VR演劇研究日誌:セリフが食えない
VR演劇はじめ
最近コロナの影響もあってオンラインで演劇をやるというケースをよく目にする。
配信は主にZOOMをみんな使っているようだ。
遠隔でやるならば地方に移住した自分にもできると思いこういうことをやってみたいと思ったが、せっかくVRのHMDもあるためVRでやってみたいと思った。
別に上演を急ぐ必要もないし、どういう表現が可能なのかを検証していきながら体を温めていきたい。
考えていること
物理法則からして現実空間と違うので、体の使い方から声の出し方から1から検証していく必要があると考えている。
昔、鈴木忠志氏が利賀村に演劇の拠点を移したのは、俳優がどこで稽古をするかが重要で、彼はコンクリートの上ではなく土の上を選んだという話だったような気がする。(出典忘れた)
また平田オリザ氏も早稲田大学の演劇サークルの稽古場を見学した時に、隣の教室で軽音サークルが練習したりしていて騒々しく、この環境だから早稲田大学出身の演劇人はパワフルなんだろうというようなことも書いていた。(平田氏は国際基督教大学)
自分が早稲田大学だったら「静かな演劇」は生まれなかっただろう、と。(出典は平田氏の著書だと思います)
研究日誌
大学時代のサークル仲間のうち今の交流のある友人たちが、VRにも興味があったりしたので彼らと一緒にお互いの予定を合わせてVR上で演劇の練習(とまではまだいっていない)をしている。
自分を入れて3人おり、機材構成はそれぞれOculusQuest、OculusRiftS、デスクトップPCである。一人デスクトップなのでCluster上で集まっている。
一人デスクトップなのは全然良い。現実世界でも体がどれくらい動くかは個性があるし。
Oculus組もフルトラッキングではないから体も現実世界の動きには程遠い。
最初にやったのは声の指向性の検証だ。
かつて自分たちの演劇サークルでは稽古として、声の指向性の訓練があった。
広めの教室が取れた時、教室の端に声を出す部員が立ち、反対側の端にそれを聞く部員が何人か間隔をおいて立ち声を出す部員に背を向けて立つ。
背を向けた部員の誰かに向かって短い発声をして、自分に向かって声をかけられていると感じた部員が手を挙げる。
狙い通りの部員のみが手を挙げるようになるように、指向性を身につける訓練だった。
これをClusterでも試した、が。あまりうまくは行かなかった。
Clusterの仕様として、声の指向性はあるようだが、どこでしゃべっても聞き取りやすいように音量が調整してあるようで、この訓練をするのは難しいと感じた。
また体の動きがHMDと両手のトラッカーだけでどれだけ表現できるか確認するためにジェスチャーゲームもやった。
これは単純にゲームとして楽しいと感じたけれど、ネタが小学生がやるようなシンプルなもので難易度が丁度いいくらいだった。
これはデスクトップは流石に難しいだろうということで、Oculus組だけがやった。
遅延を確認するためにジップザップゲームもやった。
ゲームとしてはギリギリできそうだったが、遅延がどうしてもあるのでテンポは緩やかなままだった。
遅延は500msくらいだと思う。
そして学生時代の脚本を読んだりした。
脚本を読むという体験は自分はとても久しぶりだったのだけど、結構楽しいな。
人生で一番脚本を読むのが楽しかったかも知れない。もしかしたらアバターを通じていることが余計な緊張感から解放してくれているのかもしれない。
あと脚本の中でセリフを食う(相手のセリフの終わりにかぶせて次のセリフをいうこと)シーンは結構発生する。
先程の遅延の影響もあって、セリフを食うというのはほぼできなかった。
500msの遅延は大きい。
実際、VRの中でもセリフを食うようなコミュニケーションってないのではないかと思う。
会話時のどうしても発生してしまう間こそがVRにおける対話のリアリティなのかもしれないと思った。
今後も少しずつ遊びながらVR空間での演劇の表現方法を研究していきたいと思う。
現実空間での参考にしつつも、それをVRに持ち込むのではなく、それを足がかりにVRでの表現を探求していきたい。
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