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意識的な課題。地域の一員としてのカフェ。

これは意識的な部分の課題だが、あくまで「自分の店がどうなのか?」という視点で営業している店があまりにも多い気がする。

例えば、人が一週間のうちで一番動くであろう日曜日を休みにする。

例えば、ランチタイムをかなり早めの時間に切り上げる。

例えば、他の店や見所、レジャースポットなどを紹介しない。

あくまで自分の店が回ればいいという視点での経営を行っているみせが多いなという印象で、残念な気持ちになる。

もちろん、各々の事情はあるだろう。

従業員を休ませなければいけないだったり、お店を長く開けることで人件費・光熱費が無駄にかかるだったり、飲食の提供以外のサービスを行うことで工数になるだったり。

そういった事情はあるだろうし、それを僕は尊重したい。

だからこそ、僕らみたいな個人店にできることがあるのではないかと思う。

オーナーの一存で自由になんでも決断、選択できるという恵まれた環境を活かさない手はないと思うのである。

簡単にだが、うちの店で他の店に比べて力を入れてやっていることを列挙する。

・通し営業(途中で閉めず、ランチタイム等も設けない)
・夜カフェ営業(土曜日のみだが需要が拡大すれば他の曜日にも展開予定)
・土日営業、祝日は定休日に関わらず営業(代休は設けない)
・英語ができるスタッフ常駐(英語メニュー+写真も設置)
・他店の紹介、見所やレジャースポットの紹介・説明(英語の説明あり)
・地元食材メインで仕入れ、地元事業者との積極的なコラボレーション etc

挙げ出せばキリがないが、特筆しておきたいのはこのあたりである。

具体的な手法や施策を挙げれば多くあるが、根底にあるのは「地域の一員」としての意識だ。

僕個人の店ではなく、地域を構成するパーツの一つとして存在しているという、地域全体を一体として捉える意識である。

まず「自分の店が回ればそれでいい」という意見へのアンチテーゼになるが、その意識では自分の店ただ一つも守ることはできない。

一つの店が一人勝ちするという世界観には、先がない。

なぜなら、経済というのは循環しているからである。

自分の店でお金を留めれば、地域に流れ出るお金は少なくなり、そういう店が多くなれば多くなるほど先細りしていく。

お金は流れるから戻って来るのであって、蓄えるばかりでは腐っていく一方だ。

(実際、日本円の価値は落ちていく一方なので、比喩ではなく実質的に腐っていっている。)

お金だけでなくお客さんも同じだ。

自分のところでお客さんを止めていては、地域にお客さんが流れなくなり、結果的に自分のところに戻ってくるお客さんも少なくなる。

お客さんというのは、その店だけを利用して生きているわけではない。

あらゆる店を利用することで、総合的に満足度が高まるのであって、一つの店だけで完結することは不可能に近い。

であるからして、他の店を勧めることやレジャースポットなどを紹介することも、お客さんにとってはその店の価値なのである。

そして、実際に勧められた場所へ行って満足すると、「あの店は良いことを教えてくれる」となって必ず戻ってくる。

これはかなり意識的な部分での話だが、無意識レベルで存在しているものが多数ある。

なんとなく心地が良いや、違和感がない、信用できる、といった感覚的なレベルにおいて満足できるかどうかが極めて大切だ。

目に見えないからこそ、一番大事にしなければいけない部分である。

経済の流れから離れ孤立した店というのは、長い目でみて淘汰されていくに違いないと僕は思っている。

川の流れから孤立してしまった水溜りのように、放っておけば濁って澱んで、しまいには干からびてしまう。

地域の一員という意識、もっと具体的にいえば地域経済の流れを構成する一つのピースであるという意識を持つ店だけが、今後残っていくという確信がある。

令和の時代、「競合に勝つ」というスタンスはもはや古いと思う。

競合ではなく共存。

互いに協力し合い、存在し続けられるように地域間での経済の流れを作り、循環させていくという発想が求められていると思う。

実際、消費者はそういった店のスタンスに思った以上に敏感である。

口には出さないかもしれないし、意識にすら上っていないかもしれないが、そのような気配を繊細に気取っている。

他を出し抜こうとする卑怯な店、自分のところさえ回ればよいとする自己中心的な店、周りを蹴落とそうとする野蛮な店。

そういった雰囲気を感覚で気取る。

僕もその消費者としての一面を持っているし、すべての店舗経営者は経営者であると同時に消費者でもある。

その消費者としての自分になったときに、なんとなく避けるような店を作ってはいけない。

ここまで理論的な部分を書いてきたが、それ以上の要因として、僕自身がこの地域がとても好きであるという単純な理由がある。

この地域が好きだから、この地域を残したい。

そう思えば自然と地域経済の循環をつくろうという方向性の動きになっていくし、地域の一員という意識が芽生える。

どちらかというとこの気持ちが先に来て、先述したような動きをしていたら、地域の一員という意識が大事だと気付いた感じだ。

だから、「生き残り戦略」といった大それたことでもない。

ただ、そのほうが自分にとって心地良いからやっているという、ただそれだけの話でもある。

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今野直倫
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