窓際のおっさん31 私が事務処理を苦手とする理由(3/6) 答えが無い故に摩擦 事務処理は無法地帯か
前回は、事務処理はしばしば、心情的な理由で追加され、本質的に意味があるかどうかは別として増え続け、故に実作業と違って正解がない感情的仕事であると述べた。
今回は、前回お話しした「正解がない感情的仕事」という性質故の摩擦を、おっさんの体験から述べたい。
<無用な事務の押し付けによる摩擦の発生>
おっさんの体験を話す。
会社で物を買ったり、修繕等の支払いをする際のこと。
定型のフォームがあり、相手方の納品伝票や成果品のチェック書類を添付して、経理部門へ提出する作業があった。
添付書類はホチキスを使って、左端を二カ所留めるという決まりがあったのだが、おっさんの所属した係の上司は妙なこだわりを持っていて
「左端を糊付けしよう」
と特別な指示を出してきた。
隣の課どころか、隣の係すらこの方法は取っておらず、3000人規模の組織で恐らくこの係だけが糊付けであった。
その事実をやんわり示し、ホチキスに緩和してもらえないかおっさんが提案したところ
「経理がいいっていうならいいよ」
と不機嫌そうに返答してきた。
じゃあ経理に確認しますねとおっさんは早速電話した。すると経理はむしろ「ホチキスのほうが助かる」との回答だった。
というわけでホチキスにしますね、と事情説明しておっさんはホチキスで提出した。
その後1、2時間ほど現場作業を行い、戻ってくるとホチキス止めの伝票が、おっさんのデスクの上に帰ってきていた。
どういうことですか?と尋ねると
上司「いや、これは糊付けだから、糊付けでも大丈夫って経理が言っていたから」
おっさん「経理がいいといったら、ホチキスオッケーだと仰ったじゃないですか」
上司「いやいや、このやり方だったらどこに行ってもペケ喰らわないから、これで慣れておけば大丈夫だから」
おっさん「経理はホチキスのほうがいいと言っていたんですよ?」
上司「経理は糊付けでも間違いではないと言っていたから。」
平行線だったので、おっさん分かりました、納得は無理ですが糊付けにしますよと引き下がった。
次に翌年度になった時のこと、別の部署から移ってきた人が、やはりホチキス留めで伝票を提出して問題になった。
上司は後輩から受け取った書類を、何故かおっさんにおしつけ「後輩に、糊付けで書類を作るように指導しろ。」と詰め寄ってきた。
書類を受けたのはこの上司である。書類の処理方法についての決定権も係長(この上司)にある。
当然なぜこの事務処理なのか説明するのも係長の仕事である。それをなぜ下っ端の俺が?
結論から言うと「逆らったおっさんへの当てつけで、ハラスメント」だったのである。
無論そうハッキリと上司は認めやしないが、指示に対しておっさんは反撃する。
おっさん
「以前これで私と意見違って話し合いしましたよね? それで経理がOKならホチキス許すと言っておきながら、結局約束破って認めてくれなかったので、上司さんのやり方で今も続けているじゃないですか。
そういう納得のいかない状態で、揉めた張本人に、わざわざ指揮命令系統曲げてまで後輩指導して来いって、そりゃ無茶ですよね? どんな意図で、こういう指示を出すんですかね?」
上司「コンゾー君の指導の練習になる。」
おっさん
「いやいや、ならんでしょうどう考えても。何故急にコンゾーが出てくるのか、そうまでして糊付けに拘るのか、全く説明できませんよ?後輩の立場だったら不審な点ばかりです。
せいぜい、ここでは上司さんがどうしてもというので従ってくださいと、それしか言えませんけど?
そんなことを、私を通じてわざわざ言っても、後輩さんが首をかしげるだけじゃないですか?」
上司「それで構わないから指導しろ」
おっさん
「構わなくないでしょう。なんでそんな投げやりなんですか?
そもそも指導は係長の領分でしょう。後輩さんから上司さんが直接受け取った書類を、返すときは私経由でって、違和感あり過ぎでしょ?
しかも明らかに、糊付け処理に納得していない私が指導するって、絵踏みですか? 当てつけながバレバレですよ。失礼じゃないですかね。」
こんな無茶苦茶なことはないが、以後上司は黙って押印を拒否したので、やむを得ず言われたとおりにした。
一体全体何がしたいのか? 皆に嫌われたいのか? 新しい後輩に拒否されるのが怖いのか? 失礼なのに何故おっさんに妙な役を押し付けるのか?
どう考えても単におっさんに当てつけしたい以外の意図が見当たらない。
納得ができないまま後輩のところに行くと、後輩もやはり納得はしていないようだった。
おっさん
「じゃあ後輩さん、ウチではとりあえずそういう決まりなので、糊付けでお願いします。。。」
後輩「うーん。。。まあそういうなら、どっちでも従いますけどね。」
おっさん
「納得は無理か。じゃあとりあえず、もう一度だけこのまま出してみて、帰ってくるようなら糊付けで行きましょう。」
後輩「そうですね。じゃあそれで。」
まあ面倒くさいこと。そして結局書類が黙って帰ってきたので、以後は糊付けにしましょうと諦めるに至った。
この例も極端ではあったが、事務処理の場合は白黒をつけるのはあくまで上司であり、答えが一つではないからこそ、マジョリティであっても自説や慣れたやり方を曲げて従う必要が生じることもある。
また、約束を反故にしてまで自説にしがみつくような上司がいても、法律行為や実作業と違って、必要性を判断する基準が曖昧で指摘しづらく、チェックを返さて抵抗されると仕事にならないので従うしかない。
たとえばマイクロマネジメント系の嫌な上司に当たると、事務処理は無法地帯かと思うほど細かい要求が並び、理不尽さを痛感することになる。
おかしいなこの処理、と思っても覆すのが難しく、つまらない摩擦ばかり生じ、最後は権力で抑え込まれてなかなか改善に至らない。
そこもまた事務がストレスフルでおっさんが苦手とする所以でもある。
次回に続く