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なんのために生まれて、なにをして生きるのか
なんのために 生まれて
なにをして 生きるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!
今を生きることで
熱いこころ 燃える
アンパンマンのマーチ。
改めて読むと、現代人にめちゃくちゃ刺さる歌詞なんじゃないかと思う。
刺さりまくって貫通するのではないかと思う。
なんのために生まれて、なにをして生きるのか。
一昔前は、そんなこと考えもしなかっただろうと思う。
少なくとも、ほとんど全ての人が考えるなんてことはなかったはずだ。
生きる理由なんで、生きるため、家族を守るため、家を買うため、車を買うため、出世するため。
それでよかった。
何か明確な目標があって、会社で頑張れば報われる時代だったのだと思う。
少なくとも、僕の父親はそうだったと思う。
いわゆる出世とはちょっと違うが、大学教授になるために必死で働いていた。
勉強や研究もしていた。んだと思う。
僕はあまり父親が学を納めるところを見たことがない。
まあ、パソコンに向かってキーボードを打っているところを見たって、それが勉強や研究だなんて小さい僕にはわからなかっただろう。
仕事してるなー、としか思ってなかったと思う。
大人がやることといえば、仕事。
仕事をするのが大人。
たぶん、そういう認識が強かったと思うし、子どもだから仕方がない。
とにかく父親は常に仕事をしているなあという印象だったし、実際にそうだったと思う。
教授になるという夢を追いながら、僕たち家族を守るために必死だった。
むしろ家族を守るために、教授を志すという順番だったのかもしれない。
鶏が先か卵が先か、みたいな話だと思うが。
カエルが先かオタマジャクシが先か、みたいな話かもしれない。
いや、ブリが先かハマチが先か、みたいな話だろうか。
どっちでもいいか。
家族を守るためでも、教授になるためでもどちらでもよくて、そこに生きる理由が明確にあっただろうと思う。
理由を見出しやすい時代だったのだろうと思う。
雇用も今より安定していただろうし、給料も基本的には年功序列で、今よりも物質的に満たされていなかった。
だから、出世や昇給のために頑張ることが、家族を守ること、生活を豊かにすることに繋がった。
現代はそうではない。
雇用は不安定で、長年勤めても大して給料は上がらず、逆に生まれたときから物質的には満たされている。
必要なものは安く手に入った。
機能も向上した。
だから、頑張らずともそれなりの暮らしができるようになった。
なってしまった。
その代わりに、生きる意味を失ってしまった。
なんのために生まれて、なにをして生きるのか。
アンパンマン状態。
会社に属するという意識も少なったから、友達も減った。
愛と勇気だけが友達になった。
アンパンマン状態だ。
そう、僕たちは豊かで恵まれた生活を手に入れた結果、アンパンマンになってしまったのだ。
アンパンマン世代だ。
豊かで恵まれているから、生きる意味を探す。
十分豊かな生活ができているとするなら、なんのために頑張るのか。
なんのために働くのかを
なんのために生きるのか。
そういった問いを永遠に繰り返しているのが、僕たちアンパンマン世代だと思う。
なにが 君の しあわせ
なにをして よろこぶ
わからないまま おわる
そんなのはいやだ!
忘れないで 夢を
二番はこう続く。
もしかしたら北陸出身の方もいると思うので、こう言い直しておく。
二題目はこう続く。
大学時代、僕は北陸に住んでいたのだが、曲の二番のことを皆、二題目と言う。
これはカルチャーショックだった。
そんなことはどうでもいい。
アンパンマン世代はなんのために生きるのか見失った結果、さらに幸せってなんだっけ?と悩む。
それは上の世代からしたら、どれほど恵まれた悩みだろうか。
なにを甘えたことを!
これだから最近の若者は!
と言われてしまうかもしれない。
そしてアンパンマン世代は鼻で笑って、笑顔を作って、心の中で「老害がなんか言っとるわー」と思うだろう。
たぶん、アンパンマンのマーチの通りで、僕たちはなんのために生きるのか、自分の本当の幸せってなんなのか、を知りたがっている。
答えられないなんて、そーんなのーはいーやだっ!と思っている。
恥ずかしいとさえ思っているかもしれない。
いや、気まずいといったほうがより正確かもしれない。
SNSを見渡せば、みんな生きる意味を持っていて、なにが幸せかを知っているかのように見えてしまう。
キラキラしている友達や先輩、後輩もそのように見えて、なんで自分だけ生きる目標もなく、何が幸せかもわからず、ただただ時間を貪っているのかと。
そう、みんなが思っている。
みんな思っているのだが、「私は生きる意味を持っていますよ」という顔をして生きている。
だから、みんな孤独なのだ。
心では孤独なのだ。
だから、それで良いんだと思う。
なんのために 生まれて
なにをして 生きるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!
と言いながら、悩みながら生きていく。
なにが 君の しあわせ
なにをして よろこぶ
わからないまま おわる
そんなのはいやだ!
と言い続けて、探しながら、でもやっぱり最後までわからないまま生きておわる。
僕らは悩み、探し続けるために生まれてきた。
だから、悩み探し続けることをする。
そういうことにしておけば、良いのではないかと思う。
ところで、アンパンマンのマーチの歌詞を改めて読んで、ショックを受けたことがある。
それは、ずっと「生きるよ、ロコビ!」だと思っていた歌詞が、「生きる喜び」だったことだ。
生きる希望を失ったロコビに、生きるよ、と勇気付けている歌と思っていた。
誰だったんだ、ロコビ……。
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