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泣きたくなったらお空をごらん
武家の娘は、泣いてはいけないと躾けられます。
合戦に赴く夫を泣き顔で送り出すことが、どれだけ武人の心を乱すか・・・おそらくはそうしたところから来ているのでしょう。
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泣いてはいけないと教えられますから、私はどうしても涙が出るうちは一人で泣きました。そういう時は家族の誰もが放っておいてくれたものです。さんざん泣くと泣いていることに飽きてきて、どうしてあんなに悲しかったのだろう?などとさえ思えるようになりました。
(中略)
「泣きたくなったら、背中をしゃんと伸ばしてお空を見てごらん。辛抱してこそ、強い心が育つのですよ」
今だからわかります。一人で泣いていたり、泣くのを必死で我慢する私を見るのは、むしろ祖母のほうが辛かったでしょう。
泣くことを我慢した経験があると、人の涙に対しては人一倍同情心をかられるようになります。涙が抑えようもなく流れてしまうのはよほどのことに違いないと、頭で考えるより先に心が激しく揺れ動いてしまうのです。
(『女子の教養』致知出版社)
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ほんとうは私は、子どもの頃から人一倍、泣き虫でした。
そして、大人になれば泣かずにいることができるのだろうと信じていました。
けれどやっぱり人一倍、泣き虫です。
50歳を前にして、それでいいと思えるようになりました。
素直に泣けるようになったのは、それからです。最愛の父を失って、やっと泣くことが出来ました。
教えを理解するには、段階があるのだとつくづく思います。
経験を積むことによって理解が深まっていくのです。
今でも人前で泣くことは、まずほとんどありません。
でも、祖母とおんなじように、人の優しさやあたたかい心に触れたときは、人前であろうと抑えようもなく涙がこぼれます。
そういう時は、そのままにします。
そして気づきました。
涙で洗われた瞳で空を見上げた時の、なんとみずみずしく美しいことか。
その時々の色をうつして、空が私にほほえみかけてくる。
悲しくて泣きたくなった時にも、胸打たれて涙を流したにも、気づけば空を見上げるようになりました。
きっと祖母も、こうして人生のさまざまな時を、見つめてきたのでしょう。
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