カフェは不要不急ではないという気付き
カフェは不要不急ではない。
最近たどり着いた、というか改めて発見した事実である。
世の中の仕事を要急と不要不急に二分したとき。
カフェという仕事は、きっと不要不急のほうに入ると思われると思う。
僕もそう思っていた。
例えば、ごみ収集などのいわゆる生活インフラ的な仕事は、間違いなく要急である。
スーパーマーケットなどもたぶんそう。
それがないと、健康を害してしまい、生活が成り立たなくなってしまう。
そういった類のものだ。
そして、カフェはそちらとは対極の不要不急、つまり "無くても困らないが、あったら良い" というグループに属する。
一般的には。
コーヒーなどは嗜好品と呼ばれるように、下手したらタバコや酒と同じ組に入る。
そう考えると、そのコーヒーを主に提供するカフェは、不要不急のど真ん中と言っても過言ではなさそうである。
先日、僕は久しぶりに劇的に体調を崩した。
40度近い高熱が2日ほど続き、滝のような汗をかいてひたすらに寝込んでいた。
その2日間は水やスポーツドリンクを口にしていた程度で、ほとんど何も食べていなかった。
熱が下がった3日目。
ベッドから起き上がったものの、ひどく体力が落ちていることに気付いた。
少し動いたら、すぐに疲れる。
身体に力が入らない。
栄養を取らないとはこういうことなのか、と久しぶりに身をもって体感した出来事だった。
健康は大事。
シンプル過ぎる学びだが自分にとってかなり大きく、それからというもの生野菜をしっかり取るようにしている。
それから、肉も。
野菜や肉をちゃんと食べると、非常に調子がいいということに気付いたのだ。
栄養0の状態を知ることで、逆説的に。
その熱が下がった当日、僕は東京に行った。
病み上がりで何をやっているんだと言われそうだが、前から決まっていた予定だから仕方がない。
その予定の本題とは関係ないのだが、東京からの帰りの新幹線移動中。
僕は三時間ほど、ひたすらに本を読んでいた。
その間は、SNSなどを見ることもなく、久しぶりにのめり込んだなという感覚があった。
気持ちよかった。
その日一日、非常に清々しい気持ちで、実に健康的だなという感覚で過ごした。
それから度々、SNSや連絡を遮断して本を読むということをやっている。
やっぱりその後はとても健康的な気持ちで、すこぶる調子がいいなと感じる。
この出来事から言いたいのは、精神的な健康は身体的な健康とほぼ同等に重要だということだ。
どちらの一方がおざなりになっても、同じぐらいに不健康さを感じる。
これはかなりの発見だった。
普通、健康というと身体的な健康を思い浮かべる。
僕のように野菜や肉をちゃんと摂ろうと思ったり、八時間は寝よう、風呂に入ろう、運動をしようと思ったり。
そういうことに気をつけはするが、「健康に良いから本を読もう」とはならない。
ならないのだが、これがたぶん食事や睡眠と同等に大事なのだ。
精神的な健康は、身体的な健康と比肩するくらいにパフォーマンスに影響を及ぼす。
よくよく考えてみれば、現代人の僕らは頭脳労働をしている人のほうが多いと思う。
つまり、体より頭を使っているということだ。
そう考えると、どう考えても精神的な健康のほうが大事そうなのに、身体的な健康を重視しがちなのはなぜか。
不要不急と要急の対立を考えたときに、フィジカル的なものが要急に分類されがちなのはなぜか。
きっと目に見えやすいからだろう。
寝不足になれば目にくまができるし、熱が出れば顔が赤くなる。
風邪をひけば咳や鼻水が出て、風呂に入らなければ汚く臭くなる(=不衛生)。
精神的な不健康は、目には見えない。
目には見えないが、目には見えないからこそ、進行したときには手遅れになる。
不登校。
離職。
自殺。
下手をすれば病気よりも唐突で、深刻で、後戻りのできない状況に陥る。
僕は、元精神疾患患者だ。
だから、とてもよくわかる。
それを考えると、社会人は身体的な健康と同等に、精神的な健康に重きを置いたほうがいい。
カフェは不要不急ではない。
それは、僕が精神疾患を患っていた当時もそうだったし、多くの人にとってそうだと思う。
風邪の引き始めに漢方を飲む。
念のために病院に行く。
栄養が偏っているからサプリメントを飲む。
僕にとってカフェに行くということは、そんな感覚に近いのかもしれない。
気持ちが落ち込んでいる、というわけではないけど、なんとなくカフェに行く。
そうすると、カフェを出たときに「さっきまでは本調子じゃなかったな」と気付いたりする。
カフェに行くと気持ちが上向くからだ。
そのようなカフェ的な存在は、気付かぬところで精神的な健康の支えになっている。
本もその類だろう。
身体的な健康に加えて、精神的な健康にも気を付けていこうと思ったという話だ。
ところで僕は来年で三十歳になる。
しっかりとアラサーの僕である。
健康に気を付けている自分を客観的に見て、ああ、おじさんになっていくんだなぁと。