認知症薬を飲んだら転ぶようになった理由
認知症薬を飲むと転びやすくなる?
副作用について調べてみると、認知症薬の使用によって転倒・転落につながる要因が列記されています。
◎眠気・ふらつき・めまい・注意力低下・失神・せん妄などの精神症状による障害
◎失調・脱力・筋緊張低下・パーキンソン症状・錐体外路症状などの運動症状の障害
ただ、認知症薬の主流とも言えるアリセプト服用による転倒・転落の副作用率は0.1~1%と、実はかなり低いんです。
アリセプトは、コリンエステラーゼという酵素を阻害することで認知症の症状を抑制できると期待されている、コリンエステラーゼ阻害薬の一種です。
コリンエステラーゼ阻害薬の副作用としては、どちらかと言うと転倒などよりも消化器症状などの方が重い。
しかし、アリセプトなどと一緒に服用することも可能なメマリーの服用者については、転倒・転落率は18%と、 急に高くなります。
また、メマリーを服用している方の多くが腎機能障害を合併しており、これも転倒率が高い一因になっている可能性があります。
と言うのも、メマリーを服用していて腎機能障害の合併がない場合の転倒・転落率は7%だったんです。
腎機能が低下すると、足にむくみが出たりして歩きにくくなります。
それが転倒率を上げている原因です。
また、メマリーとアリセプトを一緒に服用した例では、4週間以内にめまいやふらつきを訴えることが多いと、臨床試験から分かっています。
認知症薬の服用によってそういう良くない変化があることに気付いたら、主治医に減薬など相談した方がいいですよ。
「(認知症に)効果が出てないようだから増量しましょう」と言われたら、ちょっと慎重になってほしいんです。
かえって悪化する可能性の方が高い。
ちなみになんですが、アリセプト服用者の転倒率が少ないという話をしましたが、アリセプトでも歩行障害が起こる可能性はあるので注意してください。
「歩けない」と「転ぶ」は必ずしもイコールではありません。
認知症薬はクモの糸?
認知症の方は、何も認知機能の症状だけが発症するわけではありません。
奇声や興奮などは精神症状であって、認知症状に付随して見られる別の症状。
そのため、認知症治療において認知症薬だけ処方という方は想像以上に少なく、
・降圧剤
・抗不安薬
・向精神薬
・抗うつ薬
・脳梗塞治療薬
などを併用している場合が多いです。
認知症治療目線で言うと、これらは認知症関連薬ということになります。
たとえば降圧剤では、起立性低血圧が起こる可能性が高くなります。
起立性低血圧とは立ち上がった時にふらっとするもので、寝室で転倒することが多ければ、起立性低血圧に該当する人が多い。
その他、多くの降圧剤にはめまいなどの副作用があるので、注意が必要です。
他に、高齢者への抗精神病薬の投与を時間別に分けて観察した研究があります。
その研究の内容は「対象者の骨折の頻度」。
結果として、夜間に抗精神病薬を服用している人の骨折頻度の差はありませんでした。
ですが、日中にも服用していたケース7症例のうち、6症例に骨折があったとされています。
単純に、夜は寝てさえいれば、転んで骨折する事態にはなりにくい。
となると、日中の活動時間に抗精神病薬を服用することで、転倒リスクが高くなったと考えることができます。
きっと、認知症に苦しむ人にとって、認知症薬は天から垂れた蜘蛛の糸なんだと思います。
しかし、蜘蛛の糸はすがった分だけ切れやすくなるもの。
むしろ、思い切って減薬した人は、服薬を続けている人よりも状態が改善した事例が多いんです。
薬を絶対にやめろ!ということではありません。
だけど、その蜘蛛の糸にすがっても改善が見えてこないのなら、一度、認知症薬を服用すること自体を見直してほしい。
できるなら、もう少し別の形で、認知症改善に向けて動いてほしいと思います。