廃用症候群・サルコペニア・フレイルの違いとは?種類や症状についても解説します
昨今の介護や医療の話題では、いろんな専門用語が飛び交ってます。
例えば、
①廃用症候群
②サルコペニア
③フレイル
突然出てきて、当然のように話されても理解しにくいですよね。
この記事では、今後も介護現場で頻出する廃用症候群・サルコペニア・フレイルについて、それぞれ解説します。
廃用症候群とは
病気やケガなどで長期間安静を余儀なくされると、身体を動かす機会が減ります。
身体を動かす機会や時間が減ると、その分筋肉が弱くなったり、関節が固くなっていきます。
ここまでは何となくイメージできると思いますが、身体を動かさないことで弱っていくのは筋肉や関節だけではありません。
内臓の廃用症候群
内臓は、筋膜によって体中の筋肉とつながっています。
筋肉が弱くなったりすると、筋膜に引っ張られて内臓が正常な位置から下がり、内臓が機能不全を起こすんです。
内臓の状態が悪くなると
慢性的な不快感
消化不良
肝臓や腎臓による体の解毒機能低下
心不全
などにつながります。
心の廃用症候群
体と心はつながっています。
「心」というものが脳にあるのか、胸にあるのかはわかりません。
しかし、身体を動かさないことで脳への血流が低下し、脳機能が低下します。脳機能が低下すると、思考・理解・判断がうまくできなくなります。
もちろん意欲低下にもつながっていきます。
何か将来の夢などがあってとしても、夢を実現するための行動ができない・意欲が出ない状況にあれば、徐々にその思いはしぼんでしまいます。
これが俗にいう「(精神的に)病んでいる」という状況です。
身体を動かさないことによって、心も弱っていくんです。
「寝たきりになると認知症になる」と聞いたことはありませんか?
それは、心の廃用症候群のせい。
関係ない話ですが、昔は「心は腹にある」と言われていました。
正確には、「物事を考えるのは頭ではなく腹である」と信じられていたんです。
「腹を割って話す」という言葉を聞いたことあるかと思います。
これは「本音・本心で話すには腹を割って、腹の中を見せなきゃいけない」という考えが由来だそうで、腹を割って話す=本音で話すという意味になったんです。
その他起こり得る弊害
筋肉、内臓と心への影響についてお話ししましたが、詳細な弊害はまだまだあります。
食欲が低下し、誤嚥や逆流性食道炎の可能性が高くなる
便秘になりやすくなる
血管に血栓ができやすくなる
褥瘡(じょくそう=床ずれ)ができやすくなる
睡眠障害
これらが併発すれば、余計に起きて動くのが嫌になりますので、それによってさらに廃用症候群が進むことになります。
以上のように、身体を動かさないことで、身体だけでなく心まで弱っていき、生活に支障が出る状態を廃用症候群といいます。
サルコペニアとは
サルコペニアとは、加齢などによって起こる、進行性(徐々に進行する)で全身に現れる筋肉量と筋肉の減少による症候群で、身体機能障害はもちろん、場合によっては死のリスクを伴うものです。
語源
ギリシア語でサルコが「筋肉」、ペニアが「喪失」を意味します。
併せてサルコペニア=「筋肉の喪失」という造語で、筋肉・筋力の低下を指します。
なかなかうまくできた造語ですね。
原因
サルコペニアが起こる流れにも種類があります。
①一次性(原発性)サルコペニア
加齢性サルコペニアとも言います。
加齢以外に原因がない場合です。
②二次性サルコペニア
これは、さらに次のように分類されます。
身体活動性サルコペニア
ベッド上での長期安静や、運動をしない生活などが原因疾患性サルコペニア
重度臓器障害(内臓や脳)、悪性腫瘍や炎症・内分泌疾患などが原因栄養性サルコペニア
消化管疾患、吸収不良、食欲不振をきたす薬剤、エネルギー・タンパク質不足などが原因
もちろん、一次性と二次性が併発して起こる場合もあります。
人が生活上の動作を行う時、全身のあらゆる筋肉が活動します。
「立つ」「歩く」はもちろん、「噛む」「飲み込む」、「歯磨きをする」、「呼吸する」等々の動作全てに、筋肉が関わっているんです。
それがうまくできなくなる原因が、サルコペニアです。
諸説ありますが、寝たきりと嚥下障害の原因として、第1位は脳卒中、第2位はサルコペニアであるとさえ言われています。
フレイルとは
お元気な高齢者が要介護状態になるまでの中間に、フレイルという、中間層的な段階がある考え方が主流になってきました。
語源
海外の老年医学分野で使われるFrailty(フレイルティ)が語源で、「虚弱・老衰」を意味します。
筋力やバランスなどの身体的な問題、認知機能、精神状態、栄養状態などなど、幅広い意味で弱っている方を指します。
原因
フレイル状態になる原因は加齢によるものもありますが、「運動しなくなった」「ご近所さんと接する機会が減った」などが原因であることが多いです。
一言で言うと、心身の機能が低下して、要介護状態の手前(生活に支障が出るかもしれない)くらいに弱った状態をフレイルといいます。
最近フレイル予防という言葉がよく聞かれるようになりましたが、その予防の内容は、
運動
栄養
社会参加
とされています。
毎日程よい運動をする。
しっかり栄養を摂る。
人と関わる機会を持つ。
これがフレイルを予防するための3原則です。
廃用症候群・サルコペニア・フレイルの違い
廃用症候群というと、一般には「寝たきりなどによる筋肉の衰弱」と捉えられがちなんですが、実際には多くの高齢者が一次性サルコペニア(加齢によるもの)を合併しているという感じです。
強いて区別するなら、サルコペニアは筋肉のことのみを言うので、廃用症候群のひとつにサルコペニアが含まれると言うべきでしょうか。
また、廃用症候群の9割以上の患者に低栄養が認められたという報告があります。
廃用症候群・フレイルの違いについては、両者ともに心身の状態低下を指しているので、廃用症候群 ≒ フレイルと考えるとしっくりきますね。
ただ、ややこしいのがサルコペニアとフレイルの診断基準です。
サルコペニア・フレイルには、
サルコペニアは筋肉と筋力そのものについて
フレイルは、「筋肉を含む」身体機能低下きっかけで生活全般に影響することについて
といった微妙な違いがあります。
それを踏まえてみると、
廃用症候群(サルコペニア含む)とフレイルはほぼ同じ
〔廃用症候群 ≧ サルコペニア〕 ≒ フレイル
と考えて良いのかなと思います。
イメージ的にはフレイルの方が軽い印象があるかもしれません。
これは私の考えですが、廃用症候群とフレイルはやはり意味としては同じで、予防に努めて健康寿命を延ばしてもらえるよう、関心を得やすいように耳障りのいい言葉を使った(作った)のではないでしょうか。