十人十色のコミュニケーション

「自閉症の子は目が合いませんよ」
と言い切る教育者がいる。

その言葉を聞くたびに私は頭に「?」が浮かぶ。
今まで関わってきた自閉症の子ども達の中で目が合わない子に出会った事がないからだ。

自閉症スペクトラムを説明する書籍等には、確かにコミュニケーションの特性として「目が合わない」という事が書かれている。

しかし、彼らは自分の主張を伝えたい時や、相手が自分に何か伝えようとしていると分かった時には、しっかりと目を合わせて伝えようとするし、話しを聞こうとする。
「目を合わせると伝わる」ということをちゃんと知っている。

話しかけた時に彼らが目を合わせないのは、今自分が話しかけられているという事が分かっていなかったり、話している内容が理解できていなかったりという事が多い。

つまり、話しかける側に問題があるということだ。
「自分の名前を呼ばれたら自分が呼ばれていると思う。」
「日本人には日本語が通じる。」
というステレオタイプは捨てた方がいい。

自分の当たり前という思い込みを捨てて、目の前にいるその人に伝わる方法を考える。
紙に書く、ジェスチャー…いろいろやってみる。伝わらなかったら宿題にする。

肩を叩いて呼び、ジェスチャーやサインを交えて伝えれば伝わる事がほとんどだ。
なにも難しい事はない。日本語しか話せない私が、海外で現地の人と話す時となにも変わらない。
「聞いてほしい」「伝えたい」という気持ちを伝えられればちゃんと伝わる。

(ちなみに、目を合わせていないから聞いていないということでもない。意外と聞いてくれていることもある。)

障がいの有無はたぶん関係ない。
自分のスタンダードが万人のスタンダードではなく、その人に伝わるコミュニケーション方法を探る。

伝わるのが普通。伝わらなかったら相手が悪い。という思い込みを捨てると、自分が伝えたかった事が伝わった時に、喜びを感じる。幸せがひとつ増える。
それくらいコミュニケーションって、難しくて、面白くて、大切なものなんだと思う。

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