笑顔をぶち壊すことを言う女
最近、怒らせるとこわいなと距離を取っていたひとがいる。夕食で、その人と同じテーブルになった。2人だけだったのでやや緊張した。
その男性は、前日別のひとに対し「もっとちゃんとすべき!!」と注意をしていた。言い方は確かに強すぎたが、理不尽なものではなかった。
彼は50代くらいで、数年前に脳の手術をしている。それもあってカッとなりやすいというのは、みんなが知っていた。
元気がないので、疲れているねというと、そうなんだよね、と言って話を始める。
昨日頭に来て怒ってしまったこと、とても後悔している。後悔というか、覚えていなくて悲しい。後から人に聞いて、自分にがっかりした。
この学校に1年近くいるが、もうすぐ次のやることを考えないといけない。そのために自分と向き合わなきゃいけない。でもそれがとても難しくて苦しい。
そんなようなことを言っていた。とてもわかる。脳の手術はしていないから、わかるとは簡単に言えないけれど、わかる。感情に任せて言ってしまったことへの後悔・自己嫌悪って、引きずるものなのよね。
それに対して「気にする必要はないよ!!」とは言えなかった。気にする必要はないって思うけれど、私が彼でも引きずると思うから。
思ったことを伝えて、数日怖がってしまっていたことを心の中でお詫びした。
すると、「いつも親切に話を聞いてくれてありがとう。いつもあなたと話す時は楽しいし、本当に好きなのよ」と言ってくれた。
世の中っていっつもそう。わたしが罪悪感があるときに限って、二回り大きな愛が返ってくる。罪悪感を色濃くさせるかのように。
わたしが、「あなたにも同じことを思ってるよ!」とか細い声で返したとき、2人はほぼ泣いていた。
1分も経たぬうち、彼は「でもこれからも、君をからかうのはやめないけどね!ハハハ」と言って席を立った。こういうとき、笑いに逃げてしまうのは世界共通なんだな。
ひきつった精一杯な笑顔の上に、本当は泣きたい!!という大きな声のセリフが見えてしまって、思わず目を背けてしまった。
こんなとき、笑ってる場合じゃないから!!!と強がりな笑顔をぶちこわすことを言える女になりたい。