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「年収300万円同士で結婚して世帯年収600万円を目指す」が増えない理由

最近読んだ本の話

こんにちは。最近も結婚にまつわる色々な社会学者さんの本を読んでいます。

最近読んだのはこちらの2冊。

上野千鶴子『こんな世の中に誰がした?〜ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために〜』

山田昌弘『パラサイト難婚社会 』

どちらも日本を代表する家族社会学者さんの本で、婚活や結婚に関する記述を含んでいます。

私は「世帯年収600万を目指せば良い」に大変納得したのだが…

上野先生の本は、10年ほど前に読んだこちらの記事の続きが気になって購入しました。

実は当時大変炎上したこの記事。この記事にはこのような記述があります。(なお、炎上した理由は下記の引用部分が原因ではありません。)

それに、「給料が安くて子どもが産めない」と言うけれど、年収300万円の男女が結婚すれば、世帯年収は600万円になります。今の平均世帯年収の400万円台を軽く超えますし、子どもに高等教育を受けさせるにも十分な額です。ですから、女性は年収300万円を確保しつつ、年収300万円の男性と結婚して、出産後も仕事を辞めずに働き続ければいい。

https://woman-type.jp/wt/feature/171/

これを読んだ私はなるほどと思って、2回目の婚活では「二人で平均の世帯年収超えれば良いかな〜」と考え、男性の年収要件をかなり低めにして婚活したのですが、

実はこのように考える人はマイノリティーで、実際には「年収300万円の男女が結婚すれば、世帯年収は600万円に」もしくは「二人で平均世帯年収の達成を目指す」という結婚は増えなかったようです。

わたしが不思議に思うのは、年収三〇〇万円の男性と年収三〇〇万円の女性が結婚すれば合計で六〇〇万円になるのに、そういう結婚が増えていないこと。

こんな世の中に誰がした?〜ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために〜 p. 68

もとになる統計資料への言及がないので数値的にどの程度なのかはわかりませんが、例えば高年収男性ほど結婚している割合が高いことなどから見ても「年収300万円同士での結婚が増えていない」は、少なくともある程度は正なのだと思います。

でも、年収300万円同士の結婚が増えないのは何で?

では、なぜ「年収300万円同士の結婚」は増えなかったのでしょうか?

先の『こんな世の中に誰がした?』では「保守的な結婚観」が関連していそうだという予想は立てられています。

社会学者の調査では、保守的な結婚観を持つ男女ほど、婚姻率が低いことがわかっています。保守的な結婚観とは、結婚したら男が妻子を養い、女が家事育児を担当するのが当然、というものです。だから男は収入が低いと、妻子を養うことができないから結婚できないと思いこんでしまうし、女は収入の低い男性とは結婚したがりません。

こんな世の中に誰がした?〜ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために〜 p. 6

ただ、ではなぜ保守的な結婚観を捨てようとしないのか?という点については「なぜだろう?」と述べるまでで考察が終わってしまっていました。

なぜ保守的な結婚観を捨てて、お互い助け合って生きようと思わないのか不思議です。足りないところのある男女が、お互いを認め合って支え合う関係でいいじゃないですか。

こんな世の中に誰がした?〜ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために〜 p. 69

「保守的な結婚観」は親から子に受け継がれがち

この「なぜ、保守的な結婚観が変わらないのか」という問いには、別の本の考察を持ってくることである程度考察を深めることができました。

社会学者の山田昌弘先生の『パラサイト難婚社会』にはこのように書かれています。

目に見える経済状況や社会制度がどれほど変わろうと、人々の内面に息づく価値観には、「イナーシャ(慣性)」が存在します。どれほど新しい時代を生きているように見えても、幼い頃に親がふともらした言葉、子に言い聞かせた言葉、「勉強して良い大学に行きなさいよ」「良いお嫁さんになりなさい」「男なんだからしっかり家族を守らないと」という言葉や無言のプレッシャーは、しっかりと個人の意識に根を張り続けます。

パラサイト難婚社会 p.51

つまり、目の前の時代がどんなに移り変わろうと、親世代が子に言い聞かせてきた「価値観」はなかなか変らない。だから保守的な結婚観が残り続ける、というものです。

私は以前若者就労支援の分野で長く働いてきました。
そこでは、就職がうまくいかなかった若者に対し、親世代の「良い大学を出て良い会社に入れば人生は安泰である」という価値観が、有形無形の強いプレッシャーとなって本人たちにのしかかっていました。
なので、この「幼い頃に親がふともらした言葉」が「無言のプレッシャー」になるという捉え方は強く共感します。

そして山田先生は、子世代がこのような価値観を受け継いでいることが結婚が難しくなっている原因の一つだと続けています。

むしろ当時以上に今は学歴社会、塾歴社会と呼ばれる時代です。周囲の家庭は、子どもを塾やサマースクールに行かせて習い事もさせているのに、自分の場合はそれができないと悟った瞬間、多くの人の心に動揺が走ります。自分が「当たり前」と実感してきた生活レベルを実現できないような「結婚」なら、しない方がマシ。そう考える人が増えたことは、決して不思議ではありません。

パラサイト難婚社会 p.51

では、どうすれば結婚できるのか

しかし、保守的な結婚観を叶えることができるような相手は年々減ってきています。なぜなら日本では格差が広がっているからです。

「自分が「当たり前」と実感してきた生活レベルを実現できないような「結婚」なら、しない方がマシ」と割り切れないようであれば、保守的な結婚観を変えない限り、なかなか結婚にはたどり着けません。

では、一体どうすれは結婚したい人が結婚できるようになるのでしょうか。

ここまでの情報からまとめると、恐らく、こんなことが役に立つと思います。ただし、「どうすれば良いのか」のHow To 論を長く展開することは本論の趣旨ではありませんので、ここでは方向性を考えるだけにとどめておきます。

まずは「自分の結婚観が保守的かもしれない」と考えること、そしてそれを「変えたほうが良いのでは」と思うことが第一のステップになるでしょう。時代に合わせて考えを変えたほうが良いのではないか、と認識することが第一歩です。

その上で「一般的に"幸せ"と言われるような相手と結婚はしていないけど幸せそうに見える人」の話を聞いてみるのはいかがでしょう。文字で読むだけでも良いかもしれません。

例えば、こちらの『Greenz.jp』というWeb マガジンは、世間的な価値観を抜け出してオルタナティブな生き方をしている人の情報の宝庫です。

このような人達のことを見聞きすることで、結婚における「幸せ」の概念を拡張できるかもしれません。

また、女性は稼いで経済的に自立することも役に立ちそうです。相手に経済的に依存しなくて良いなら、大人気の年収の高い人をわざわざ選ばなくてもそれ以外の要素から自分に合う人を選べば良いはずなので。

「頭ではわかっているけど、自分の価値観や考え方を変えるのは難しい!」という人については、こちらの一連の記事が役に立つかもしれません。価値観を変えるための具体的なHow To 記事です。

まとめ

本記事では、最近読んだ本に刺激を受けて「年収300万円同士で結婚して世帯年収600万を目指す」という結婚がなぜ増えないのかを考察しました。

その結果、社会が変わったにも関わらず、人々が理想とする結婚観は親世代からさして変わっていないこと、すなわち「保守的な結婚観」が根底にあるのではないかと推察するに至りました。

では、どうすれば保守的な結婚観を変えられるのかは多くは言及しませんが、もしかしたら自分の結婚観が時代にあっていないのかもしれないと思うことが第一歩だと思っています。

皆さんが幸せな結婚を成就できますように…


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