入院4日目
5月23日(土)手術翌日。
朝になっても意識はぼんやりしており、起きているんだか寝ているんだかよく分からない状態が続く。そうそう、そんな私に、看護師さんは手際よくパジャマを着せてくれた。人に着替えをさせてもらうなんて、幼児のようだがこの際仕方ない。
よく延びる滑りの良い素材のパジャマは着せかえやすかったようで「いいですね」と言われたのがちょっと嬉しかった。狙いどおり、という感じ。
医師が診察に訪れ、傷を確認する。「うんうん、大丈夫そうですね、じゃあ抜いちゃいましょう」という感じでドレーンが抜かれる。あとは歩けさえすれば、尿の管も抜けるらしい。心の中でガッツポーズをとる。
午後、一通り済んだところで、部屋の移動を案内される。新しい部屋(最初に入った部屋)まで歩くのがミッションだ。
点滴を持ちながら立ち上がる。痛みはあるが、耐えられない程ではない。なんとか新しい部屋に移動できた。
尿の管は看護師さんの仕事らしく、医師が去ったあと、手際よく外してくれた。この瞬間もまた嫌なものだが、外れると思えば我慢できる。
ただ、夜になると身体中が痛み始めた。両肩の付け根から胸にかけて交差するようにピキーンという痛みが走る。同時に、腹部も痛みだした。
麻酔が切れたのだ。
痛み止めとして用意されていた薬(点滴に繋がっていて、痛いときにスイッチを押す)も多分空だ。
痛みで身体が震える。どうするか。しばらく耐えても回復の兆しが見えないので、午後11時頃、意を決してナースコールを押す。
今夜担当の看護師さんはおっとりと優しい人だが、こういう時、このおっとりは難しい。痛みを訴えると、点滴の痛み止めを確認し「空っぽですね」と言い、「痛み止め持ってきますね」とさして急ぐ風でもない。
しかも、行ったっきりなかなか戻ってこない。たかだか数分の出来事だと思うが、待つ身にはつらい数分だ。
痛み止めと胃薬を持ってきてくれた彼女の手から引ったくるように薬を奪うと、急いで水で流し込む。もちろん、飲んだからってすぐに効く薬なんてない。
おっとりさんは「ロキソニンは6時間空けないといけませんが、もし痛みが続くなら下剤もあるので言ってくださいね」と笑顔で去っていったが、できれば下剤も避けたい。どれくらいで効くのだろうと痛みに耐えながら宙を睨むことしばし。気付けば眠っていたらしい。目が覚めると、あの痛みは嘘のように消えていた。その瞬間、ロキソニンを開発してくれた全ての医療関係者に全力で感謝したものだ。その時点でたぶん夜中の3時くらいということもあり、改めて寝直す。結果、下剤は回避された。