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このほしインターンのベトナム奮闘記①~仕事編~
こんにちは。株式会社このほしの学生インターンの渡部です。秋田に生まれ育った正真正銘の秋田美人です。
8月に、熱源を利用した発電事業の調査のため、2週間ベトナムへ行かせてもらいました。
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この後撮影者にガイド料を請求されるとは露知らず
プロフィール:
渡部 満絢(わたなべ まあや)
国際教養大学2年。
環境問題に関するビジネスや自治体コンサル、海外での活動に興味があり、2023年1月からこのほしでインターンを開始。今一番興味があるのは、サステナブルなまちづくり。大学ではミュージカル部に所属。実は海外長期滞在も一人での海外渡航も今回のベトナム出張が人生初。
渡航の目的
このほしでは、資源循環事業の一環として、ベトナムなど途上国で再生可能エネルギーを利用した発電事業を開発中です。今回の事業で着目したエネルギーは、熱です。ベトナムでは、路上に屋台が点在しています。そこから出る調理熱を利用して発電・蓄電し、屋台や路面飲食店を、スマホのモバイルバッテリーや、電動バイクバッテリーを用いて、「分散型充電ステーション」にしようというのが、このほしの新しい試みです。
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事業開発のため、実際に現地の店に足を運び、調理器具の形状や燃料、店員やお客さんの行動などを観察する必要がありました。海外で仕事をしてみたい、という私の願いも汲んでいただき、このミッションを背負い一人飛び立つこととなりました。
調査結果
約2週間、ホーチミン市を中心に滞在し、民家を含む、計34箇所の調理場を調査しました。
調理器具と一口に言っても、まず燃料がそれぞれ異なります。使用頻度が高かったのは、木炭やガス、その他に、アルコールや木材を利用しているところもありました。
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こちらは木炭を使用
ベトナム料理、特に屋台料理には、バインミーやコムタム (砕き米のご飯上に豚肉や目玉焼きをのせて食べる料理) など、グリルが必要な料理が多くあります。そのため、炭を使用した方が美味しく調理できるという認識が強くありました。実際、木炭は10,000 VND/kg (約60円/kg) で市場で簡単に購入可能なようです。
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汗かいた後には最高の塩気!
お客さんの様子について、路上の屋台には、麺料理やコムタムなど、座って食べるのが主流で客席がある店と、バインミーのように、持ち運びが簡単な屋台の2種類があり、前者では座って食べ終わってから帰る客が半分から8割ほどですが、後者ではほとんどの客がバイクに乗ったまま商品を受け取った後すぐに立ち去るので、滞在時間は5分もありません。実際に、会社のオフィスでも、通勤途中に買ったバインミーを朝ごはんに食べている人が見られました。
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防犯も兼ねて乗ったままだそう
料理を待っている間や食事中には、8割程度の客がスマホを操作していて、屋台が密集する観光地では、調理の様子などをスマホで撮影する人が3割程度はいました。
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事業開発のために重要な情報である電気料金については、時間帯により異なりますが、商業分野の場合通常約15円/1khW (脚注2) 。店内で客にスマホの充電用等に電気を提供することに関して、あるベトナム人の会社員の方 (中所得者層 (推定月給約3-4万円) (脚注1)) によると、多くの店では電気を提供する代わりに料理が売れるならあまり気にしないそうです。
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扇風機用の電気は後ろの建物の家主からレンタル
ホーチミンについて
ホーチミンは経済の中心地であるため、オフィス街や整備された住宅地には高所得層 (平均月給約7万円) (脚注1) が多くいますが、ベトナム人の方によると、路上で屋台を運営している人はほぼ低所得層 (平均月給約2万円) (脚注1) で、台風などの災害が多く作物が実りにくいためベトナム中部から出稼ぎに来た人が多いそうです。
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気候の違いによる、日本とのライフサイクルの違いもありました。ホーチミン市は、1年中暑い熱帯モンスーン気候に属していて、季節は乾季と雨季がありますが、1年を通して気温差は小さく、常に25°C~30°Cほどです (脚注3)。日中は日がさして暑いため、人々の活動時間は主に早朝と夜。朝5時から8時くらいまでの間に、朝食を済ませたり、公園で運動をしたりします。
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休日には、早朝や日が暮れた後に公園に家族や友人と来て談笑している人が多くいました。日中は、職業にもよりますが平日はオフィスや家など屋内で過ごし、休日も家で過ごします。ベトナムの中学生と話したところ、休日の日中は家でスマホを見ていることが多く、夕方以降に友人と遊びに出かけることがほとんどのようです。
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後ろの広場には座って談笑する人々の姿が。
訪れた8月はベトナムの学生にとっても夏休み期間で、屋内の空調設備が整い充電が客席で自由にできるカフェやレストランは、昼間に訪れると、学生と見られるノートパソコンを広げた若者たちで席がほとんど埋まっていました。
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"THREE O'CLOCK"
日が暮れる18時頃になると、町に徐々に人が増え始め、屋台が集まる通りは人でごった返します。ホーチミン中心部では、朝の4時頃まで、音楽や人で賑わう声が聞こえました。
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人とバイクでごった返すホーティーキー市場
ホーチミン市内の、統一会堂やベトナム戦争証跡博物館などの主要な観光地周辺では、ぼったくり等を防ぐために路上での屋台販売が警察による取り締まりが強化されているようで、屋台の観察はできませんでした。今回観察できたほとんどの屋台の主な客層は、ベトナム人でした。
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周囲に屋台の姿は見られない
インターンとしての学びと体験
デザイン思考の実践
今回の調査で、デザインリサーチという手法を学びました。
デザインリサーチは、かなり広義の意味をもつ言葉です。(中略)産業の世界では、人々や社会など、プロダクトが置かれている環境をより理解するためのプロセスの総称のことを言います。
つまり、デザイン思考に基づき、インタビューなどの定性的な調査も用いて、対象の主観的なニーズを特定するリサーチ手法です。ユーザーの日常に入り込んで深く調査をするため、情報を観察段階ではジャッジせずに収集する必要があります。
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写真や動画を駆使して記録
見た情報をジャッジせずにそのまま記録するのは、想像以上に体力を使いました。あまりに事業に必要がない情報をとっても意味がないので、事業との関連性とのバランスを取るのも難しかったです。
普段は、知りたい情報があればネット上で検索すると大抵のことがわかります。ただ、それは自分ではない誰かのレンズを通して得た情報であって、本当に正しいのかということは自分ではわかりません。生の情報を自分で取りに行くことの重要性と、大変さを実感しました。今後は、情報のソースにより注意を払いたいと思いました。
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リサーチ手法だけでなく、今回の体験を経てのキャリアデザインについても指導していただきました。このほしの創業者の小原さんは、私が通う国際教養大学でキャリアデザインの授業を担当なさっています。
帰国後、〇〇が大変だった、びっくりした、などのなんとなく浅い感想で振り返りを終えてしまっていましたが、そこで終わらせず、最も衝撃的だったこと、自分の価値観を変えた出来事、自分の感情が大きく動いた出来事などの事実を元に、自分の中で何が起こったか、それはなぜか、それを踏まえて今後どうするのか、を分析することで、ベトナムでの経験の価値をより高めることができます。
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正直、自分のような普通の学生をベトナムまで送り込むよりも、リサーチ経験がある人を雇った方がより充実した調査結果が取れるであろうところを、それでも成長のためにベトナムに行くチャンスをくださったこのほしと小原さんには、本当に感謝です。
番外編 「生きてれば丸儲け」
某お笑い芸人の有名な言葉ですが、今回それを身をもって学びました。
実は、ベトナムに到着した初日にトラブルに遭い、所持金をほぼ使い果たしてしまいました。正直泣きそうなくらい絶望していましたが、小原さんやベトナムにいるそのご友人・仕事仲間の方々が、笑い話に昇華してくれたおかげで、なんとか立ち直れました。
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身に染みる美味しさでした
お金がなくても、物がなくても、とりあえず生きていればなんとかなる。どこまででも挽回できる。心からそう感じました。同時に、日本で安心して暮らせていることがどれほど幸せかということも痛感しました。
今回の渡航で知識も度胸もかなりつきました。おそらく、今日本で一番ベトナムの屋台の調理器具に詳しい人物は私かもしれないです。
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脚注
1:2020年版ベトナム家計生活水準調査結果の速報を公表(ベトナム) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース
2:4年ぶりの電気料金改定は3%値上げ、物価安定を優先(ベトナム) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース
3:ベトナム南部・ホーチミンの季節ごとの気候とおすすめの服装