修二会、約1300年の祈り
それは、1700年あまりの古(いにしえ)より
吹いてくる風でした。
天空の月が静かに見守るなか
大鐘が闇を浄めるがごとく鳴り響くと
すべての灯りは消え
二月堂だけがぼんやりと浮かびあがるのでした。
「練行衆」といわれる修二会のために
特別な修行を積んだ僧が
大松明を手にゆっくりと階段を登っていきます。
お堂へと辿り着くと
二月堂はあかあかと照らし出され
大松明はものものしい足音とともに
火の粉を散らしながら一気に駆けていくのです。
ぱちぱちとはぜる音
雨のように落ちる火の粉
煙の匂い
じっと見つめる人、人、人
燃えさかる炎は、祈りそのものでした。
人々を救いたいとう祈りは
こんなにも熱く激しいものだったのです。
こうして祈りの中で
私たちは、生かされて生きています。
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