「普通はこう」をぶっ壊せ/谷口菜津子『今夜すきやきだよ』
こんにちは。
此島このもです。
今日は前回に引き続き私の人生の教科書と呼びたいくらい大好きな漫画『今夜すきやきだよ』をご紹介します。
前回の記事はこちら↓
※好きポイント①②③と番号を付けて書いておりますが他の記事を読まなくてもわかるように書きましたので今回の記事だけ読んで頂いても大丈夫です🙆♀️
どんな漫画?
この漫画はルームシェアをしている社会人女性二人が協力して生きていく漫画です。仕事はバリバリできるけど家事が苦手で結婚をしたい「あいこ」。仕事はうまくいっていないけれど家事が得意で、お嫁さんじゃなくて魔法使い(※)になりたい「ともこ」。
そんな違いのある二人は、悩みながら時に喧嘩もしながら「普通はこう」「そういうもの」という価値観と戦って生きていきます。
二人が協力して戦う姿をたくさんの美味しいものと共に描く、それが『今夜すきやきだよ』です!
※「魔法使い」は誰かの心の栄養になれるような絵本やおいしいご飯を作れる人のことです。ともこは絵本作家なのです。
好きポイント②
「普通はこう」をぶっ壊せ
私がこの漫画を好きなポイントのひとつに、この漫画が「普通はこう」「そういうもの」という価値観と戦っていることがあります。
たとえばあいこは家事全般が苦手です。彼氏との食事は毎回外食かテイクアウト。しかし彼氏は「男って彼女の手料理食べたいもんじゃん」を理由に手料理を要求してくる。「難しいのじゃなくていいから」と言いながら手間のかかる料理の写真を見せてきたり……。でもあいこはお米の炊き方すらわからないんです。そのせいで何度も彼氏と喧嘩をしています。
彼氏は「お前と結婚したら一生奥さんの手料理食べれないってことでしょ」「それって悲しい」と言います。でもあいこは朝ごはんを毎日自分が作るビジョンが全く見えず、「自分が欠陥人間に感じてきた……」と落ち込んでしまいます。
(ここで「彼氏くんがかわいそう料理しないあいこは怠け者」と思った方は私とはわかりあえないのでこの記事を読んで頂かなくて結構です今すぐ読むのをやめて頂ければ幸いですこれからのご多幸をお祈りしておりますサヨナラ〜👋)
それから、ともこは恋愛に興味がありません。お嫁さんになりたいとは思わないし、恋してなくても毎日楽しいからいいと思っている。しかし仕事の相手に「そんな人いるわけないじゃないですか〜」と言われ合コンに誘われてしまう。
ともこは学生の頃、集まった際に恋愛の話をする女子たちが謎だったそうです。「私、何かが足りないのかって不安だった」とともこも言います。
「普通はこう」は本来ひとりひとり違うはずの人間を同じ型に押し込める言葉です。あいこもともこもそれに悩んでいます。
あいこは料理ができない自分が「普通」ではない欠陥人間なんじゃないかと思い、ともこは恋愛に興味のない自分は何かが足りないのかと不安になってしまう。
本当は苦手なことやできないことがあるのは人間として当たり前のはずなんですけれど、「普通」の型にはまれない自分が悪いと思ってしまう。同じような経験をされている方はたくさんいると思います。
(しかし窮屈なはずの「普通はこう」を自分も他人に押し付けてしまったり、型にはまる方が楽な時もあり、それが難しいですよね。この漫画でもあいこが「普通」をともこに押し付けて喧嘩してしまう場面があります)
押し付けられるのが嫌でたまらない「普通はこう」が自らの脳味噌にしっかり根付いていて、自分で自分を傷つけてしまう。この物語ではその苦しみも描いてあります。
あいこは彼氏にプロポーズされ大喜びしますが、家事の苦手な自分は彼氏が望む「普通の」結婚ができないのではないかと悩み、断ってしまうのです。
あいこは彼氏を愛しているのに、自分は「普通の」結婚ができないから断るべきだと思ってしまったんですね。それは彼を思う気持ちゆえですが、彼にはそれがわからずにすれ違ってしまいます。そう、恋愛ドラマなどでよくあるやつです!!
このあとどうなると思います?
二人はすれ違ったけど何かしら事件とかが起こって「やっぱり彼ピ(彼氏のこと)が好き……! 別れられない!!」とヨリを戻して結婚?
いえいえ違います。もっと最高にハッピーでアンブレラでロジックがスパークリングです。(意味わからんと思った人は実際に漫画を読んでみましょう😘)
私はここからの展開に大変しびれました。
こんなふうに相手を思うあまり捻れてしまった恋人たちの関係をスッキリさせてくれるのはともこなんです。私はこの展開が大大大大好きです。
「普通はこう」は本来それぞれ異なるはずの人間を同一の型に押し込める言葉だと先ほど書きました。
「普通」の型に押し込める価値観と戦うためにはどうするべきでしょうか。戦うためには、自分は「普通」とどう違っているのかそしてそれは何故なのか、とことん言語化することが必要だと私は思います。
しかしそれは大変難しいことです。自分の考えていること感じていることをくっきりはっきり言葉にできる人がどのくらいいるでしょう(これを読んでくださる方は日々noteで心の言語化に励んでいらっしゃる方々だと思います。言語化の難しさは身に染みておられるのではないでしょうか)。
しかもこの恋人たちはプロポーズからのお断りという、心がジェットコースターに乗せられてブンブン振られている最中なのです。言語化の難易度高すぎてやばたにえん※……!!!!
そんなジェットコースター上の二人を冷静にさせて話し合いの場に立たせるのがともこなんですよ。それってすごく良い展開じゃないですか?!
だってともこは数話前に「恋愛に興味がない」「私 何かが足りないのかって不安だった」と吐露していたんですから!!! そんなともこが恋人たちを救うんです!!!! 足りなくないよね😭むしろそんなともこだからこそこういう展開になれたんだよね😭😭良すぎる😭😭😭号泣に次ぐ号泣。
これが『今夜すきやきだよ』の「普通はこう」との戦い方なのです。
※「やばたにえん」は「やばい」を意味する若者言葉らしいですけど今もう既に古いのかもしれない……何もわからない……。でもなんかこの辺で若者言葉を使いたくて入れました。ぴえんこえてぱおん。
以上が私の『今夜すきやきだよ』好きポイント②です!
この漫画から「普通」と戦う力をチャージして、自分を型にはめてこようとする「普通」たちから身を守りましょう💪💪
『今夜すきやきだよ』好きポイントもいよいよ次回が最後。次回のテーマは「苗字変わるってマジやばたにえん」です。
それではここまで読んでくださってありがとうございます🐈
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?