毛玉のボールのブルース
柴田ケイコさんの絵本『めがねこ』から生まれた一曲
TheWorthlessさんの『毛玉のボールのブルース』をリハーモナイズしてカバーしてみました♫
『毛玉のボールのブルース feather feat.めろう MIX』です。
思春期からの「めがね(っ)こ」としてはカバーせざるを得ないお題。
Sound Cloudに音源をアップしましたので、ぜひ踊りながら聴いてみてください▼
※ © 著作権はTheWorthlessの作詞・作曲者のわしみごうさんに帰属します。
ジャグ・バンド「ザ・ワースレス」さんの2024年からはじまった楽しい企画
4曲目となる4月の課題曲は『毛玉のボールのブルース』
ザ・ワースレスさんのジャグバンド & コーラスの魅力と作者のミスターが歌詞は昭和のアイドルソングをイメージされたと語ってらしたように、どことなく懐かしいフレーズも登場する1曲。
原曲をぜひお聴きください▼
ちなみに私はこの企画がはじまってからこれまでに3曲カバーしています。
1月の課題曲「君に会いに行こう」
2月の課題曲「すきやき食べたい」
3月の課題曲「ベジタブルR&R」
こちらもぜひ聴いてみてくださいね▼
ザ・ワースレスのみなさん、ニジノ絵本屋のみなさん、ふわはねさんとは4月28日(日)に関西蚤の市@京都みやこメッセで再会できそうでうれしいです!ご都合あう方はぜひ遊びにいらしてください。私は14-16時頃にキッズマルシェにあるニジノ絵本屋さんブースで絵本『かわいいことりちゃん』のサイン会をさせていただく予定です(関西蚤の市は4月27日(土)〜29日(月・祝)の3日間開催されます)。
ここからは個人的な今回のカバーの制作過程での思考の流れや気づきを自分のための備忘録として書き留めた文章です。興味のある方は音楽を聴きながら目を通してみてください。
※ 文章に出てくる音楽は下記のプレイリストにまとめてみました。
お時間のある時に聴きながらどうぞ。
『毛玉のボールのブルース』リハーモナイズのプレイリスト
リハーモナイズ
リハモの準備
まずは原曲がどういう調やテンポ、和音で構成されているか確認しました。
イントロ
ミスターが苦心の末に生み出したと書いてらした原曲のイントロは
ドレミファソラシドの4つ目のファ(ヨ)と7つ目(シ)の音を抜いた5音階
ヨナ抜き音階 + 最後のコードがFm=サブドミナントマイナー(ちょっとここだけメロディの音がハ長調から半音変わってG#(Ab)となり不思議な響きになるところ!私も大好きなコードです♪)でうれしい工夫が見られます。
ちょうど今年はじめたバンド活動でカバーしはじめた小沢健二さんの「ブルーの構図のブルース」もヨナ抜き音階が印象的に使われていて、しかもKeyが「毛玉のボールのブルース」と同じCということもあり、そのままコードを置き換えてリハモしてもいいかもと最初は考えていました。
サブドミナントマイナーのFmをドミナントセブンスのG7に変えメロディのG#(Ab)の音はFm(m3rd)からG7(オルタードのb9th)として考えなおせば無理なく美しいハーモニーができそうに思えました。
楽譜と音源です▼どんな響きになるかわかるので聴いてみてください。
中山うりさんの「青春おじいさん」の間奏みたいに、ヨナ抜きのメロディを繰り返しながらコードを変えていき、響きを変化させていくのも面白そうだなとか考えていました。
が、どちらの案も採用されずに最終的にこの原曲のイントロのヨナ抜きのフレーズ、私のリハモではアウトロに移動し活躍してもらうことにしました。
このイントロのメロディの最後の音をG#(Ab)に半音変える工夫が面白く、他にも調から外れた不思議な音がメロディに入る曲を思い出して聴きました。
毛玉「花粉症」サビ「あの靴四年経っても」の「四年経っても」の音など)
奇遇にも「アーティスト名「毛玉」!」とびっくりしました!
ミツメ「エスパー」Aメロ(「長く伸びた影」の「げ」の音など)
半音変わるだけでなぜこうも胸をぎゅっとつかまれるのでしょう。
で、ミツメ「エスパー」を聴いているうち
「4-3-2-1進行(ミニー・リパートン「Lovin' you」でおなじみのLovin' you進行)ってやっぱりいいなぁ」とあらためて感じて、この進行をメインにリハーモナイズしてみようと決めました。
で、なぜ原曲のイントロをアウトロに移動しちゃったかというと
ふと新しいイントロのフレーズが浮かんできてしまったからです。
(もうひとつの理由はアウトロのところで後述します)
ジャズ作曲家挾間美帆さんの「情熱大陸」(4月7日放送)で「フレーズが生まれる瞬間」が映り、「音は後で変えるけどリズムは採用」と話されていて「かっこいい!」と思っていました。その数日後…寝る前にトイレに入ったらふわふわと頭の中でリズムが鳴りはじめ、あわててピアノに向かい音を探してこの新しいイントロになりました。
ヴァース(Aメロ) 「私の気持ちなんてわからなくていい〜」
前半4小節は4-3-2-1進行 = Lovin' you進行で、後半4小節が変化します。
歌詞の切なさにあうコード進行にしたくて、音を探して辿り着きました。
プリコーラス (Bメロ) 「電気が点いてなくても階段登れるけど〜」
作曲者ミスターの原曲のテーマ「昭和のアイドルソング」を一番感じたところかもしれません。のんしゃらんが奏でてらっしゃる「ドンッチャッチャッ」が大瀧詠一さんのサウンドに聴こえてきて、その後に「カラカッ」とか打楽器の合いの手を入れたくなってきます。
私は前半4小節で内声が半音でG→F#→F→Eと下がるようにし、「けど〜」にⅢ7=E7(切なコード)を置いて、メロディをG#(Ab)に半音あげました。
「けど〜」の切なさを強調してみたかったんですね。
大好きなサブドミナントマイナーⅣ=Fm7はそのままに、最後の「る〜」ドミナントセブンスⅤ7sus4でいよいよコーラス(サビ)へと向かう期待感(緊張感)を出し、原曲ではトニックⅠ=Cに着地するところを→サブドミナントⅣ=FM7へとかわすことで、切なさを増幅させたいなと考えました。
コーラス(サビ) 「電気が点いてなくても階段登れるけど〜」
前述の通りミスターが「この曲は昭和のアイドルソングをイメージして作曲した」と書かれていて、「サビの「寝る前は歯磨けよ」はやっぱり長さん(いかりや長介)か!」と妙に納得していました。
原曲のサビのコードはⅠ=C⇄Ⅳ=Fの反復(この反復進行について時代の変遷とともに30曲あげてらっしゃる興味深い記事も見つけました)で、これまたバンドでカバーの練習をしているフィッシュマンズ「POKKA POKKA」のアレンジがそのまま使えそうです(KeyもCで同じだし)。それはそれでおもしろそうだし、さらに「POKKA POKKA」の元ネタかもしれないと個人的に思っているルーリード「Walk on the Wild Side」も同じコード進行でこの雰囲気もいいかもと考えました。最近ではカバーの達人と目されつつあるflex lifeさんがシュガーベイブの名曲「DOWN TOWN」をこのアイデアでカバーされていて「雰囲気もぴったりあっていて最高だな!」と感じていました。
でも…
「いや、私リハモ科だし、リハモせずアレンジだけ変えるのってどうなの?」と心の声が聴こえてきます。勝手なルールをこしらえてしまって、2つのアイデアは採用されないことになります。
ここでまたもやオリジナル・ラブ「夜をぶっとばせ」が聴こえてきました!
4-3-2-1進行ならぬ4-3-2-3進行(どちらも隣のコードに移っていく順次進行ですね)でサビがループし疾走していくのですが、それがたまらなくクールで、歌詞から浮かびあがる切なさをテーマにリハモしている私のいまの気分にぴったりだったのでこの進行で進めることにしました。
ブリッジ(大サビ) 「お気に入りの場所も段々狭くなってく〜」
歌詞とミスターの歌声(声高いしめちゃ上手い!)からすっかり混乱しちゃってる様子がひしひしと伝わってきました。
リハモではダイアトニックコードはいったん横に置き、メロディと干渉しない程度でコードを並行移動させ、この「混乱」を表現できないかなと考えました。前半8小節でⅠ/Ⅱが並行移動し、後半2小節ではⅠ9が並行移動します。
コンスタント・ストラクチャーやパラレル・ハーモニーになるのかな…?
参考にした音源は蓮沼執太フィル「Meeting Place」、姫乃たま「いつくしい日々」(長谷川白紙さんのセルフカバーによる「いつくしい日々」も最高)では不穏な空気からの開放感がとても印象的で、このブリッジでは少しでもその不穏な空気を演出できないかな…と試みました。また「昭和のアイドルソング」というキーワードから、「ピンチに遭遇したときの80年代のゲーム音楽」を連想し「8ビット」っぽい音色を作ってみました。
インタールード(間奏)
ミスターがインスタライブ「4月の課題曲のおさらい放送」で熱く語られていた通り、原曲での間奏はこの曲の肝だなと感じさせるコード進行で、sunnyさんの熱いカズーから朗々とはじまる前半、そして後半は「日本人ならみんな好き」とミスターが語るマイナーの哀愁の響きが最後の最後にはⅢ7=E7(切なコード)で切なさが頂点に達したところで、Bメロへと移ります(BメロのSunnyさんと双子のかけあいも印象的です)。
リハモバージョンではブリッジでの不穏な空気からの解放感を目指して、思いついた新しいイントロを変化(4分音符を8分音符に詰めて3拍子(6/8)に変えられることにも気づき)させた新しい間奏を入れてみることにしました。イントロと間奏で少しだけコードの並び方とメロディを変えています。
Em7をEドリアンモードととらえてEm13(CのKeyにない9thのF#、13C#)、
CM7をCリディアンモードととらえてCM7(#11)(CのKeyにない#11のF#)をメロディに入れて(ここでも何音か半音だけ変えて)ちょっぴりだけ宙に浮いてしまったような感じにしてみました。
大サビの緊張感から解放され、ぱっと宇宙空間にふわふわ浮かんだ感じにしたかったんですけど伝わるでしょうか。
原曲と変えBメロには進まずに、クールなサビへと向かうことにしました。
アウトロ
前述した通り原曲のぴーひゃらんがバンジョーで奏でてらっしゃる(と思われる)イントロをアウトロに移動しました。
後述する歌唱シンセサイザーの「めろう」さんにスキャットで歌ってもらいました。
というのも最後のサブドミナントマイナーⅣm7=Fm7で切ない気分にふんわりと希望の光が射して温まったところで終わりたかったからです。
サブドミナントマイナーには「マイナー」という名前がついていますが、個人的には「ほんわかとした温かみ」を感じる和音で、切ない曲の最後の最後に希望の光を感じさせる役目を担ってもらいたかったんですね。
「いろいろあるけどなるようになるよね!」と。
「レット・イット・ビー」というより「ケ・セラ・セラ」かな。
アレンジ
今回はどうしてエレクトロニカなアレンジになったのか?
3月末から4月初週にかけてはじめて新型コロナウイルスに感染しました。
ありがたいことにあやさんやミスターから「ボローニャ行こうよ!」と誘ってもらい、一緒に行きたいきもちが募りつつ「行く!」と言い出せないままに時がすぎ、「これもし決めちゃってたら渡航できひん…って事態に陥り、大変なご迷惑をおかけしてたろうな」と思うと逆にホッとしました。
2020年にボローニャに入選させてもらったにもかかわらずパンデミックで行けなかった挙句、2024年に収束した段階で自分がコロナで行けなかったりしたらもう立ち直れないじゃないですか。
きっと行くべきタイミングがあると信じてリベンジしたいなと!ですので、ニジノ絵本屋チームのみなさんのイタリア〜台湾の旅の模様を拝見しては心励まされていました。
ということで
4月1日に4月の #ラバーズの一月一曲 の課題曲が「毛玉のボールのブルース」だと発表されたときは発熱して寝込んでいました。そのとき学生時代に熱を出し寝込んでいたときに何度もリピートして聴いた矢野顕子さんの「グラノーラ」が思い出され、横になり静養しつつ聴き返しました。
「花のように」(間奏のトライアングルが信じられないくらいにクールでかっこいいです!)まで聴いて「シンセサイザーが入るポップなアレンジをしてみたいな」とぼんやりと思いました。
その後に坂本教授(ちょうど1周忌の頃でした)がシンセサイザーを語ってらっしゃる映像が流れてきて、電子音楽へと心が移ろっていきました。
おかげさまでコロナ自体はすぐ快癒したのですが、気管支に違和感が残り、歌うのに不安が残る状況でした。この企画がはじまってからいつも「誰か歌ってくれないかな…」と思っていたので、今回は思い切って歌声シンセサイザーのNEUTRINO「めろう」さんに歌ってもらうことにしました。
ちょうどボカロPの駄菓子屋O型さんの「あちこちデートさん」を聴き、編曲の素晴らしさに「うわぁヤバい!」と仰天していたタイミングでもありました。
最初はフォークトロニカなアプローチを考えて宮内優里「Terf」を聴いたりしましたが「1曲作るのに2年ぐらいかかりそう…」となり、くるり「ばらの花〜remixed by rei harakami」に幾度もうなずき、柴田聡子「Side Step」、宇多田ヒカル「One Last Kiss」を聴いたりして「四つ打ちにしてみようかな」とも考えました。ボーカロイドの発案者と言われている竹村延和さんの「Wandering」みたくロボットのような歌声もイメージしたりしましたが、これも「3年ぐらい…」となりあきらめました。
振り返ると回復した4月初旬に春の音楽フェスを巡れたり、バンドの練習会を開けたことも制作意欲が増した要因だと思います。神戸sono sonoで観れた浦上想起・バンド・ソサエティ「角を探す人」、KIRINJI「非ゼロ和ゲーム」、坂の上音楽祭で観れた君島大空「˖嵐₊˚ˑ༄」どのステージにも音楽の魔法が宿っていて、とてもとても素晴らしく音を作りたくなりました。
また、この1ヶ月バンドの練習曲に選んだMoons「Let's Do It All Again」を耳コピしていて、リズムに関してはこの曲の影響も強い気がします。
「大切な存在をなくしたけど、もう一度すべてをやりなおそう」という歌。
テンポは「原曲のBPM=136と同じにしようかな」とだけ決めて、ディアンジェロ「Spanish Joint」を彷彿とさせるflex life「Amefrica」、星野源「肌」、のような軽快なリズムと80年代的なリズムマシン(Roland CR-78)をイメージして踊れるようなリズムを目指してトラックを組んでいきました。
シンセサイザーは考えたフレーズを打ち込みつつ、コードにははじめてアルペジエーターをいくつか使ってみました。それと今回はベースラインを作っているときが一番ワクワクしたかもしれません。「踊れるか踊れないかはベースで決まる!?」とか勝手に妄想しながら「どんなフレーズだと踊れそうかな?」と考えていきました。
果たしていつの時代かのアイドルソングに仕上げられたかはわかりませんが、歌詞から感じた「切なさ」を軸に、今回も自分なりにリハーモナイズができて楽しかったです。また、リハモ科としては「ルーツ・ミュージックよりダイアトニックコードで考えられる曲の方がリハモしやすい」と感じました。前回3月のお題「ベジタブルR&R」の「ロックンロール」のリハモがかなりむずかしく感じていたので。
といいつつも個人的にはFievel Is Glaque「Save the Phenomenon」のようなダイアトニックコードや4/4拍子のしばりをふわりと跳び超えてゆくような曲をいつか作ってみたいなとも思いはじめています。
今回も長い備忘録となりましたが、最後までお読みくださりありがとうございます。
みなさんの #ラバーズの一月一曲 いつも楽しみにしているので、またぜひ投稿して聴かせてくださいね!
私も毎月このペースでは参加できないかもしれませんが、これからのお題でリハーモナイズのアイデアが浮かんだらまた参加してみたいなと思います。
※ 「太字」部分は文章内でご紹介している楽曲から歌詞を引用しています。
歌詞の © 著作権は各作詞者に帰属します。
※ 登場するアーティストは呼称を敬称略としていたりしてなかったりしていますが、すべてのアーティストに敬意をこめて紹介しています。
※ 私はいま音楽理論を勉強中ですが、音楽学校等は出ておらず独学の最中の知識だけで記事を書いているため、楽理的におかしなことが書いてあるかもしれません。どうぞ参考までにお読みいただければ幸いです。