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初めての旅③~久慈・八戸弾丸ツアー~

この後は八戸駅を目指すわけだが、まだ時間がある。そこで、途中にあるという八戸の種差海岸に寄ることにする。ここは天然の芝生が広がる珍しい海岸だ。T先生は以前来たことがあるらしい。
広い駐車場はきれいに整備されている。海岸自体も手入れが行き届いており、遊歩道を歩けば海風が心地よい。天気が良ければもっと人も多いのだろうが、今日は一日小雨が降ったりやんだりの天気なので人影もまばらだ。
海岸に隣接するインフォメーションセンターは2014年に建てられた、まだ新しい木造のオシャレな建物だ。種差海岸の観光案内のほか、地元の子どもたちによる工作の展示などが行われている。
隣接するカフェで海を見ながら休憩する。ここで次の目的地を「八食センター」に定めた。ここもT先生は訪問済みではあるが、八戸に来た以上行った方がいいだろうと言う。
八戸市内の移動ではあるが、種差海岸から「八食センター」までは約16kmある。この辺りになるとだんだんと交通量も増え始め、車線も3車線4車線と増えてきたため、ドキドキしながら30分ほどかけて到着した。
「八食センター」とは魚介類をはじめとした八戸の名物が一通りそろう大型の市場だ。全長170mの建物内には約60の店舗がひしめき合う。中には、買った海鮮をその場で焼いて食べられるようなコーナーもあり、まさに食のパラダイスと言えよう。ただし、久慈でホタテやウニを食べてきた私たちからすると、全体に少々値段が高い。もちろん市場に来るまでの送料や手間暇を考えれば妥当なのだが、どうしても比べてしまって手が出ないのだ。
海鮮の売り場を早々に抜けて、乾物店の並ぶエリアを歩いていると、「味見していかない?」と声をかけられた。そのお店は乾きもの系の珍味のお店のようで、乾きもの好きの私には魅力的な品ばかりが並んでいた。その中に「なかよし」というチータラ的なものを見つけ、名前の奇妙さから興味を示すと、店のおばさんが味見をさせてくれた。聞けばこれはタラではなく、八戸港でとれたイカを伸してチーズを挟んだもの、ということで、イカとチーズが「なかよく」していることから「なかよし」と名付けられたらしい。味もプロセスチーズを挟んだプレーン、胡椒の効いたブラックペッパー、カマンベールがあるという。味見をしたところ、カマンベールがダントツで美味しく感じたのでいくつか買い込む。
広い店内を一通り見てから車に戻る。そろそろレンタカーを返す時間だ。
レンタカーはバスの乗り場でもある八戸駅の駅レンタカーに返却する手はずになっていた。駅は「八食センター」からも比較的近いのですぐに返せると車を出したが、八戸駅周辺は再開発が進んでいるのか、工事現場が広がっており、なかなか駅に近付けない。迷いながらもなんとか車を返すことができた。
帰りのバスの時間まで間があるので、近くの居酒屋で夕食を取ることにする。焼きイカやホタテとつぶ貝の刺身、さらには郷土料理の「せんべえ汁」を頼む。そこに私は青森のお酒「豊盃」を注文し、青森の味を堪能する。
焼いただけのイカが驚くほど美味しい。

22時過ぎ。闇の深まった八戸駅のバスターミナルから私たちは再び4列席のバスに乗り、約10時間かけて東京駅に帰ってきた。正直、帰り道のことはほとんど覚えていない。多分、疲れ果てていたのだと思う。

2017年8月20日(日)
朝7時過ぎ、バスは予定通り東京駅に到着した。駅構内はまだ人もまばらで、開いているお店も少ない。私たちは疲労に足を引きずりながら数少ないモーニングを提供しているカフェの一つに入り、朝食を取った。
店員さんのきびきびとした動きと、店内の明るい照明に、東京に帰ってきたのだなぁと思った記憶が微かに残っている。

こうして私たちの0泊3日の旅は終わった。まさに弾丸ツアーともいうべきもので、誰にでもおすすめできるという類の旅ではないが、この旅が与えてくれたものは計り知れない。中でも郷土の味とそれを支える人々の温もりを感じることができたことは、私にとって大きな収穫だった。
東京にいても、確かに全国各地の美味しいものを食べることはできる。でもそれは、その地域の持つ食文化のほんの一部に過ぎないということをこの旅は教えてくれた。
今回の旅で私たちが触れることができたものだって、その地域にしてみればほんの一部だ。できれば今度は温泉旅館などに泊まってゆっくり観光してみたい。やっぱり夜は平らなベッドで眠りたい。帰ったらとりあえずシャワーを浴びて少し寝よう。そんなことを思いつつ、私は東京駅から中央線に乗ったのだった。

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