サブスク彼氏:シナリオ書いてみる #テレ東ドラマシナリオ
#テレ東ドラマシナリオ なるタグがnote公式にありまして、ちょっと気になったので読んでみたら引き込まれてしまいました。普段は書籍にしろ、雑誌にしろ、学術的な内容ばかりを書いているので、物書きと胸を張っていえるほどの職業ではありませんが、やはり「書く」ということが日常の一部になっている人間としては気になってしまうものです。
というわけで、本職のクリエイターの皆様と渡り合うようなことはできませんけれども、ちょっと挑戦してみることにします。シナリオを書くのはいつ以来だったかな。
今回書いてみるのはこちら。クマキヒロシ氏の「サブスク彼氏」。 #100文字ドラマ というタグがあって、そこから選ばれた4作品のうちのひとつです。サブスクリプション(定期購読)の彼氏ということで、それだけでもいろいろ想像ができますね。とりあえず、時間もないので勢いにまかせて書いていくことにしましょう。
1. あらすじ
ECサイトを運営するサハラ・ジャパンのサービスである「サブスク彼氏」を利用するマユだが、気に入っていた今月の「彼氏」を上級会員にとられてしまう。翌日の昼休みのオフィス。マユは同期でサブスク彼氏を利用して早々に結婚を決めたサキ、同じくサービスを利用している先輩のアリサと昼食をとりながら、翌月の彼氏を検索していた。そして、偶然見つけた新着欄の「ユーキ」に一目惚れし、彼氏にすると宣言する。
その夜、結果通知が届き、マユは無事に「ユーキ」を彼氏にするのだが、ユーキはなかなかマユに会おうとしない。それもそのはず、「ユーキ」は写真こそ本人であるものの、アリサが弟ユウキの女性恐怖症克服と彼女獲得のために準備したキャラクターだったからだ。ユウキが尻込みをしているため、アリサがアカウントを運用している。
昼は同僚、夜は画面越しの彼氏。どんな事情があれ、決まってしまったものは変えられない。正体をばらすことなく無難に1ヶ月の契約を終わらせたいアリサだが、マユはそんなことなど知らず、チャンスありとみて一気に押しはじめる。最悪、ばれなければいい。やむなくアリサはユーキの「中の人」となり、ユウキの未来のため、そして自身の名誉のため、ボイスチェンジャーやサンプラー、リップシンクなど、様々な小道具や技術を駆使し、ユーキを操ってマユの攻略を目指すことにした。ユウキはそんな姉のこだわりに辟易しつつも、徐々に画面の向こうが気になってきて…
マユとユーキ、マユとアリサ、アリサとユウキ。それぞれの物語が交錯するなか、マユとユウキは出会うことができるのだろうか。
2. 登場人物
マユ 24歳女性 OL 独身 本作の主人公
アリサ 27歳女性 OL 独身 5歳下の弟がいる 弟想い
サキ 25歳女性 OL 既婚 大学院生の夫がいる
サトル 28歳男性 サブスク彼氏の「登録彼氏」
かつてマユがサブスクリプションしていた男性(プロ)
ユーキ 20代前半 サブスク彼氏の「登録彼氏」
マユが新しくサブスクリプションした男性
ユウキ 22歳男性 アリサの弟 彼女のいる生活を夢見ているが、
自身を女性恐怖症だと思い込んでいる
3.シナリオ本文
○昼休みのオフィス
共有スペースの円卓で弁当を頬張る
マユ(24)、アリサ(27)、サキ(25)の3人
マユは机上のスマホを横目で見ながら会話している
マユ「今月のサブ彼、どうしよっかなー」
アリサ「サブ彼ってあの、サハラのやつだっけ?」
○画面一旦停止
ナレーション「サブスク彼氏、通称サブ彼は、世界各国でEC事業を展開する
サハラ社の日本法人であるサハラ・ジャパンが月額3,980円で提供する、
サブスクリプション・サービスである。
利用者は専用アプリから希望の男性を月に1人指名し、重複がなければ
指名した男性を1ヶ月間彼氏とすることができる。重複があった場合、
会員のランク(ダイヤモンド・プラチナ・ゴールド・シルバー・一般)の
高い方から優先的に選ばれるが、同じランクで競合した場合は抽選が
行われてひとりが決定する。
このランクは原則として利用期間によって決まるが、別途オプションを
購入すればアップグレードすることもできる。
現在、国内ユーザー数は500万人を突破し、ゴールド以上の上級会員も
40万人に到達するなど、快進撃を続けている。
○画面戻る
サキ「あれ、先月のって割といい感じだって言ってなかったっけ」
マユ「それがさー、聞いてよー」
アリサとサキが同時にマユを見つめる
○回想シーン・高層ビルの屋上(夜)
マユとサトルが2人で手すりにもたれかかりながら夜景を眺めている
サトル「今月もう終わりだけどさ」
マユ「うん、なんか私、こんなに充実してたの、人生で初めてかも」
サトル「そっか」
マユ「来月も、注文したら彼氏になってくれる?」
サトル「そのことなんだけどさ」
マユ「どうかした?辞めちゃうなんてことないよね」
サトル「違うんだ。来月はもうプラチナ会員から指名が入っててさ。
マユはシルバーだろ。規則で一度に2ランクアップはできないから
来月のマユの指名は受けられないんだ」
マユ、数秒間の沈黙
サトル「もちろん、マユは僕にとっても素敵な存在だった。でもね、
これは決まりだからどうしようもないんだ」
マユ「じゃあ、そんな仕事辞めて私と付き合っ…」
サトル「僕はこれを本業にしてる。自負もある。それなのに辞めろとか、
マユが、そんな気持ちで僕と1ヶ月いたなんて思わなかった。
そりゃさ、周りには僕の仕事のことを笑う奴がいるのは確かだよ。
でもね、それでも僕は頑張ってサハラ・ジャパンと契約できるまでに
なったんだ。その時に誓ったよ。プロサハラーとして一生喰って
いくって。それだけは譲れないし、そのことを侮辱するのは許せない」
マユ「私はあなたを独占したい。こんな気持ちになるの、初めてなの」
サトル「もう無理だよ。それにね、本気の愛を求めるのは本当は規約違反
なんだ。もちろんみんな守ってないし、運営サイドも黙認だけどね」
サトルが去り、マユが一人取り残される。
○回想シーン終了・オフィス
マユ「こんなんだったら、さっさとゴールド会員にしておけばよかった」
サキ「でもあれって結構高くなかったっけ?」
マユ「サキはいいよねー。一般会員ですぐにイイ男見つけてそのまま
ゴールイン。しかも将来有望そうな大学院生とか、もはやチート
でしょ」
サキ「いや、大学院生ってあんまり稼ぎないし、だから私も働いてるし」
マユ「こちとらアップグレードしてもこのザマですよ」
アリサ「で、今月はどの子にするの?」
マユはお気に入りページからリストを呼び出す
同時にサキとアリサがマユのスマホをのぞき込む
マユ「うーん、今月はタカキにしようかなと思って」
アリサ「あら、素敵じゃない」
サキ「そういえばアリサさんはどんな人を選んでるんですか?前に
やってるって言ってましたよね」
アリサ「うん、まあね。でもちょっと、なんていうか、そのね」
マユ「いいじゃないですかー、恥ずかしがらなく…」
サキ「そういえばマユ、新着欄は見た?あそこは結構いい物件あるよ?」
アリサ「ほらマユ、ゴールインした先輩のアドバイス、聞いた方が
いいんじゃないかしら?」
促されるままマユは新着画面を開くと同時に驚く。
マユ「えっ、こんないい男が?知らなかった。しかもまだ応募0」
サキ「普通はそういうの狙うんだよ」
マユ「なになに、名前はユーキくんね」
アリサは驚いた顔をするが、はっとして笑顔に戻る
サキ「で、どんな感じよ?」
マユ「オッケー、プロフィールはっと。なになに、大手企業勤務の
20代で、残業なし?連絡は20分以内?えっ、超優良物件っぽい」
アリサ「でもそういうのって、なにか問題があったりするんじゃない
かしら。いい話すぎるのって、どこかに落とし穴があるって言うし」
マユ「大丈夫ですってー。ダメなら1ヶ月で止めればいいですし」
アリサ「まあ、確かにそう、よね。」
アリサは困惑した表情をみせる
マユ「もしかして、先輩狙ってました?ダメですよ。マユが先ですから」
アリサ「ううん、大丈夫よ」
サキ「どれどれ、写真もいい男っぽいし、悪くないんじゃない?」
マユ「決めたっ!私、今度こそ幸せを掴むから見てて」
サキ「まーた始まったよ」
○マユの自室(夜)
マユは部屋着に着替えてテレビを見ている
スマホ通知『ユーキさんをサブスクリプションしました』
マユ「お、きたきた」
鼻歌を歌いながらベッドの上で返信を書くマユ
マユ『はじめまして!マユといいます。24歳OL、恋人いない歴3年です。
1ヶ月仲良くしてください。』
○コンピューターとミキサー類が並んだ薄暗い部屋
ディスプレイの周りだけがほんのり明るくなっている
小さく音が鳴り、ディスプレイに「メッセージ1件」の表示
アリサの後ろ姿、ひとり椅子に座ってため息をつく
マユ「はじめまして!マユといいます。24歳OL、恋人いない歴3年です。
1ヶ月仲良くしてください」
アリサ「ったく、どうしたらこんなことになるのかしら」
カタカタとキーボードを打つ音
ドアが少しだけ開いて、男性がそっと部屋の中をのぞく
○マユの自室
ベッドに横になりながらスマホを手に持つマユ
ユーキ『こんばんは。はじめまして!ユーキといいます。登録した
ばかりなのでいろいろわからないことばかりです。よろしく
お願いします。』
マユ「お、新人くんだな。これはチャンスあるかも」
アプリのメッセンジャーのやりとりが続く
スマホの画面をアップに
マユ「ユーキくん、いまいくつ?」
ユーキ(アリサの声)「20代前半です。マユさんは?」
マユ「24歳だよ。どこに住んでるの?」
ユーキ(アリサの声)「東京です」
マユ「敬語つかわなくていいから、仲良くしようね」
ユーキ(アリサの声)「こちらこそよろしくお願いします」
ユーキ(アリサの声)「あ、いや、こちらこそよろしく」
マユ「よくできました」
マユ「早速だけどさ、いつ会えるかな」
ユーキ(アリサの声)「あの、実はまだ登録したばっかりで、怖い
ところもあって、ボイスチャットじゃだめですか?」
マユ「いいよー。今からしていい?」
ユーキ(アリサの声)「今日はちょっと。すみません。明日は
どうですか?」
マユ「敬語つかわない」
ユーキ(アリサの声)「ごめん」
マユ「よろしい。明日はちょっと仕事があるから、夜の9時でどう?」
ユーキ(アリサの声)「俺もちょうどいい」
マユ「オッケー、決まりね!」
マユ、スマホをベッドの横に置く
マユ「結構ウブな子なのかも。嫌いじゃないな、そういうの」
○オフィス(朝)
サキ「おはよう。どうだった?」
マユ「良い感じだよ。でもちょっと警戒されてるかも」
サキ「あんた、がっつきすぎなんだよ」
マユ「あ、アリサ先輩、おはようございます」
サキ「おはようございます」
アリサ「…あ、お、おはよう、ございます」
サキ「先輩どうしたんですか?体調不良ですか?」
アリサ「ううん、なんでもない、ちょっと考え事してただけだから」
マユ「おやおや、これは恋ですな。先輩と私、どっちが先か」
サキ「安心しろ、お前は無理だ」
アリサはひとりつぶやく
アリサ「そんなことないわよね、お互い大丈夫よね、うん」
マユとサキはアリサから少し離れて小声で話す
サキ「今日のアリサさんなんか変じゃない?」
マユ「確かに。上の空って感じ。でも昨日から変だったかも」
サキ「風邪でもひいてるとか」
マユ「ありえるけど、なんか違うかも」
サキ「それよりあんた、ぶっちゃけどうなの?」
マユ「年下っぽいし、ちょっとチャットしただけなんだけどタイプっぽい。
押せばいけるかもって感じかな」
サキ「あんまり押しすぎない方がいいよ。あんた普通にしてても押しが
強いんだから」
マユ「わかってるよ。でも今回は結構相性いいと思う」
サキ「それ前も言ってなかった?」
○オフィス(昼休み)
前日同様、3人は共有スペースの円卓で弁当を頬張る
サキ「それで、マユはいつその王子様と会うわけ?」
マユ「なんか始めたばっかりで恥ずかしいっていって会ってくれないんだ。 でも今夜ボイスチャットするよ」
サキ「会わないって、それ、規約違反じゃない?通報すれば返金だって」
アリサはビクッとして大きな声を出す
アリサ「えっ?違反なの?」
マユは苦笑いしながら答える
マユ「先輩、いきなりびっくりさせないでくださいよー。私は仮に違反でも
いいって思ってます。なんか波長が合いそうな気がするんですよ」
サキ「マジで言ってる?」
マユ「本気の愛を求めるのも規約違反だし」
サキ「いや、そんなの気にしてる人いないっしょ」
マユ「それがさ、先月の彼氏に言われたんだよね」
サキ「ありえないわー、うん、ありえない」
マユ「プロサハラーとしての自負があるんだってさ」
アリサ「サブ彼にプロっているの?」
サキ「あれ、アリサさんご存じないんですか?サブ彼を専業にしている人。
サハラ・ジャパンの運営から公式に認められて、広告とか動画にも
出たりするんですよ。公認されると月収200万は確実らしくって、
そういう人たちが「プロサハラー」って呼ばれてるんです。
外見だけじゃなくて、コミュニケーション能力とか、技術力とか
いろいろ必要だから結構大変らしいですよ」
アリサ「プロかあ、すごいわね」
サキ「2人組でオンラインとオフラインが別々って人もいるらしい
ですけど、これは噂なんで、本当にいるかは分からないですね」
アリサ「プロ…2人組…200万…」
マユ「おーい、せんぱーい。今日はなんか上の空ですけど、いいこと
ありました?」
アリサ「あの、なんでもないの。私、ちょっと飲み物買ってくるわね」
サキ「お気を付けてー」
マユ「私はプロよりウブな方がいいかも」
サキ「あんたは脳天気でいいわね」
○アリサの部屋(夜)
コンピューターとミキサーが並ぶ部屋。電気が点いて明るい
アリサが机の周りのケーブルを確認している
アリサ「ミキサーの接続は大丈夫。ボイスチェンジャーの電源は、っと。
マイクの確認もしておかないとまずいわ。ピッチの設定はこれでよし
あいつの声そっくりにしたし、ボロを出さなければ大丈夫なはず」
音が鳴り、ディスプレイに「メッセージ1件」の表示
マユ「こんばんはー。ボイスチャットできる?」
アリサ「きたきた。じゅんびできました、と。さて、始めますか」
○マユの部屋(夜)
ベッドに横になってイヤホン耳に入れるマユ
スマホ通知『準備できました』
マユが発信ボタンを押す
マユ「こんばんは!マユです。やっとお話できるね」
ユーキ「…こんばんは。マイクの調子が悪くって、音がおかしいかも」
マユ「全然大丈夫だよ」
ユーキ「ありがとうございます」
マユ「敬語使わないでいいって」
ユーキ「ごめんなさ…あ、ごめん」
マユ「あはは。いいっていいって。なに話そうか」
ユーキ「うーん」
マユ「ユーキはさ、ビデオチャットとかしないの?」
ユーキ「しなくはないけど」
マユ「じゃあ、しようよ。ユーキの写真見たけど、格好よかったね」
ユーキ「今日は部屋が汚いからダメ」
マユ「じゃあ明日は?」
ユーキ「明後日じゃだめ?」
マユ「明日は忙しいの?」
ユーキ「そういうわけじゃないけど、色々準備とかあって」
マユ「そんな気にしなくていいって。じゃあ、明後日ね。」
ユーキ「うん、ありがとう」
マユ「明日もボイスチャットしない?」
ユーキ「ごめん、明日はちょっと遅くなるんだ」
マユ「そうなんだ…」
ユーキ「ごめん」
しばらく話したのち、通話を切断する
真っ暗になったスマホの画面を眺めながらつぶやく
マユ「難攻不落だなあ。でもこういう方が燃えてくる」
○アリサの部屋
アリサがマイクに向かって喋っている
アリサ「うん、じゃあね。うん、明後日。おやすみ」
いくつかボタン操作をして、大きくため息をつく
アリサ「こんなはずじゃなかった。でももう引けない」
部屋の扉がそっと開く
ユウキ「姉さん、やっぱりサハラは無理だよ。ハードルが高すぎる」
アリサ「無理とか無理じゃないとか、もはやそういう話じゃなくなったの」
ユウキ「でも、僕には…」
アリサ「これは女同士の戦いでもあるの」
ユウキ「…姉さんは、誰と戦ってるの?」
アリサ「…なんでもないわ。明日はちょっと練習に付き合いなさい」
ユウキ「練習って?」
アリサ「私が喋るから、それに合わせて口を動かす」
ユウキ「なんでそんなこと?」
アリサ「ビデオチャットをすることになったの」
ユウキ「断ってよ。そんなの無茶だよ」
アリサ「私がなんとかする。いい、これはあなたのためでもあるのよ?」
ユウキ「それはわかってるけど、いきなりすぎるよ」
アリサ「戦いだって言ったでしょう」
ユウキ「だから誰と戦ってるの?」
アリサは黙って機材の片付けを始める
ユウキは部屋を出て行く
○オフィス(夕刻)
マユ「お疲れさまです。今夜飲みに行きませんか?」
サキ「ごめんね、今日は夫婦で食事なの」
マユ「それはよろしゅうございまして」
アリサ「マユちゃん、ごめんね。今日は練習があるの」
マユ「練習?なにかスポーツでもされてるんですか?」
アリサ「あ、なんでもないわ。でもちょっと無理なの。
埋め合わせはするから、ごめんなさいね」
マユ「いえ、気にしないでください」
サキ「で、今月の彼氏クンはもう脈なしってわけ?」
マユ「どうして?」
サキ「あんたが飲みに誘うなんて珍しいから」
マユ「たまたま今日は空いたのよ」
サキ「ふーん、そうなの」
マユ「それより、先輩ってなにかスポーツとかやってたっけ?
何の練習だろうね」
サキ「運動は知らないわね。でもお稽古とかしてるんじゃない?」
マユ「あっ、そうかー。ありえる。なるほどね」
○アリサの部屋(夜)
以前より大型の機材が増えている
アリサとユウキが練習をしている
アリサ「いい?私が喋ったらそれに合わせて口を動かす」
ユウキ「姉さん、そこまでやる必要あるの?」
アリサ「ある」
アリサはユウキをにらみつける
アリサ「俺は、押しの強い人は嫌いじゃないよ」
ユウキは沈黙する
アリサ「ほら、口を動かしなさいよ。音声は500ミリ秒遅れて出るように
なってるから、私の声が聞こえてから話しても大丈夫。それでも
間に合わないならもう一度時間を調節するわ」
ユウキ「なんでそこまでこだわるの」
アリサ「こだわってるわけじゃない」
ユウキはため息をつく
ユウキ「わかった、姉さんの言うとおりにするよ。でも、これで上手く
いかなかったら、これからはこんな無茶はしないで」
アリサ「わかったわ」
ユウキ「それから、設定を800ミリ秒くらいにして」
アリサ「あんたの方がこだわってるじゃない」
こうして、特訓は続いていく
まだ真実を知っているのはアリサだけ(続く)
追記:オチを考えてみる(2019年12月21日)
アリサのこだわりに辟易しつつも言われるがままに従ってきたユウキ。
だが、徐々に相手のマユのこと、なぜ姉が熱心になるのかが気になってきた。意を決して姉に内緒でマユにメッセージを送る。
ユウキは姉にはばれていないと思っているが、アリサは全てを知っていた。そして、「ユーキ」を介した3人のやりとりが始まる。姉は常にログを読んで方向性を修正しているため、マユは相手が2人になったことに全く気がつかない。一方で、サキは職場でのアリサの言動に違和感を感じていて…
マユとユウキが会うのが先か、サキに「ユーキ」の正体を悟られるのが先か、それともユウキが姉の影に気が付くのが先か。4人の高度な心理戦が幕を開ける。
たぶんすんなり会ってしまうと面白くないはずなので、時系列としては
① マユとユウキが会う
② サキが「ユーキ」の正体に気付く
③ こっそりマユに忠告するが、マユが「男性と会った」と否定する
(この頃にはアリサがアカウントに触れなくなったことを匂わせる描写を入れる。たとえば、弟の行動を遠目に見ながら自身のスマホのアプリのログアウトボタンを押す、など)
④ サキがアリサを問い詰める
⑤ マユが一部始終を目撃
ここから先はどちらに転んでもよさそうですね。
深夜のコメディということなので、それほど重いメッセージを伝える必要はないようにも思えますが、メッセージ的なサブタイトルをつけるとしたら、技術的特異点(singularity)をもじって、「人間的特異点(human singularity)」あたりでしょうか。「仮想と現実の境界で」とかでもいいかもしれません。
「模倣によってつくられた人間らしいキャラクター」と「それを動かすリアルな人間」のおりなす、リアルとバーチャルの双方の世界でのドタバタを描く。そんなことができたら面白いのかな、と考えています。
おわりに
一気に書いたのですが、ここで力尽きました。最初の原稿でだいたい8,000字弱、実感ほど分量が書けていないな、というのが正直な感想です。数時間で書いたからなのか、会話形式だからなのかは分かりません。
アイデアはまだまだあるので、需要があれば加筆や修正をするのですけれど、そこまでのレベルのものではないかも知れませんね。でも書いていて楽しかったので、機会があればまたやります。
ありがとうございました。
2019年12月21日 追記しました。