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2023/03/05

 TOEICのオンライン講座を受けてから、四時半ごろ桜を見に出掛ける。冬には着ない綿のシャツを、少しの外出だからと着て、セーター、薄手のコート。結論、ひどく寒かった。スマホを確認すると六時から雨が降るとのこと、まだまだ大丈夫だと思ってそんな格好で外へ出たらば、ぽつぽつまでとはいかないけれど、ぱらぱらと雨粒が手の甲に感じられる。ダウンに着替えて出直そうか迷ったが、自転車で500mほど進んでしまったのでそのまま漕ぎ続ける。視界をすり抜けていく人々は暖かそうな格好、皆黒いダウンを着ていて、人を見るのはそれほど面白くない。
 いつもは誰もいない公園に、今日はお父さんとその娘二人、計三人がボールで遊んでいる。元は小学校の校庭だった公園なので、道から視線を上げた高いところに子どもの足がちらちら見える。嬌声がフェンスの向こうから聴こえる。
 公園の周りをぐるっと回って、入口の方へ。その向かいの幼稚園に隣接する小規模な公園から土手へ出る。まだ明るいからか見渡すと人影がいくつか。多くはない。いつも通り流れている水、鳩に混じって違う鳥がいる。木のベンチに腰掛けて、特に何もしていない歳をとった人々。寒い。
 自転車で砂利道、ランニングをしている人と時折すれ違う。こんな薄着をしている僕を何人もの通行人が凝視したが、スポーツウェア姿の彼らはどれほどの視線に耐えて走るという自らの信念を貫き通しているのだろう。ランニングをしている人のことをじっと見てしまう癖があるので(そこには特に感情はない、いつも考え事をして歩いているので、視界に早く動くものがあると見てしまう)、勝手に彼らが大量の視線を摂取していると思い込んでいる節がある。
 土手下の川沿いを自転車で漕ぐ。雨は降っていない。土手上は狭い道なので自転車を漕ぐわけには行かないのだ。しかし桜は土手の上に咲いていた。生きているのか死んでいるのかわからない冬の草の上を踏みながら、自転車と共に斜面を登った。普通にきつくて体が折り曲がる。
 桜の木の下にはフィリピン系の人々や三十代前後らしき日本人カップルの二種類の人類しか見当たらず、これは何らかの困難な確率を乗り越えてきた結果広がる光景であった。歳をお召しの方もペット同伴の方もいませんでした。こぞったように写真を撮り、僕も写真を撮り、嫌になって自暴自棄に散らない桜は偉いと思った。

 帰り、幼稚園から土手に出たあたりに戻ってくるとコンクリートの地面に桜の花が潰れている。あたりを見回しても枯れ木のみ。この花はどこからやってきたのだろう。人が運んだのだろうか。
 さらに進むと、ホームセンターから止めどなく車が排出されるのを見え、そんなに面白い場所ならと入る。自転車置き場は等間隔に白線が引かれているが、白線の上に停められている自転車や白線と白線の間に置かれているものもあり、よくわからなかったので白線と地面の境界線に停めた。自転車置き場の最も端。
 犬や猫がショーケースに入れられて展示してある陳列販売が廃止されており、毎月のうち幾日か、保護された動物が来てその預かり親を決めるという方向性に決まったらしい。善い取り組み。泳いでいたり水槽の隅でぐったりしている魚をふらふら見て、それを特に気にも止めず放っておいてくれる店員さんはやさしい。好きだ。
 ペット用品や洗濯用品や、害虫駆除用品の種類の多いこと!それぞれの棚の前で途方に暮れた。
 二階へ上がって家具を見る。ソファに腰掛けておじさんがスマホの画面に夢中である。小さな子供を連れたおしゃれなお母さんが、体の半分はある袋を片手で持っていて異様だった。多種多様な飲み物のあったフードコートのメニューは、五種類の特徴なきドリンクのみに変わっており、代わってラーメンの種類がこれでもかとメニューを埋め尽くす。もはやラーメン屋であり、夕方のいい時間なのに一組しかお客がいなかった。
 さらに上の階のスーパーへ。ごった返しており、辟易しながら通路を進む。多種多様なアイスが売っており、これが目的。二十分ほど小さな子どもたちと一緒になってアイス売り場をぐるぐる。七本入りのいちごアイスを購う。列が深呼吸一つでは耐えきれないほど並んでおり、そのうちにアイスが溶けてしまうのではないかと心配だった。前に並ぶいかつい小学五年生くらいの男が、一々こちらを振り返っていちごアイスの箱を持った僕を見るのだった。恥ずかしくはなく、話しかけたかったが母親がいてしきりにこれ購う?とアイスをその子に見せていたのでできなかった。いらない、とその子は何度も繰り返していた。
 スーパーから下に降りるにはエレベーターを使うしかないのかと、最悪の気分で人口密度の高いエレベーターホールを見やったが、上に登るエスカレーターがその後方にあったので、もしやと思いその裏へ回る。ビンゴ、無事誰もいないエスカレーターを下る。
 ペット用品を目当てに、買い物カートの上に大型犬二匹を乗せた婦人が横を通り、忙しなく首を動かす犬と一瞬目が合う。幸せな気分でアイスを自転車カゴに入れて帰った。

帰りに見たきれいな壁

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