三伏--細君・東方朔
三伏とは
夏の最も暑い時期。夏至後の第三の庚(かのえ)の日を初伏、第四の庚の日を中伏、立秋後の最初の庚の日を末伏といい、この三つをあわせて三伏という。
2021年の三伏は......
【初伏】7月11日~7月20日
【中伏】7月21日~8月9日
【末伏】8月10日~8月19日
東方朔と細君
漢の武帝の治世に、東方朔(トウボウサク)という、ユーモアと機知に富む家臣がいた。
彼は武帝の側近として、滑稽な会話などをして、独裁者でもある武帝の心に余裕を持たせる役割を果たしていた。
さて、夏のさかりの三伏(サンプク)には、皇帝から廷臣に肉を賜るのが習わしであった。
ところがその日、肉の用意はもうできたのに、それを分ける係の役人がやって来ない。
しびれを切らした東方朔は
「伏日(三伏)の時節には、早退するのが習わしである。肉をもらってさっさと帰ります」(伏日當早歸,請受賜)と言って、剣を抜いてサッと肉を切ると、懐にたくしこみ、
「お先にごめん」と帰宅してしまった。
もちろんさっそく、この事は告げ口された。
翌日、朔は案の定、武帝に呼び出さて、そのわけを聞かれた。
「肉を賜るのに、その詔(みことのり)を待たず、剣をもって割いてそのまま勝手に持ち去るとはどういうことか?」(昨賜肉,不待詔,以劍割肉而去之,何也?)
東方朔は、冠を脱いで一礼して謝罪した。
武帝は再び厳しく問いただした。
「先生、起立して、自己批判をしてみなさい」
(先生起,自責也!)
朔が答えて言うには、
「まったくもって、詔(みことのり)も待たず、かってに頂戴いたすとは、
なんと無礼でありましょう。剣を抜いて肉を切る、何と勇壮なことでしょう。
切り取る肉はほんのちょっと、なんと廉直なことでしょうか。おまけに、持ち帰った肉は細君に贈る。なんと仁愛に満ちた行いでしょう」
武帝は大いに笑って言った。
「自己批判せよと言ったのに、逆に自分を誉(ほ)めるとは」
(使先生自責,乃反自譽)
これを面白がった帝からは、さらに酒一石と肉百斤を賜り、
「帰って細君につかわせ」
との、おことばであった。
【漢書.東方朔傳】
※細君
・一説に固有名詞。東方朔の妻の名。
・自分の妻を謙遜して呼ぶ言葉。
いずれにしても他人の妻を「細君」と呼ぶのは失礼かも。
http://www.konton.net/
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