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『ドラキチ合宿』基本セット2019編。全47卓分データ大公開!
2018年7月13日(金)、マジック・ザ・ギャザリングの新セット『基本セット 2019』がいよいよ発売されました!みなさん、遊んでますかー!
リミテッド・フォーマットの『グランプリ・千葉 2018』も週末に開催が迫り、参加予定者のプレイヤーのみなさんは「『基本セット 2019』のリミテッドの情報がほしい!」とお考えの方が多いと思います。
今回は『グランプリ・千葉 2018』参加予定者とリミテッダーの方々に向けて、最新・"最大"のドラフト情報をこのゑ(森安 元希)がお届けします。
「"最大"ってどういうこと?」
発売日の7月13日から祝日の7月16日深夜にかけて、東京某所で『ドラフトをひたすらプレイする』合宿が開催されていました。
BIGsの河浜 貴和主催、『ドラキチ合宿』基本セット2019編です。
※『ドラキチ合宿』第1回の様子
http://mtg.bigmagic.net/article/2018/05/kiji/moriyasugenki/15.html
大規模なものとしては2回目を迎えた今回は、参加者数40人越え、記録されたドラフトの数は47卓に及びました。
参加者にはスポンサード・プレイヤーや通年リミテッドをやりこむプレイヤーの姿もあり、プレイング自体も総じてレベルの高いものでした。そうしたなかで、
47卓×8人、全376デッキの勝敗を記録しました。
おそらくグランプリ・千葉2018前の地点で掲載されるドラフトデータのなかでは、世界的にも母数に関しては最大クラスになると思います。
今回はその記録全てを公開して、みなさんが『基本セット 2019』ドラフトの環境を紐解く一助になればと思います。
今回の記事は「参考とする表データ画像」と「それの説明・補足・まとめの文章」を繰り返してゆく形になります。
「具体的にどのカードが強い・弱い」ではなく、「戦績からみえてくる色毎の評価」にスポットを当てた記事です。
■表①
表①は以降の分析記事で基本となる『スコアシート』です。
左から「白い列が卓の記録番号」「赤い列が3-0デッキ」「黄色い列が2-1デッキ(3つ)」「青い列が1-2デッキ(3つ)」「緑の列が0-3デッキ」です。
■表記方法
W(白)U(青)B(黒)R(赤)G(緑)の表記で統一しています。
使用者の記述をそのまま転載しているためWUとUWなど表記振れがありますが同一デッキタイプとしてカウントしています。
補足①:
※卓内でのマッチメークは『ツンドラ・バッド』と呼ばれる簡易スイスドローを採用しています。
卓の8人が沼2山2平地2島2の最大8枚からランダムに1枚ずつ引いてゆき、同じカードを引いた人同士で1戦目マッチ。
2戦目が「ツンドラ(島・平地)・バッドランド(沼・山)」かつ同じ戦績の組み合わせ(例:平地の勝った人対島の勝った人、沼の負けた人対山の負けた人)でのマッチ。
3戦目が1,2戦目が同じ戦績(例:勝勝 vs 勝勝、負勝 vs 負勝)でのマッチです。
※2勝や1勝のなかでの区別はありません。
補足②:
記録の簡易化のため「タッチカラー」などは記載を省略しています。
均等気味の3色、緑主体の4色も記録者が適当と判断した2色にまとめています。
※今回は2色環境なので均等3色、緑多色はそんなに多くありませんでした。
表①だけでは必要な情報が読み取りにくいので、表②以降で見やすくまとめていきます。
■表②
表②は「表①をデッキ毎に勝数カウントしたもの」です。(3勝・降順)
表②をふくめ、基本的には表①を見やすく・分かりやすく分析する内容がつづきます。
まとめ:
重要な「3勝」の数はRWが最多。WU,RG,URとつづきます。
「2勝」(勝ち越し)ではWUが圧倒的最多。RW,GWとつづきます。
ここまでは勝ち組です。
「1勝」(負け越し)ではGWが最多。UR,UBも戦績がふるいません。
「0勝」はRW,WUが同数で最多。
これは後述しますがこの2デッキは母数が多いことにも起因しています。
「2勝より1勝の方が多い」(負け越しの方が多い)という見方ではUB,RG,GW,GU,URが該当します。特にGW,URは「1勝」が多いです。
唯一「3勝」しなかったBGは使用総数自体も極端に低いという結果になりました。「3勝率 0/47」はちょっと偉業にも近いと思います。
■表③
表③は「どれくらいそのデッキが勝ったか」です。(平均・降順)
「平均」は「そのデッキを使った場合の平均勝利数」です。
※「合計」はデッキごとの「全47卓でのマッチ勝利数」です。
補足:ここから少し計算がはいってきます。
どちらの列も赤い背景が高い(良い)数字、緑の背景が低い(悪い)数字です。
(例:全3卓で単一デッキが3-0,2-1,1-2であれば「合計」は6(3勝+2勝+1勝)、「平均」は2(6勝÷3卓)となります。)
まとめ:「合計」と「平均」で立ち位置に違いのあるデッキがいくつかデッキ出てきました。
「合計」ではWUが最多ですが、「平均」ではRWが最多となります。
これは「組めた場合の勝率自体はRWの方が若干高く、WUの方が若干組みやすい」という結果です。
「合計」と「平均」で一番違いがあるのはGWです。
「合計」では上位3位にも関わらず、「平均」では最下位です。
これは「GWは組みやすいが、実際には勝てなかった」というものです。
1.33は3回やって計4勝程度の勝率なので、いわゆる「上振れ2-1、普通にやって1-2」というような状況です。
逆にBRは合計数の低さが目立ちますが、平均は保てています。「BRは組みにくいが、上手く組めれば強い」というようなポジションです。
「合計50台、平均1.4台」のデッキタイプは試行回数によって順番が入れ替わりそうなほど均衡状態にあります。
■表④A
■表④B
表④Aが「色別のそれぞれの勝利数の合計」
表④Bがその「パーセント表記」です。
さきほど表②③でデッキ別の勝利数を出したので、今度は(単)色別に分解してみてみましょう。
単色での分析は組む相手を問わないので、その色自体の地力のようなものが見えてくるかもしれません。
補足:表④Aは「WUが3-0したWとUの3勝にそれぞれ1」というカウントです。
※仮に全ての色が同じ勝率の場合、パーセントの標準は「3勝=1/8(12.5%) 2勝,1勝=3/8(37.5%) 0勝=1/8(12.5%)」です。それより高い・低いところがあるかを確認してみましょう。
まとめ:「3勝」は合計、率ともにRが最多となりました。総数はW,Uに大きくゆずるので、この2色よりも「組めれば強い」色であることを強調しています。ただ「0勝」率が多少高いため、失敗する可能性も考慮しなければいけません。
Wは「2勝」率が他色を突き放しています。失敗しにくい色のようです。
U,B,Rは「2勝」率と「1勝」率にほとんど差がありませんし、37.5%の付近なので平均的です。
Gのみ「1勝」率の方が「2勝」率より高い結果となっています。またここまで見えにくかった情報としてGの「3勝」率の悪さが顕著です。
■表⑤
表⑤は「1卓につき、その色が何勝したか」です。
「平均」が「合計を記録卓数(47)で割った数字」です。(平均・降順)
まとめ:
Wは1卓につき平均5.85勝(約6勝)しています。1卓の勝利上限数は12(3勝+2勝×3+1勝×3)勝なので、半分近くがWの勝ち星ということになります。
表④BではWは「2勝」率が最も多かったので、「3人がWをやって3人とも2-1付近」というスコアに最もなりやすいということになります。
平均5.3勝のUも高い数値です。多少パーツが被っても2人ともある程度勝つ(3-0と2-1で5勝)、というような数字です。
BとGの平均4勝前後というのは「パーツを取り合ってしまうとお互い勝ちきれなくなる」というような数字です。
「3勝」率では最多だったRも安定した戦績という点ではW,Uに一歩ゆずりました。
■表⑥A
■表⑥B
表⑥は「卓で何人その色をやっていたか」です。Aが人数ごとの「合計」。
Bが「平均(7/19追記)」と「%表記」です。(A,BともにBの平均・降順揃え)
完全にイコールではありませんが、「卓でその色を何人やれるのか」と「卓で何人くらいやっていることが多いのか」の目安になります。
補足:2色の組み合わせ10パターンを8人で割ると1パターンにつき1.25人。
単色で考慮すると倍の、「1色につき卓に2.5人あたり」が標準になりそうです。(⇒だいたい卓2人と卓3人を足して66%くらいの数値、です。)
まとめ:
W,Uが卓4人、B,R,Gが卓3人がそれぞれ最多です。※いずれの平均もそれにならっている数値です。
卓5人と卓6人が存在する「Wが圧倒的に許容人数が多い色」ですね。
卓に2人より少ないということはほぼないと考えて良さそうです。
Uの卓5人も比較的多く、「WU」を組む場合の許容人数の多さが分かります。
サポートカラーとしても優秀なRは(唯一、卓1~6人全部にチェックがあった)幅広いカウントになりました。表①から通して悪いところがなく、最もバランスの良いカラーであるようにもみえます。
Gも卓4人が多めですが、表④,⑤をふまえると「Gは実際の許容人数よりも混みやすい」傾向にありそうです。
「Bは空いていることが多い」ですが、勝ちきるためには合わせる色の空き具合にもよります。
今回の表データは以上になります。さいごに表①から表⑥Bまでの情報から判断できることを簡潔にまとめて、終わりにしようと思います。
■まとめのまとめ
今回みえたデータのなかで最も重要なものはやはり「3-0,2-1率はR,W,Uの3色が多い」でしょうか。
比して卓での人気も高い3色ですが、選択にみあったリターンもしっかりとついてきています。逆に「G,Bは選択にあたってはかなり慎重な判断が必要」そうです。やるときにはアンコモンとレアといった貴重なカードの重要度・強さをしっかりと判断できるようにしましょう。
※加えて、何色を選択してても最も当たりやすい「Wに弱いようなデッキを組むべきではありません」ね。
G含みではRG、B含みではRBが比較的良いデッキになりやすそうです。
Wは許容人数が非常に多いことが今回の顕著な特徴となりました。
「Wが卓5人で計10勝」という記録もあります。
ただしGWは「やりやすそうな流れ」から「実際には勝ちにくい」様子がみえてきています。
他デッキは結果的に「やれる」と「勝つ」(「やれない・やらない」「勝てない」)がある程度一致しているので、GWをやる場合は、Wデッキのなかでもある程度独自の判断基準が必要そうです。
もちろん実際にはピックの流れというものがありますが、今回は数字だけみれば「3-0したかったらRW、Rを避けて2-1狙うならWU、どうしてもWやれなかったらRG、BするならRB」という結論が出てきました。
更に環境理解が進めば変わってくるデータも多いと思いますが、読んでくれたひとの環境理解のための参考のひとつになればと思います。
07/19 12:00 追記
記事が思いの他、好評をいただけているので、感謝をこめて記事を編集・追記しました。表をすべて高評価となるものが最上位になるようにソート、表⑥Bに関しては平均を追加して、より直感的に見やすくしました。
勝ち負けから示せるデータに関してはおおむね出し切ったと思いますので、追記内容は具体的にカードの評価にもふれてゆきます。
記録者(このゑ)が独自に判断した
「各色の人気コモン 4種」です。
今回は「同等程度の評価」といったカードも多く合宿内でもかなり評価が割れているシーンもありましたので、「順位付け」や「初手」といった評価ではなく、「勝ち越しデッキに多く採用されていた」と判断したカードをまとめて4種ずつ紹介しようと思います。
どのような系統のデッキに入っていたかも補足します。
W
《星冠の雄鹿》(W全般)
《ペガサスの駿馬》(RW系)
《暁の天使》(W全般)
《光明の縛め》(W全般)
「蓋をして殴る」戦法を支えるカードが人気上位を占めました。
他にも《凛々しい騎兵隊》と《返報》も僅差と言えるほど人気があったようです。
U
《本質の散乱》(U全般)
《分散》(U全般)
《前兆語り》(UB系)
《予言》(UR系)
相手のビッグ・アクションを止めるカードやデッキを潤滑に回すカードが上位です。
「ゲームをコントロールする」要素を今回一番担っている様子です。
《飛行の先駆者》と《霧の壁》も高評価で、盤面を支える役割が求められています。
無色ですが《機械職人の守護者》の存在も、生物の評価を高めている一因です。
B
《リッチの愛撫》(B全般)
《流血の空渡り》(WB系)
《吸血鬼の新生子》(WB系)
《骸骨射手》(B全般)
《リッチの愛撫》は環境に少ない無条件除去の1枚です。
上位の共通点としては、戦闘せずライフレースに介入できるカードの評価が高いのかもしれません。あとは《異様な忍耐》がコンバット・トリックとして優秀と判断されていました。
R
《ボガートの粗暴者》(WR系)
《感電》(R全般)
《ショック》(R全般)
《電光吠えのドラゴン》(GR系)
1,3,4,5と各マナ域から1枚ずつのランクインといった様子です。
RWのように軽く組む上でもRGのようにどっしりと組む上でも使いやすいカードの枚数はある程度確保されているようです。
G
《狂気の一咬み》(G全般)
《巨大な戦慄大口》(G全般)
《僧帽地帯のドルイド》(G全般)
《大蜘蛛》(G全般)
全体を通して除去が弱いといわれているなか、緑の除去は使い勝手が良さそうです。
また組み合わせる色によらず評価が高そうです。
サイズ感のあるクリーチャー、接触しにくい対空としての到達クリーチャー、そしてそれらに一足早くアクセスできる緑の特権としてのマナ・クリーチャー。いつもの感じ、といえばそうかもしれません。
『ドラキチ合宿』基本セット2019編。全47卓分データ大公開!
いかがだったでしょうか。
ご感想のほど、お待ちしております。
追記7/20 13:10
忘れてました。表①をデータ確認したい方向けにグーグルドライブのダウンロードリンクを掲載します。
このゑ(森安 元希)(twitter @konoe_moriyasu)