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比べない心

「価値判断」が古人と明治以降の私たちとでは百八十度違うのである。一、二、例をあげると、古人のものは、
「四季それぞれよい」「時雨のよさがよくわかる」
である。
これに対応する私たちのものは、
「夏は愉快だが冬は陰鬱である」「青い空は美しい」
である。(中略)
私たちの評価法は他を悪いとしなければ一つをよいとできない。刺激をだんだん強くしてゆかなければ、同じ印象を受けない。こんなふうである。
これに対し古人の価値判断は、それぞれみなよい。種類が多ければ多いほど、どれもみなますますよい。

『夜雨の声』岡潔

私たちのなかには
比べて優劣をつけて判断する、
そんな意識があります。
しかもそれは潜在意識に入っているので
これをなくしていこうとするのは
時間も労もかかりそうです。
けれどそのさらに深いところには
160年前までは確かにあった
比べずとも価値を見出せる情緒が
きっと残っているにちがいありません。
そこまで深く自分を掘り下げたいものです。
なぜなら安らぎと幸せは
比べないところから発生するからです。

写真:魚住心

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石川真理子
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