同級生シリーズのアニメの歴史と今後について
なつかしい同級生のアニメシリーズ
今は亡きエルフの傑作とされる恋愛アドベンチャーゲームの「同級生」は、およそ30年の時を経て「同級生リメイク」として令和の世に復活しました。
「同級生」は1994年にピンクパイナップルよりOVA化されています。
当時は15禁としてリリースされましたが、内容自体はナンパゲーとしての側面が強かった原作よりもドラマ性が強化され、青春学園ものとして昇華されたために大変に好評となりました。
主人公は原作を忠実に再現されていますが同時に脚色も加えられ、「うる星やつら」の主人公をモチーフにしたようで、さらに個性が強まっています。
全4巻ですが、特に美沙とさとみがヒロインとなる1・2巻がファンからは人気のようです。
ちなみにさとみは原作ではHシーンが事実上ありませんでしたが、OVAでは脚色が加えられて存在するという点がアニメオリジナルの要素となります。
この「同級生」の成功により、ピンクパイナップルからは青春学園ものアニメの派生作品がいくつも作られ、シリーズ化されています。
個人的には一番最初に見たエロアニメがこの「同級生」シリーズだったので、ピンクパイナップルと言うとこれのイメージが強いです。
同級生クライマックス
「同級生 夏の終わりに」には直接のアフターストーリーとして、「同級生クライマックス」というものがあります。
前作は文字通りに夏休みが舞台でしたが、こちらは秋の文化祭がテーマとなっています。
アニメオリジナルのヒロインも登場しますが、主人公よりもむしろサブキャラの悪友にフォーカスが当てられています。
主人公は前作で結ばれたヒロイン達とハーレムを構築したりと前作よりもラブコメ要素が強くなっているのも特徴です。
ちなみにシリーズ4巻までは看板ヒロインの桜木舞が表向きのヒロインという扱いですが、このOVAシリーズではファンから一番人気があり、「同級生2」にも登場した美沙が本命ヒロインの扱いのようです。
事実、クライマックスではまた主人公とのドラマがあります。
なお、この作品には世界観も同じである次作「同級生2」メインヒロインの鳴沢唯も顔出し程度で登場するというカメオ的要素もあり、次回作の宣伝も行われています。
下級生シリーズ
エルフからは他にも学園ものとして「下級生」がリリースされており、こちらもOVA化されています。
が、このシリーズに関しては少しややこしく、エルフ原作の「下級生」とピンクパイナップルオリジナルの「下級生」という二種類が存在します。
先にリリースされたのがピンクパイナップル版の「下級生」です。
ちなみにこちらはエルフの「下級生」の原作ゲームがリリースされるより前に作られているので、こちらが元祖「下級生」と言えます。
エルフ版の下級生は区別のためか「あなただけを見つめて」というサブタイトルがつけられています。
ピンクパイナップル版にも一応、「MY PRETTY CLASS STUDENT」というサブタイトルがあります。
ピンクパイナップル版の「下級生」は春夏秋冬の季節をテーマにしたヒロインとドラマで構成されており、ヒロインの苗字には季節の語が含まれているという演出があります。
既に「同級生2」の原作がリリースされていたのもあってか、登場ヒロインやキャラクターは所々に「同級生」や「同級生2」からのオマージュ的な要素が所々に含まれています。
好評だったエルフ版と比べると知名度などは低いようですが、ヒロインらのHシーンはこちらの方がかなり過激という印象です。
転校生
こちらもピンクパイナップルオリジナルのOVAで、全4巻がリリースされています。
登場ヒロインは全員、「転校してきた」「これから転校する」などタイトル通りに「転校生」が作品のテーマとなっています。
「同級生2」と同じくメインヒロインがシリーズを通して非常に目立っているのが最大の特徴で、主人公との幼馴染の関係も含めて設定がかなり作り込まれているのが特徴です。
また、ピンクパイナップル学園もの派生作品のヒロインはタイトル通りに「同級生」か「下級生」のどちらかになるのがほとんどですが、本作では「上級生」の年上ヒロインが登場するという珍しい要素があります。
同級生2
恐らくエルフの学園ものシリーズで最も人気のある作品です。
OVAは1996年から1998年まで12巻に渡る長期シリーズとして展開されています。
当初は9巻までの予定だったようですが、こちらも大変好評だったために延長されました。
原作は冬休みがテーマで期間が短い(そのために難易度が高かった)のですがOVAはかなり内容に変更が多く、高校三年の一年間を通すことで色々なヒロインと出会えるような構成になっています。
そのため原作ではなかった水着のシーンがあったりと、かなり脚色やオリジナル要素が多いです。
特に主人公と唯だけでなく美佐子さんの恋愛にもフォーカスを当てているのが特徴。
ライバルの有友や芳樹などはギャグキャラになっていたりとコメディ要素も強く、原作がドラマ重視だったこともあってか深夜アニメで放送してもおかしくないような内容になっています。
実際、本作はHシーンを省いてテレビ放送されたことがあることから、なおさら一般向けの作風だったと言えます。
そのためか後半になるにつれてHシーンが希薄になっていく傾向があり、18禁アニメとしてはやや中途半端な印象もあります。
特にHシーンなしの一般向けなエピソードがあるというのがエロアニメとしてはある意味で異色的でした。
原作がドラマとしては本当に完成度が高かったのがよく分かります。
卒業生
同級生2の外伝である卒業生も最後にOVA化されました。
これは上記のOVAとは完全に独立した作品であり、本編の主人公や時系列は原作準拠となっています。
元々卒業生は原作からして一般向けの内容だったので、こちらもお色気シーンが少しある程度で一般向けアニメで放送しても問題ない作品です。
このOVAは主人公とヒロインが結ばれるまでの周囲のヒロイン達の様子をメインにしており、原作は街の中だけが舞台でしたが温泉も舞台になったりと9割以上はアニメオリジナルと言って良い構成になっています。
特に唯と可憐が「キャッキャウフフ」をするシーンが非常に多いのが原作にもない本作独自の要素。
このOVAの本編主人公は一切セリフがないですが、原作同様にヒロイン複数に手を出しているのが見て取れます。
原作でも唯と結ばれないルートで、実は陰でこんなことをしていてもおかしくなかったかもしれません。
ちなみに、原作では夢仙人といった攻略をサポートするゲームシステムの一部なお助けキャラが存在しますが、その中の気分屋というキャラが「男女の恋を応援する神様」という設定に上手く落とし込まれてストーリーの全般で違和感なく登場しています。
なお、上記の本編のOVAでは同じくお助けキャラの怒り野ボツ子がストーリーに干渉しない程度でモブキャラとして登場しています。
令和に蘇った同級生シリーズ
さて、令和の世に復活した「同級生リメイク」ですが、旧作と同じピンクパイナップルより2022年にOVA化されました。
発表当初はかなり期待されていたのですが、残念ながらこのOVAはとても評判が悪く、たった2巻で打ち切られてしまいました。
視聴してみると良くも悪くも「原作ゲームを再現しすぎた」というのが欠点で、ステータス画面が突然出てきたりと、なろう系小説のような演出は空振りしていて不評のようです。
主人公も旧作と違って原作通りな没個性になってしまい、2巻ではさとみとのHシーンがありますが元々原作には無かったのもあってか、こちらも旧作と違って未遂に終わってしまっています。
そのためか本作では最後に結ばれるのは美沙でも舞でもなく、さとみとなっており、エピローグにオリジナルのHシーンが追加されていますが、これもマニアックすぎる内容が「同級生」の作風に合っておらず不評のようです。
またタイトルは「同級生」ですが、原作通りに「同級生じゃないヒロインと相手をする」という要素もちゃっかり引き継がれており、1巻では亜子さんが登場します。
これはこれでヒロインの多様性があって良いのですが、年上のヒロインでまともに出番があるのは亜子さんのみで、他の同級生以外のヒロインは背景のみだったり、真子さんや麗子さんのように思わせぶりに登場しながらエピソードのヒロインにはならなかったりと、非常に中途半端なものとなっています。
恐らく、当初は3巻ぐらいまでリリースする予定で、各巻ごとに「同級生のヒロイン」と「同級生以外のヒロイン」が相手になるという構成だったことが窺え、真子さんや麗子さんの思わせぶりな登場もその名残なのではないかと思われます。
作画が悪かったりするのも不評のようですが、1巻のリリース当時は忌まわしきコロナ禍だったこともリリースが延期したり、品質の悪さに影響していたと考えられます。
それでもやはりこのリメイクの出来は2巻も含めて悪かったと言わざるを得ないでしょう。
演出を担当された監督は本作のコンセプトをよく理解していないことも窺え、ハード系の作品じゃないのにHシーンで過剰なアクションをしてしまったりと、作品の雰囲気をぶち壊しにしてしまう演出が多く見られました。
アニメだからとやたら動かせば良いという訳じゃないのがよく分かります。
ちなみに2巻では予言だったのか「同級生2」のパッケージが登場するというニクイ演出があったりします。
期待と不安の大きい同級生2リメイクのOVA
この夏、同級生2もリメイクが発売され、大変に話題となりました。
追加要素もあったりとリリース後の評判も上々のようで、個人的にも満足の行く出来栄えでした。
上記のように前作のリメイク発売からおよそ一年後に旧作と同じピンクパイナップルでアニメ化されたので、この流れで行くと恐らく本作も同じくアニメ化される可能性が高いです。
ですが正直な所、前作リメイクのアニメの出来や評判も悪かったので、2は相当がんばらないと二の舞になり兼ねないでしょう。
旧作が好評だったのは大幅な脚色や設定改変等を行って、各エピソードを丁寧に作り上げたが故の賜物と言えます。
特にメインヒロインとして唯の存在があったのが大きいでしょう。
ただシナリオ重視の作風故に、旧作では後半になるにつれてHシーンが薄くなっていくという欠点もありました。
リメイク版は原作でHシーンがない&薄いヒロインにも追加のHシーンが後日談という形で追加されたので、これを活かすこと自体は可能でしょう。
原作は冬休みという短い期間でありヒロインの各シナリオは長いこと、複数ヒロインの攻略が難しい&一部ヒロインのルートになると攻略不可になったり強制ENDになるといった構成から、仮に前作リメイクのOVAのようにそのまま原作を再現してしまうと、ヒロイン一人を相手にしただけですぐに打ち切りになってしまうでしょう。
この問題を解決するのに、参考にできそうなアニメがあります。
それは2008年にリリースされて、2010年にアニメ化された「ヨスガノソラ」です。
このアニメも原作がドラマ重視の作風となっており、アニメでのヒロインは全部で4人となっています。
それらのヒロインのシナリオをどうやりくりしたのかと言うと、「時系列のリセット」です。
ヒロインのシナリオが一つ終わると、時系列がリセットされて別のヒロインのシナリオへ分岐するシーンから始まるようになっており、完全に各ヒロインごとの個別ストーリーという変わった構成になっていました。
この時系列リセット方式が、同級生2リメイクのOVAを長期シリーズ化するのに役立てられるのではないかと個人的には思っています。
1巻ごとのヒロイン個別のストーリーにして次の巻では時系列をリセットしてしまえば、作中の日数制限に縛られず別のヒロインのルートに移行できます。
実際、「同級生2」の原作にはゲームシステム上のお助けキャラで時間を巻き戻す夢仙人というのがいます。
いわゆるメタフィクションですが、卒業生のOVAでは気分屋を上手く脚色して登場させており、リメイクのOVAが良くも悪くも原作のゲームを再現していたので、この夢仙人を上手く活用できるかもしれません。
上手くいけば年上ヒロインも含めて、全ルート分を網羅できる可能性があります。
ただ、キャラ付けが似通っていたり、サブキャラと結ばれるヒロインなどもいるので実際は難しいでしょうが…。
メインヒロインとなる唯の扱いですが、シリーズ最後の相手になるのは間違いないでしょう。
ただ、温泉旅行など唯がシナリオに絡んでくるルートもあるので、各ヒロインのストーリー中に所々で主人公を気にする唯を目立たせることもできそうです。
なお、外伝の卒業生についてですがリメイクではHシーンが追加されており、元々短編で主人公も本編より個性があるため「卒業生リメイク」といった形で1巻のみ作られても問題ないかと思われます。
同級生2は思い入れが深く、旧作アニメの出来も良かっただけにリメイク版の将来が不安になる所です。
少なくとも、演出をする監督は別の人に変えた方が良いのは確定でしょう。