入院3日目
5月22日(金) 手術当日。
今朝は午前6時前に起こされる。浣腸をするそうだ。この部屋には私の前の時間に同じ手術を受ける人がいるので、看護師さんは彼女に説明をしてから、私のところへ来る。
結果、私は同じ話を2回聞けるので、心構えができる。
処置室に行くと前の人と入れ替わりに呼ばれる。
血圧と血中酸素濃度を測り、13年ぶりの浣腸。あまり良い気持ちのするものではないが、仕方ない。じっとがまん。
今日は絶食で、7時頃までにOS-1を飲みきるように言われていたので飲む。美味しくはないが、これもがまんだ。心を無にして飲み切る。
顔を洗ったり、歯を磨いたりして時間を潰す。
7:40、主治医が顔を出してくれる。会うたびに「頑張りましょう!」と言われるが、これがこの先生の決め台詞なのかもしれない。
まぁ、他に言えることもないのだろう。そう、治療は医師と患者の共同作業。私は患者として頑張らなくては。
8:30、処置室で点滴。
若い女医さんが担当のようで、私の血管の細さに戸惑われる。
試行錯誤の結果、右手の甲に指すことに。ちょっと痛いけど、仕方ない。
11:30、母が来る。雑談をしながら時間になるのを待つ。
12:50、手術室の準備ができたということで呼ばれる。後ろ前の手術着は背中がスースーする。
手術室の入り口でくつを脱ぎ、名前と手術を受ける部位を申告する。間違いが無いように、ということだろうが、自分で手術部位を言うのはちょっと変な感じだ。
手術室は思ったよりもガランとしていた。なんとなく工場のようにも見える。手術のスタッフさんたちが数人、忙しなく働いている。
手術台に横になると、体温や血圧を測られる。手術着は手際よく剥ぎ取られ、口には酸素マスクがあてられる。麻酔医が、これからここから麻酔が出るという。「あぁそうなんだ、注射じゃないんだ」と思った辺りで意識が途切れた。
目が覚めると、私の回りで数人のスタッフが談笑していた。なんだ、楽しそうじゃないか。
私が目覚めたことに気付くと、「おつかれさまでした~」と声をかけ、「じゃあこれから病室に戻りますね」と、3人がかりで私を別のベッドへと移しかえる。私は冷凍マグロさながら身を任せるのみだ。
ベッドがグゥンと予想外の方向に動くのに戦きながらも、なんとか現状を把握しようと頭を巡らせる。移動中、看護師さんが「体調はいかがですか?」と聞いてくるが、この状況である。辛うじて感じていた違和感として「喉が痛い」と言おうとしたら、その声が掠れる。ひどい風邪を引いたときのような感じだ。すると別の方向から「挿管が大変だったみたいですからね」と、さもありなんという声がする。どういうことだろう…、よく分からないまま病室に運ばれる。
この辺りから記憶が薄れるが、母に時間を聞くと、午後6時と言っていたと思う。2時間半の予定がだいぶ延びたようだ。「麻酔に1時間くらいかかって、麻酔医の先生が気の毒なくらいだったみたいよ」という。「取ったものを見せてもらったけど、あれは取って良かったと思ったわ」と言われ、「それなら良かった」と思ったことまでは覚えている。
その夜は数時間おきに看護師さんが訪れ、血圧や体温、傷のガーゼ交換と腹音の確認をしてくれた。