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【築50年越え】中古住宅購入のリアル

先日も新築住宅が売れないという記事を書きましたが、その裏では中古住宅の需要は高まっています。


大手不動産情報サイトでは、「新築」を探す人と「中古」を探す人の割合が数年前から逆転しました。


ここに来てその勢いに拍車がかかっているのですが、


「でも中古住宅って実際どうなんだろう…」


と不安な方も多いでしょう。



そこで私が一級建築士としてのプロ目線と、実際に築50年越えの中古住宅をリノベして暮らしている住人目線、その両方からリアルな実情をお伝えします。


(ここで言う中古住宅はマンションではなく戸建てに限定しています)



自分にあった中古住宅購入はどれか


中古住宅購入と言いましてもそのパターンは複数あり、大きくは以下の3つに分類されます。

① 中古住宅を購入し全く直さずそのまま住む

② 住宅会社等がリフォームした中古住宅を購入する

③ 中古住宅を購入し住宅会社等にリフォームを依頼する

どのパターンにもメリットデメリットがありますので簡単に解説します。


①の最大のメリットはやはり初期コストです。

住宅購入費用だけで済みますからね。

とはいえお風呂や洗面・トイレなど、古い水まわり設備に抵抗ある人は多いはず。

築浅ならともかく、中古住宅に全く手を付けずそのまま住む人は少数派かもしれません。


①のデメリットは後々リフォーム費用などが発生する可能性がある、という点でしょうか。

小規模な工事ならよいですが、大規模で費用も多額になる場合は大変ですね。

物件購入と同時に工事しておけばその費用も低金利の住宅ローンで賄えたのに…、という事態も考えられます。



続いて②のメリットは、リフォーム後の状態を購入前に確認できる、といったところでしょうか。

建売住宅と同じ考え方です。

注文住宅でありがちな、完成してみたら思ってたのと違った…というリスクがなくなります。

特にリノベーション(リフォームより大規模な工事)は、着工後に計画が変更になることが少なくありません。

壁の中をあけてみたら図面と違う位置に柱があった、こんなことも今まで何度もありました…


そして②のデメリットは、構造や壁の中の状況が確認できない、という点です。

住宅会社や不動産会社が中古住宅をリフォームして販売する場合、基本的にやることは決まっています。

外壁の張り替え(塗り替え)、水まわり設備の交換、壁紙や床材の交換、主にこれらになります。

これだけやっておけば新築っぽく見えてお客さんの評判もよいので、あえてコストをかけて他の工事をすることはしません。

なので②のような中古住宅を購入する際は、床下や天井裏など出来る限りの調査を行っているのか確認しましょう。

写真など調査記録があるとより安心ですね。



最後に③のメリットでが、まずなんと言ってもリノベーションの自由度が高いという点でしょう。

②が建売住宅なら③は注文住宅で、内装はもちろん間取りの変更、断熱・耐震工事まで行うことができます。

ちなみに私はこのパターンで、まず中古住宅(空き家)を購入し自らリノベの計画を行いました。

初めて見に行ったときはこんな状態で…

空き家になってしばらく経っていたので庭などは酷い状態でした。

土地もとても100坪あるようには見えませんでしたね。

しかしこれが

こう生まれ変わるのですからリノベにはとてつもない可能性があるのです。

とはいえ③にもデメリットはあります。

それは事前に正確な工事費用が読み難かったり、リノベが計画通りに進まない可能性があるということ。

なので予め予備費を確保して想定外の事態に備えておくことが重要です。


中古住宅の価格

国交省が行った【中古住宅を選ばなかった理由】というアンケートで、

価格が妥当か判断出来なかったから

という理由が上位にあります。

中古住宅の価格の目安として分かりやすいのが築年数です。

築年数で中古住宅の価格が決まると言っても過言ではありません。

多くの物件で築30年を超えたあたりから建物自体は無価値とみなされ、土地のみの価値で価格が決まってきます。

しかし、築年数が浅いほうが必ずしも中古住宅として価値がある、とも思いません。


私が購入した中古住宅は築50年超えていたのでもちろん建物としての価値は0円です。

しかし家の中は築年数ほどの古さは感じませんでした。

きっと以前の家主がこまめにメンテやリフォームをしてたのでしょう、外壁の状態もよかったです。

しかし築年数という理由だけで価格が0円になってしまうのが中古市場の現状なのです。


築年数は中古住宅の価格の目安になりますが、価値としての目安になるかはまた別の話です。

自分自身がどのような家でどのように暮らしたいのか、それを明確にして中古住宅を探しましょう。


中古住宅の耐震性能は?

中古住宅につきまとう大きな不安のひとつが耐震性ではないでしょうか。

いつどこで大地震が起きても不思議ではない日本、今年5月(執筆時2023年9月)の能登半島地震でも多くの建物が倒壊しました。

基本的には古い建物ほど耐震性が低いと思ってもらって間違いありません。

もちろん例外もありますが、上の記事にも書いたとおり我々建築士が見れば「これは明らかに耐震性低いな…」という建物は一目でわかります。

このような中古住宅は購入を避けるか、もしくは耐震改修を行うかのどちらかですね。


我が家も耐震改修を行いました。

とはいえ築50年越えの木造建築、出来ることも限られますがこれで地震で倒壊してしまう事態は避けることができます。

更に一定の耐震改修を行えば、所得税控除や補助金を受け取れる場合があります。


またこれもよく耳にする「新耐震基準だから安全」というワード。

新耐震と聞くとどことなく安心感ありますが、今から40年以上前(1981年)の基準ですからね…

確かに法改正によりそれ以前より一定の耐震性は確保されていますが、決して安全というレベルではありませんので注意が必要です。



中古住宅の省エネ性能は?

家の性能としてもうひとつ無視できないのが省エネ性能です。

断熱性能と言ったほうが早いかもしれませんね。


電気料金が上がり続ける昨今、住宅の断熱性能は家計に大きな影響を与えます。

断熱改修工事を行えば初期コストはかかりますが、確実に冷暖房にかかる電気料金は抑えられます。

それに加え快適性もアップします。

冬に暖房をつけても顔付近ばかり暖かくて足元が冷える、こんな経験ありませんか?

これは断熱性能の低さが大きな要因となっています。


ではどれくらいの断熱性能にすればよいのか。

ちょっと専門的な話になりますが、UA値0.45~0.50あたりを目指すのが現実的でコスパがよいと思っています。

とはいえ温暖な地域だと断熱改修における恩恵が少ない場合もありますので、そこは地域性や既存の断熱性能をよく確認して決定しましょう。


また断熱改修工事も耐震改修同様に所得税控除の対象です。

国、自治体が行う補助金制度も忘れずに活用したいですね。



リノベーションの費用は?

一口にリノベーションと言ってもその内容は多岐にわたります。

ちなみに我が家で行った主な工事内容は、

・外壁重ね張り(杉板) ・耐震断熱改修 ・サッシ交換 ・給排水管交換 ・内装工事全般 ・設備交換 ・外構(庭)

逆に行わなかった工事は、屋根工事くらいです。

粘土瓦で傷みもそれほどなく雨漏りの形跡もなかったので、手は付けませんでした。

確かに屋根も新しくすれば耐久性も上がり安心ではあるのですが、リノベ費用もどんどん膨れ上がっていきます。

そうなると結局、新築と大して変わらない費用がかかってしまうのです。


リノベは何をして何をやらないのか、この見極めがとても大事ですね。

で、新築と比べてどれくらいコストを抑えられるのか。

これもまた一概には言えないのですが、私個人的には新築比70%程度のコストに抑えられると思っています。

例えば、新築で床面積30坪で3,000万円とすると、同規模の中古住宅(建物価格0円)に2,100万円程度コストをかけてリノベすれば、性能や仕上げも新築同等レベルまで寄せることが出来きるということです。

とは言っても中古は中古です。

そもそも新築と比べること自体あまり意味がないのかもしれませんね。



リノベでここまで変わる

耐震・断熱改修を行わなくても、内装や設備さえ新しくすればまるで新築のようになります。

我が家も以前の面影がなくなるほどに激変しました。

見た目だけを新築にするリフォームは決して難しくありません。

そして中古住宅の購入を検討している人は「見た目」を気にしているのもまた事実です。

よって中古住宅販売会社は見た目だけを重視したリフォームになりがちなのです。

耐震や断熱といったような目に見えない部分にもコストをかければ、もちろん販売価格も高くなってしまいますからね。


家の内部に関しては新築同等になることはご理解いただけたと思いますが、外観に関しては話がちょっと変わってきます。

庭も含めかなり激変してますが、変わっていない部分もいくつかあります。

そのひとつが建物の形状です。

外壁や窓の位置などは変わっていますが、基本的な形状は一切変えていないのです。

もちろん増築や減築することも可能ですし、瓦を降ろして屋根形状を変えることも出来なくはありません。

しかしリノベのコスパを考えたとき、建物形状は極力変えないというのがとても有効な手法です。

「外観デザインも新築みたいガラッと変えたい!」という気持ちも分かりますが、果たしてそこにコストをかける必要があるのかどうか。

わざわざ建物形状を変えなくても、外壁を張り替え庭を整えればそれなりに見栄えはしてくるものです。

その代わりあまりにもヘンテコな外観デザインの中古住宅は、選ばないようにしましょう。

中古住宅に関してはシンプルイズベストです。



中古住宅にしてよかったこと

ここからは個人的な感想や意見が中心になりますが、

まずなんと言っても建築費をかなり抑えることが出来たという点でしょう。

いくら新築で立派な家を建てても、住宅ローンに圧迫され暮らしの質を落としストレスを溜めていては何のために家を建てたのか分からないですからね。

そして立地、築年数、家や土地の広さなど望んでいた物件を見つけることが出来た、というのも運がよかったのかもしれません。

中古リノベは物件探しが大変なのです。

土地と建物、両方の要素を検討しなければいけないのでこの点に関しては明らかに新築よりも大変です。

また、中古住宅や空き家を解体せず活用することで環境に良いことをしている、というのは後付けな理由ですが、社会的な貢献も僅かながら出来たのかなと思っています。



中古住宅にして後悔してること

やっぱり新築にしておけばよかったなあ、といったような後悔は今のところありません。

間取りではちょっとミスりましたが。笑

まあこれはリノベが原因ではなく、単に私の想像力不足でしたね。



結局、新築と中古どちらがいいの?

これは案外単純な話で、

お金に余裕があれば新築、不安があるなら中古、これでいいと思ってます。

経済を回すという意味でもお金持ちには新築を建ててもらわなきゃ困りますので。笑

しかし今は余裕があっても将来に不安があったり、中古に抵抗がないというのであれば中古住宅を検討してみる価値はあるでしょう。

そしてリノベに特化してる優秀な住宅会社に出会うことが出来れば、より良い家づくりが出来るかもしれませんね。



中古住宅購入を考えてる人へ

我が家は今年で築55年目なのですが、おそらくあと30年は問題なく住み続けることは出来るでしょう。

それ以上になると今は全く問題ない基礎ですが、コンクリートの耐用年数的にもかなり厳しくなってくると思われます。

そしたらどうするかって?


解体し更地にして売却です。


これに関しては当初から決めており、おそらくその通りになるでしょう。

そもそも定年後に今の家では広過ぎますし、庭の管理も大変です。

戸建てではなくマンション住まいもいいかななんて考えています。

住宅ローンもとっくに終わっている(はず)ので、選択肢が広がりますね。


家づくりは人生づくりです。


そんなに大きな家が必要ですか?

住宅ローン金利が上がっても払い続けられますか?

一生その家に住み続けますか?

ローン完済後にその家はいくらで売れますか?

30年後、家のまわりは過疎化していませんか?

子供がその家を継がなかったらどうしますか?

海は死にますか?

山は死にますか?

春は死にますか?

秋は…


さだまさしはさておき、
家や住宅ローンが人生計画の足を引っ張るという可能性は大いにあります。

家づくり中はつい期待に胸が膨らみ、これらのリスクを見てみぬふりをしがちです。


新築と中古、どちらを選んだらあなたの人生が幸せになる可能性が高くなるでしょうか?


難しいことは置いといてそこでだけ一度考えてみませんか。


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