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「結婚」した娘から、両親にインタビューを贈った話 #このひだより

あっという間に今年も8月となりましたが、みなさまいかがお過ごしですか?『このひより』のプロジェクトについてお伝えする「#このひだより」、久しぶりの更新です。

β版がスタート以来、これまで何人もの送り手さま・語り手さまと一緒に本を作らせていただきました。嬉しいお言葉を沢山いただいたり、サービスの強みや課題をあらためて感じています。

これらは事例として、後日きちんと紹介ができたらと思いますが今回ご紹介するのは、そのβ版開始前に作った1冊。メンバーそれぞれが、身近な大切な人へのインタビューを贈ったときのものです。

前回、ウィルソンが紹介した「還暦の父親に贈ったインタビュー」に続き、最後は私・染谷が娘として両親へ本を贈った話をしたいと思います。

(執筆:染谷楓

「親子」を振り返るための、本作り

このひよりで本を作りはじめたのは、ちょうど自分自身が「結婚」を迎えるタイミングでした。

家族について考えることの多かったこの時期。「家族ってなんだろう」と考えると同時に「私は、故郷の両親のことをどれだけ知っていたのか」「家族の思い出を見つめ直したい」という気持ちが湧いていました。

自営業を営む両親は、結婚して37年(インタビュー当時)を共にすごしています。今でも仲の良い両親に、娘としても素直にもっと話を聞いてみたい。それに、いつも一緒にいるふたりだからこそ、お互いの言葉がいつまでも残る「本」ができたら、きっと喜んでくれるんじゃないかとも思いました。

これからも家族であることに変わりはないけれど、結婚というタイミングを迎えた今だから残せる言葉があるかもしれない。そんな思いから、本作りが始まりました。

インタビューで繋がった“あの日”の答え

本に残したのは、父と母の幼少期のこと、お互いの第一印象や結婚式の話、それから家族の思い出です。前半は「それぞれの記憶」をモノローグ(ひとり語り)の形式で、後半は「ふたりの対話」を綴りました。

どの話も、長年一緒に暮らしていた娘の私もはじめて聞くものばかり。私が生まれる前の両親の思い出話は、父と母を今まで以上に身近に感じさせてくれました。

インタビューの過程で、ふと思い出した記憶がありました。私がまだ子どもだった頃、親戚の結婚式に参加した帰りのことです。結婚式場内のショップに立ち寄った父が「母ちゃんにどの指輪が似合うか選んで」と私と兄に言い、選んだ指輪を母に突然贈ったことがありました。

あの日、父はなぜ母に指輪を贈ったのか。ちょうど結婚式に向けて、自分たちの結婚指輪のことを考えていた時期でもあり、思い切って今回のインタビューを通して聞いてみたのです。

あぁ、あの日ね。結婚した時、実は母ちゃんたち指輪無かったのさ。その時は別にそれで良いって思っていたんだけど。
 結婚式が始まるまで時間があったから、下のショップで何気なく指輪を眺めていたんだよね。綺麗だなぁと思って。そうしたら、帰りに父さんが突然指輪をプレゼントしてくれたんだよね。なんでわかったのかね。嬉しくて、今でもその指輪をしているのさ。

(第6章『これから』より引用・一部改変)

帰りの車中、父が「はい、これ母ちゃんに」と、母へ指輪を渡す姿。その光景を後ろから見て「私たちが選んだんだよ!」と、嬉しくて何度も声をかけたこと。いろんな記憶が蘇り、思わず数十年越しの答えあわせとなりました。

このエピソードからは、今もなお仲の良い両親の関係性や、父が母を思う気持ちが透けて見えた気がしました。父には「さぁ……そんなこともあったな」と、相変わらずはぐらかされてしまったけれど。

本を作る過程では「懐かしいね」「そういえば、こんなこともあったね」と次々と思い出話が溢れてきました。大人になった今、こうして家族と語り合える時間が持てたことは、少しくすぐったくもあり、嬉しかったです。

大切にしたい「家族で言葉を贈りあう」体験

できあがった本を、両親は喜んでくれました。

本が好きな父からは「ちゃんと本になってる。大したもんだなぁ」という言葉。母は「父さん、こんなこと考えていたんだね」と静かに笑ったあと「宝物ができたよ、ありがとう」と言ってくれました。

両親に贈った本ですが、できあがってみると、自分にとってもかけがえのない1冊になっています。ただ本があることだけではなく、「どんな話を聞こうかな」とゆっくり過去を振り返る準備の時間も、昔は聞けなかった思い出話が両親とできたことも、どれも心に残る体験でした。「本を作る」というイベントが、離れて暮らす家族の距離を、少し近づけてくれた気がします。

これから『このひより』をご利用いただく方には、形として目に見える「本」だけでなく、インタビューを通した「体験」も楽しんでいただけたら嬉しいなと感じています。きっと、人生の中で何度も振り返りたくなる、忘れられない時間になると願っています。

私自身、両親に聞きたい話はまだまだあるので、これから先も家族みんなでこの本を開きながら、新しい思い出話ができたらいいなと思います。

メンバーそれぞれが大切な人に贈った事例紹介記事は、以上で終了です。

引き続き、実際にβ版をご利用いただいたみなさまの事例紹介をしていきます。どうぞよろしくお願いします。

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