重心を探る

太極拳に起勢という動作がある。膝と股関節をゆるめて後方の見えない椅子に腰かけるように腰を沈める動きだ。この時重心が後ろに行きすぎてよろけそうになるので、O先生にどうしたらいいですか、床を足の裏で掴んだらいいですかと尋ねたら、先生は「それは違いますね」と仰った。
「後ろに腰かけるように沈んでも、重心はあくまでも足裏の真ん中に落ちているんです」
「起勢の時に後ろによろけそうになる人は、普段立っている時から重心が後ろ寄りになっているかもしれません。まずは立禅の時に、自分の重心が足裏のどのあたりにあるか確かめてみて下さい」
身体の左右差については動きの中で意識する(させられる)ことがたびたびあるが、前後差には気づいていなかった。そこもこれから、探っていってみようと思った。
ショルダーバッグを左右どちらの肩にかけるか。
リュックサックを、背負う方が落ち着くか、腹側にかけた方が落ち着くか。
体育座りをする時、手を脛の上で組んだ方が安定するか、膝の下、ひかがみ側で組んだ方が安定するか。
それでその人がどちら寄りの重心かわかるのだという。そこも勉強してみたい。

トラウマ・セシティブ・ヨーガではおおむね、バランスという言葉をやめてセンタリングという言葉を使うようにしているということだ。「バランスをとる」と言うと〈失敗〉(しっかりと保てるか、ぐらついて倒れるか)という意味が含まれるが、「センタリング」と言えば、それはより内的な探求を意味することになるので、失敗というニュアンスが少なくなる。実を言えば、われわれがセンタリングの訓練をするときには、事実上、バランスを崩すことを手がかりにしているのである。(中略)われわれは「ふらつく」ことによって、自分自身の〈中心〉について大いに学ぶことができるのだ。(153ページ)

デイヴィッド・エマーソン、エリザベス・ホッパー著 伊藤久子訳
『トラウマをヨーガで克服する』紀伊國屋書店 2011年刊


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