じる。実際、ムスリムが多く生活する国では勤務時間を調整したり、短くするところもあるのだとか。何にせよ、これだけのことを信仰心ゆえに続けられるムスリムの方達には心から尊敬の念を抱いた。

翌日からは特に体の不調を感じることもなく、好きな時に好きなだけ水を飲めること、昼食にありつけることのありがたさをこれでもかというほど感じながら生活している。イフタールは確かに楽しかったので、またいつかもう一回くらいなら試してみてもいいかもしれないと感じている。



以下、このnoteを書くにあたって参考にさせていただいた記事のリンクです。


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