青春18きっぷ、再び(前編)
これは熊本への2泊3日の旅行と、その足で休みなく旅をしたハードな5日間を描いた旅エッセイ。
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0日目
街の人の優しさとフィルム
コートをどちらにしようか迷ったが幸運にも晴れていたにで、青のコートを羽織ることにした。暑くないしちょうどいい。正解を選べたかもしれない。
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山形駅着。結構人がたくさん。早速18きっぷを買うために並んだ。
並んでいるとおばあちゃんが、時刻表を調べているのが目に入った。メモをゆっくりととる姿がなんだかいい。こうして幅広い年代の人が自分に合った方法で調べることができる場所があるのはいいなぁと思う。
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電車に乗り込む前、マテ茶と間食用にかわいい桜のクッキーを買った。マテ茶は思っていた味と違っていた。飲む度に「マズイ」と思う。
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今回フィルムを買うのを忘れていた。新庄の乗り換えの時間もあることだし、駅周辺にカメラ屋ないかなと調べた。ポツポツとあるようだったので、歩ける範囲で行ってみることにした。一軒目、休み。二件目、休み。試しに街の小さな家電屋さんに入ってみる。
「こんにちは〜 すみません、こちらにカメラのフィルムって置いてませんか?」
「ないですね〜」とお母さん。あちゃ〜って感じの顔で答えてくれる。
「そうですかぁ〜」同じ顔で返答。退散しようとすると
「カメラやさんならね、ここの道行って信号のところ曲がると吉田カメラさんってとこありますよ、えっとね… まだやってるよね?」奥からお父さんも出てきてやり取りしてくれた。わざわざ教えてくれるなんて優しすぎる。ありがとうございますと告げ店を出てGoogleマップで見てみた。
マップの表示には閉店と書かれていた。おっふ。でも地元の人しか知らない情報の可能性もある。行ってみることにした。今回は数年前に買ったタウン用のランニングシューズを履いてきた。スイスイ歩けるので、ちょっと急ぐ時に頼もしい。
行ってみると案の定閉店していた。残念。引き返そうかと思ったが、もう少しいくとカメラ館があるようだったのダメ元で行ってみた。
素敵な看板だった。店舗兼住宅のようだ。店舗の入り口と民家の入り口と、どっちがどっちなのかわからなかったので、まずはお店っぽいほうを開けようとする。開かない。今度は民家っぽい方を、ピンポンを押してみた。
「はぁい」おじいさんっぽい声。
「こんにちは。すみません、こちらってカメラ屋さんですか?」
「いいえ、違います」
完全に営業マンを返すためのトーンだった。そうだよね。わざわざ玄関先でこんな質問する客なんていないよね。おじいちゃん、対応合ってるよ。引き返そうとすると扉を開けてくれた。
「カメラ屋さんだとね、向こうに吉田カメラさんがあるんだけど、つい先日閉めちゃったんだよね」やはり閉店したようだ。どうして?と聞いてくれたので、フィルムが欲しいことを伝えると、
「あ〜フィルムねぇ、35ミリ?」
「はぁい…」そう答えるとおじいさん、
「ここら辺のカメラ屋さんにあるか聞いてあげましょうか?」
なんてことを言ってくれたのだ。そ、そんな、優しすぎる…!
電車の時間もあったので、お気持ちだけいただきお礼を言って後にした。
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夕方の電車はいい。眠ってる人、勉強している人、静かに俯く人…
光と影を見るのが好きだ。金属のバーに反射する太陽が美しい。眩しそうに冊子を読む人の未見のシワもいい。光と影が映し出す列車内はどこか物語を感じる。
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実家に帰り、熊本への出発前夜、眠れなくなっていた。これを「遠足前ワクワク眠れないよ〜症候群」という。結局眠ったのはたったの4時間ほどだった。
そして熊本旅行へ↓