ピアノ伴奏から人生変わった娘の話
ただいま24歳の娘
中1のときの学校の音楽会で
クラスでピアノ伴奏をやってほしい、と
担任の先生に頼まれた、と帰ってきた娘が言った
『えっーー?なんで??他におるやろ』
娘の言葉を聞いた私が答えた
娘のクラスには、小学校の頃から
ピアノ伴奏をしてる上手い子が何人かいた
だいたい、ピアノ伴奏する子なんか決まってるし
しかも、音楽祭は合唱コンクールなので
伴奏はピアノのみで、間違ったらかなり目立つ
娘もそれがわかってるから
先生に言われたときも断ったらしいが
先生は、なぜか娘にやってもらいたいらしい
娘のクラスにいる上手い子は
娘と同じピアノ教室に通っていて
その母親もピアノの先生ってこともあり
めちゃくちゃ上手い
そんな子がいるのになんで娘にやらせるねん
と思ったし、娘も
『絶対無理、ほんま無理』
と少し泣きそうになっていたから
親の私も、娘に恥をかかすわけにいかない、と思い
ちょうど数日後に三者懇談があるから
それで、私からも断ろうと思っていた
そして、三者懇談の日、私は先生に
娘はあまり上手くないし
間違ったら大変なので娘じゃない方がいい
と、話して、娘もそうして欲しい、と伝えたが
先生は、娘に向かってこう言った
『○○(上手い子)は小学校のときからやってるし
たまには他の子もやらんと!大丈夫!できるって!
間違ったら、そりゃ恥ずかしいやろうけど笑
大丈夫!練習したらいけるやろ、頼んだで♪』
もう、なんか断れなかった
ホントなら
我が子が伴奏なんかしたら親としたら嬉しいし
小学校のときも、他の子が伴奏してるの見て
娘もいつか弾けたらいいなぁ、なんて思ったし
それが叶うのはものすごく喜ばしいことなのだが
娘には、荷が重すぎる……
でも、もう断れないしこれもなにかのキッカケだ
と思い、親子で腹を括った
『とにかく練習し!あそこまで言ってくれるんやし
ありがたいやん、頑張れ!』
娘も、そうやな、と頷いた
そこから、娘の猛特訓が始まった
ピアノ教室の先生にも頼み
合唱曲の演奏を見てもらいながら
ひたすら、練習に明け暮れた
そして、音楽会当日
夫もたまたま仕事が休みだったのもあり
一緒にビデオを持って見に行った
合唱は、課題曲と自由曲の2曲あり
娘は、自由曲の伴奏だった
いよいよ、自由曲で娘の伴奏の番
私は、胸の前で手を合わせ
“間違いませんように”と、祈るばかり
もう、怖くて見ていられなかった
そして静まりかえる中、娘のピアノ伴奏が始まった
始まっても怖くて祈るばかりだったが
前奏が終わったと同時に
生徒の優しい歌声が聞こえてきた途端
娘の緊張もほぐれたのか
そこから優雅に、堂々と娘が弾き出した
曲は、なんだったか忘れたが
とっても優しい合唱曲で、それが
娘のピアノの音色に合っていて、私も気が緩んで
ピアノの音色を聞いて、涙が出そうになった
それはそれは、とても楽しそうに弾いていた
クラスの生徒の歌声が、まるで
娘のピアノ伴奏を後押ししてるようにも見えた
娘のピアノの伴奏で
みんなが歌ってるのがなんだか夢のようだった
娘のクラスは、最優秀賞はとれなかったけど
先生はとても喜んで
娘のピアノ伴奏だったから歌声がまとまったんだ
と言ってくれたらしい
そして、娘はその経験がすごい自信となり
次の年も伴奏をすることになり
中3のときは、学年を代表して伴奏したりもした
一つの達成感が、人に自信を与える
それは思わぬところから訪れる
娘の演奏は、もちろん上手い子と比べたら
全然及ばないかもしれないが
大事なのは、そこではなかった
“やれるのか、やれないのか”ではなく
“やるか、やらないか”だった
この一件で、私は思った
なにかのお声がかかったとき、それは
自分の中の力を目覚めさせるチャンスなのだ、と
ソレを、力づくで回避することもできたけど
先生の声を最終的に素直に受け入れ
自分を奮い立たせたことで
娘は、一歩も二歩も前進できたのだ
そして、人前に出る楽しさや快感を知り
そこで達成することの喜びを知った
それが、娘の今後にも繋がっていったのだ
そして娘は
『あのとき先生、無理矢理やったけど
ピアノ弾け、って言ってくれて良かった
あれから私、変わったわ』
と、いまでも言っている
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