見出し画像

ふたりめ。私たちは知らないうちに誰かを救っている

福徳緑音(25歳)市役所職員

突然、幼馴染からlineがきた。

幼馴染と言っても、お互い友達とは思っていない。小学生の時にたまたま転校した学校に彼はいた。(そして、彼の兄とは縦割り班が一緒だった。)

中学まで同じ学校であったし、高校も隣。挙句の果てには大学まで一緒な幼馴染だ。(大学が同じと言っても彼は浪人をしたので、後輩である。何度もいうが全く仲良くない。また、どんな偶然か彼の妻と私は同名である。)

「地元でスナックみたいな人がつながる場をつくりたいんだけど、力を貸してくれない?」

毎度のことであるが、言っている意味がわからない。

意味がわからなすぎるが、とりあえず、私が出来ることを考えてみる。

私は人からの頼みを断るのが苦手なのだ。

調べてみると、スナックには許認可がいくつも必要らしい。(勉強になった。一生必要になることはないであろうが。)

乗りかかった船だと思い、知人の飲食店経営者に「お店を作るために必要なこと」をきいて回った。

そんな感じで調べたことを彼に伝えてみると。

「そんなことが必要なのか。毎度ありがとうございます。」と返信がきた。

「毎度」、、、一応彼もいつも迷惑をかけていることを自覚しているらしい。

他に自分に何かできることはないかを考えていると、一つだけまだあった。

それを彼に伝えてみる。

「役所を辞めた人が不動産屋やっているんだよね。去年まで向かい側に座ってた人でさ、そのひとに聴いてみれば?」

すると、「お願いします。」と返事がくる。

不動産屋に日程の調整をお願いして、もう関わるのは終わりにしようと思ったが、

これまで彼を野放しにしてよかったことが起こったためしがない。

私も物件探しに同席することにした。

物件探し当日、一つ目の物件で彼は「ここにします」と言い放った。

やはり、こいつは突拍子がなさすぎる。

そういえば、今回とおなじようなlineが6年前に来たことがあったな。

「僕、緑音ちゃんと同じ大学に行くことにした。」

突然の愛の告白かと思ったが、彼はそんなことはしないし、話したことは右手で数えられるくらいなので、そんな関係でもなかった。

「なんで?」と一応きいてみた。(全くどうでもいいことであったが。)

「僕、見る目だけはあるんだよね。」

それは、大学に対してなのか、私に対しての言葉なのか。

6年たった今でも、彼の真意はわかっていない。

#創作大賞2024 #エッセイ部門
#第二話

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?