保健所に保護されていた犬
わたしの愛犬・レビは、5年前にG県のM保健所からもらい受けてきた
元保護犬だ。
「保健所に保護されていた犬」というと、殺処分される犬だったのか……と思われる人がいるかもしれないが、そうではない。
M保健所は「殺処分をしないで済むように」犬や猫たちを保護し、ボランティア団体と手を組んで里親探しをしている素晴らしい保健所なのだった。
レビを迎えるほんの2か月前。わたしは最愛の犬・ドリを亡くした。
まだ10歳。今どきの犬の寿命としては早すぎる。
風邪ひとつひかず、走るのが大好きで、仔犬みたいに芝生の上を走り回っていたドリ。まさかあんなに大きな病気になるとは思わなかった。どんなに手を尽くしても、病気は進行するばかりで、わたしのチカラではあれ以上ドリをこの世に引き留めることはできなかった。
ドリはわたしに、子育てから介護までのすべてを教えてこの世を去った。冬の終わりの、明るく晴れた休日だった。
レビの写真を見つけたのは、M保健所のホームページだった。
もうしばらく犬は飼わない。ドリ以外の犬なんて無理だ。そう決めたのに、犬を見たくて、犬を触りたくて、犬の匂いが懐かしくて、あちこちの里親会を探して偶然たどり着いたのだった。
そのときM保健所には、生後1、2か月ほどのきょうだい犬がまとめて保護されていた。メスが4匹、オスが2匹。里親募集の欄に、それぞれ個体の特徴が書かれている。
「おでこに白い線。キツネみたいな女の子」
その一文を見つけたとき、わたしは思わず叫んでいた。
キツネみたいなほっそりした顔も、リボンみたいな大きな耳も、遠くからでもそれとわかる「おでこの白い線」も、ドリの特徴そのものだった。
そしてなにより、ドリも元保護犬だったのだ。
こうしてレビは、わたしの家にやってきた。
山に住み着いた野犬が生んだ仔だったレビは、そのワイルドな出自を疑うほど甘えん坊で気が弱い。
犬は好きでも保護犬の話は「かわいそうだからイヤ」、という人がいることは知っている。目を背けたい現状を、無理に見ろとはいいたくない。
それでも、いま生きている多くの保護犬たちは、保護犬でなければありえなかった「ハッピーな物語」をそれぞれが持っている。
それを教えてくれるのがこの本だ。
『君と一緒に生きよう』 森 絵都
「もしもいつかあなたが犬を飼うなら、行き場のない犬の里親になってあげて」。犬の保護活動に携わっていた知人の言葉から、ある保護犬と出会った著者が、ペット問題に取り組む人に取材を重ねたノンフィクション。
この手の本は、悲惨な現状をこれでもか!と伝えるものが多い。けれどこの本は、読んだ人がハッピーな気持ちになれるタイプのものだと思う。犬が好きな人はもちろん、ペットに興味のない人にも、ぜひ読んでほしいです。
ペットショップの犬も、ブリーダーの犬も、保護犬も、みんな犬。同じ犬。
すべての犬が人間を許し、喜びをくれるように。
人間も、どんなときでも、犬に幸せを与えられる存在でありたいと思う。