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第7話|自分という世界の外交と内政

※紺野うみのエッセイマガジン『心の中に6人の住人がいたので、自己分析ができた話』の第7話です。この連載は、一度購入するとシリーズで続編が読めます。単話ごとの購入も可能ですが、継続して読む場合はマガジンの購入がお得です。

無料導入編➤はじめに|私の中に誰がいる?
登場住人紹介
第1話|自己否定だらけの私を変えたもの
第2話|心の扉を開く旅の始まり
第3話|隠す者と隠される者
第4話|鉄壁の守りが崩壊したワケ
第5話|6つの扉が明かされて
第6話|住人チームコンサルティング
第7話|自分という世界の外交と内政


➤コミュニケーションの実験

自分の中の「委員長モード」だけを出しっぱなしにすると、コミュニケーションで消耗しやすいということに気づいた私。

そこで新しい人生のスタートと同時に、あえて外交が得意なリンさんを外側に出すことを心がけて動くようにしてみていました。
感覚的には、「リンさんとして過ごしてみる」という感覚でしょうか。

すると、さすが確信的な「外交」担当だ、と言うべきでしょうか……。
とっても楽なんですよね、人と接するときにこれまで装備していた鎧を外せたような気持ちになれて。

不思議と、「よし、今日はリンさんでいこう!」と軽く心の中で意識しておくだけで、彼女の要素が勝手に自分の言動を司ってくれました。

なりきるようなイメージに近いかもしれませんが、「住人」というのはもともと自分の中にあったキャラクター的要素ですから、無理がないんです。

そこが、俳優が役を演じる、というのと大きく違うところですね。(あ、でも……俳優さんでもはまり役だったり、元々の性質が役柄と近い場合は、本当にナチュラルにやってもそのままピッタリくる時もありますね。笑)

この「リンさんモード」の状態で人に接すると、私は「委員長」の時と違って、臆さず自由に、積極的に人と関わりたいと思って行動することができました。

前の職場から離れ、プレッシャーから解き放たれたことも、重要なことだったかもしれません。
以前は「委員長」として頭の中を仕事の緊張状態でいることがほとんどで、強く上司の存在や都合を意識していました。

「絶対に失敗できない……!」という意識が常時働いていたため、委員長は自分以外の住人を外に出すことをためらったのかもしれません。

「私が行かずして、誰が対応できますか!」といった具合に、ちょっと男前なくらいの気概を持っている委員長なんです。笑
だからこそ、ひとりですべてを背負いすぎてしまいやすいのかもしれません。

そんな状況から解放された今、いよいよリンさんが部屋から出てくることができるようになったのです。

私がはじめてリンさんの部屋を訪れた時には、「今はまだ外に出ることは無理」と言われたのを覚えています。
つまり、環境を変えたことによってやっと、彼女が持ち前の自由さで負担の無いコミュニケーションを請け負ってくれる環境が整ったのでした。

リンさんが動ける状況になったお陰で、私は新しい環境の中、積極的に人とのコミュニケーションを楽しんでいるような節があったと思います。

転職の切り替え時に、橋渡しとして働かせていただいたバイトは接客業でした。
その時はリンさん要素MAXで、子どもが来てくれれば手を振ったり話しかけたりし、外国の方が来ればろくに喋れもしないのに英単語とジェスチャーのみで、コミュニケーションを取りたくなるんです。笑

我ながら一歩引いた視点からも自分の言動を観察しつつ、おもしがっていたような気がしますね。
「リンさん」の存在を意識するだけで、自然にここまでエネルギッシュになれるんだ……と、それまでのギャップも考えてみると驚きもありました。

それにしても、新しい場所で少しずつ人間関係や信頼関係を築いていくのは、新鮮で本当に素敵なものでした。
れまで、仕事の方向に引っ張られていて新しい輪をあまり広げてきませんでしたから、なんだか学生時代に戻ったようで懐かしかったのを覚えています。

余談ですが、この期間に新しい人と接する機会がぐっと増えたので、人を見極めることについても大いに勉強になりました。笑


➤委員長とリンさんの違い

しばらくのリンさんキャンペーン期間を経て、私は改めて「委員長」と「リンさん」の違いについて、考えていました。

私にとって、分かりやすかった「違い」といえば「笑顔」です。
委員長として、ピリピリと肌を刺すような緊張感を持って過ごしていた時も、私は絶対に「笑顔」だけは手放すことができませんでした。

幼い頃からのさまざまな経験で、それが「自分を守るもの」だと、自然に刷り込まれていたからでしょう。

しかし、リンさんとして笑っている時と、委員長として笑っている時とでは、自分の反応がだいぶ違うのです。
委員長の笑顔は、自分が笑いたい瞬間でなくても条件反射で顔を「笑顔の状態」にしているようなところがあったので、その後で一人になった瞬間「疲れた……」という実感が。

恐らく彼女の場合、たぶん笑顔が対人時の「鎧」のようなのものになっていたのだと思います。
使うことで自分を守り、他人を深くまで立ち入らせないような「拒絶」も含んでしまっている鎧です。
鎧は一見、守られて安心できる良いもののような気がしますが、その反面重たくて、使う人を疲れさせてしまうこともあるでしょう。

委員長は、いつしか「笑顔」を鎧のように使っていたのです。

対するリンさんの場合は、もっとお気楽なもの。笑
心の底から楽しんでいる結果、自然な衝動の「笑い」として出てきているので、まったく疲れには結びつかないのです。

ああ、だったらやっぱり通常表に出しておくべきなのはリンさんなのかな……と、私は考えました。
ただ、彼女のネックといえば直感的に動いてしまうところです。

能天気で底抜けに明るいのですが、慎重さに欠けて、あまり深く物事を考えてくれません。(と、リンさんのせいにしてみる。笑)

それはそれで、時には困ってしまいますよね……人間はバランスが大切ですから。


➤外交最強タッグ誕生!

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