第2話|心の扉を開く旅の始まり
※紺野うみのエッセイマガジン『心の中に6人の住人がいたので、自己分析ができた話』の第2話です。この連載は、一度購入するとシリーズで続編が読めます。単話ごとの購入も可能ですが、継続して読む場合はマガジンの購入がお得です。
無料導入編➤はじめに|私の中に誰がいる?
➤登場住人紹介
➤第1話|自己否定だらけの私を変えたもの
➤第2話|心の扉を開く旅の始まり
➤第3話|隠す者と隠される者
➤第4話|鉄壁の守りが崩壊したワケ
➤第5話|6つの扉が明かされて
➤第6話|住人チームコンサルティング
➤第7話|自分という世界の外交と内政
➤安らぎと好奇心を追いかけて
心の中に降りていったら、もちろん帰りも同じ道の逆方向をたどって帰ることになります。
臨床心理士の先生の声掛けで誘導してもらって、今度は階段を上っていきながら現実(?)の方に戻ってくる感覚……。
意識を現実の方に戻して、目を開いてからも、本当に不思議な気分だったのを今でも覚えています。
「あの女の子は一体なんなんだ!? 誰なんだ!?」という気持ちでした。笑
もちろん、これまで一度だって、そんな存在を意識したことはありません。
それでいて急に、誰からも何も言われていないのに、そんな「人物像」のイメージが勝手に出てくるなんて、思いもよらないことでした。
実はその頃、心の中の気持ちを誰にも上手く吐き出せなくなっていた私は、精神的にだいぶ参ってしまっていて。
自分自身が心を閉ざしているわけですから、身近に気を許せる味方を見つけることができるはずもなく、勝手に深い孤独を感じてしまっていたんです。
この「自我状態療法」を試したのは、まさにそんな時期の真っ只中でしたから、私はあの女の子との出会いでついつい思ったんですよね。
驚くべき場所に心強い味方がいたのかも……、と。
だって、彼女なら私の心の中にしかいないわけですから気を許せるし、誰かに迷惑をかけることもありません。
何よりも、その女の子のかもし出していた「天使っぽい」癒しの力がすごくって、とにかく無条件で安心できちゃったんです。笑
「この療法では、自分が自覚できていないことに気づけたり、なぜ苦しくなっているのかを知れたりするので、どうすれば今の自分を苦しめている問題を解決できるのかという、良いヒントが見つかるかもしれません」
初めて「自我状態療法」をやっていただいたこの時、臨床心理士の先生はそう説明してくださったのですが、その時の私はまだ、その意味をおそらく半分も理解していなかったでしょう。
それでも。
私は既にそのたった一回で、自分の心の中にあった6つの扉と、不思議な魅力を持った謎の住人に対して、早くも興味でいっぱいになっていました。
日常が辛すぎて、ある意味では現実逃避したいような感情もあったと思います。
でも結果的に、それは単なる「逃げ」の場所ではなかったんです。
そこは、これまで自分が目を背けてきてしまった、心の中だったわけですから。
もちろん、この時はまだこの先「彼ら」が、私の人生にどんな贈り物をくれるかなんて少しも解っていませんでしたけどね!笑
ただ、最初の段階から、そこには安らぎと好奇心があったように思います。
部屋は、まだたくさんあった……。
ということは、他にも誰か「人物」がいるに違いないと単純に考え、私は自分の心の中に対して、純粋な興味が芽生えていました。
今、改めて考えてみると「自分のことを解った気になったまま、本心とは違う方向に突き進むこと」に比べて、少なくとも「自分のことを正しく知りたい」という意識を持ったということは、私にとって本当に大きな気持ちの変化だったと思います。
➤助けてグリーンダカラちゃん!
「また、次回やってみましょうか」
先生からはそんな風に言われていたのですが、一度方法を知ってしまったが最後。笑
そこからしばらくの間、主に眠る前の時間を使って、私はそのイメージを何度か勝手に試していました。
目を閉じて心の中に降り、あの女の子に会う。たったそれだけなのに、心は癒されて、不思議と赦されているような気持ちになりました。
現実の方は、まだまだ辛い状況で。その頃は、自己肯定感がボロボロだったので、自分の存在価値がよく解らなくなっていたんです。
相変わらず出口は見えてこなかったのですが、それでも一日の終わりにあの子に会いに行くことで、どんなに辛くてもなんとか明日もがんばらなくちゃ……という気持ちになれましたから。
それでも「現実」の方でじっと耐え抜かなければならないという時、ふと脳裏に彼女が足元から、心配そうな顔でこっちを見上げているようなイメージが浮かんだこともありましたっけ。笑
いつの間にか彼女の存在は、私の心の支えのようになっていました。
ごく自然に、その子に名前をつけてあげたくなったんですよね。
そのくらいの時期にTVのCMで頻繁に登場するようになった、グリーンダカラちゃんという女の子。白い服に、緑のベレー帽をかぶっているおかっぱの可愛い子です。(最近はCMの中でもかなり成長していますが。笑)
私の中の子はベレー帽をかぶっていませんでしたし、髪形も栗色のふわふわっとした感じだったのですが、雰囲気のイメージがどことなく似ている気がする……ということで、そのまま「グリーンダカラちゃん」と呼ぶことに。
扉の色も、若草色だったし「ぴったりだ!」と思いました。
グリーンダカラちゃんは、私が心の中に会いに行く度に、なにも言わずただ一緒に過ごしてくれました。とても自然なことのように。
彼女は一切言葉を喋らないのですが、言葉なんてなくてもそのやさしさや温かさを感じるには十分でした。
その頃は、眠る時の癒しがないと正直キツかったと思います。追い詰められすぎて、明日が来てしまうということが、毎日本当に嫌で嫌で。(こういう想い、経験してきた方もいらっしゃると思います)
それでいて、布団に入ると「やっと眠れる」とちょっとだけ安心。
そんなハチャメチャな生活でしたから、本当に冷静に考えると、よくあそこから這い上がってここまで来られたな……と思います。笑
人間、心さえ整えることができれば、どんなところからでも生まれ変われるものですね!
➤他の扉には誰がいる?
世の中を少しでも明るくする言葉たちを、心を込めて多くの方に届けていきたいと思います。 紺野うみの活動を応援していただけますと、大変うれしく思います!