Xのアンケートは話半分に聞こうという話
突然ですが、Xのアンケート機能、便利ですよね?
婚活界では仲人さんや婚活者さんが日々Xのアンケートで市場調査をされています。筆者も婚活垢をやっていたときはしばしばアンケートに婚活のヒントを貰いました😇✨
…が、少しでも社会調査をやったことのある方ならご賛同いただけると思うのですが、Xのアンケートは設問の書き方や選択肢が、厳密ではない。
個人の方が作っているので当然ですが、厳密ではないが故に「これでは聞きたいことが聞けていない」「バイアスがかかった調査結果が"事実"として拡散してしまっている」と思うことがままあリます。
ある程度ネットリテラシーのある方なら「ネットの情報は信頼するな」というのは至極当たり前なことだと思います。それに、言い方は悪いですが「たかがネット上のアンケート」にそこまでの厳密性を求めなくとも…という意見もご尤もです。Xのアンケートは一つのファンタジーとして楽しむならそれはそれで良いと思います。
ただ、婚活にポジティブな感情を抱いていない方が作成したアンケートでは、その人の抱える恨みや怒りがアンケートの設問や回答に反映されてしまいがちです。一方で、2回も婚活をした身からすると「この意見が"真実"のように拡散されてしまうのはちょっと勿体無いな」と思うので、アンケート結果のちょっと良い見方をお伝えしたくなってしまいました。
また、Xのアンケートを使って市場調査をされている仲人さんも、せっかく時間と手間を割いて作成されたアンケートが実は「言いたいことが聞けていない」アンケートだったら、それはそれでもったいないかしらと思います。婚活界にはもっと発展してほしいと願っている身なので、ささやかながら貢献できればとペンを執ることにしました。
婚活の話というよりは調査方法の話になってしまいますが、しばしお付き合いいただけると嬉しいです。
なお、アンケートを作成された方個人を批判する意図はないので、今回本文中で使用した設問と選択肢はもとのアンケートから少し内容を変えてあります。また、わかりやすさのために内容を少し「改悪」させて頂いた例もあります。あくまでもアンケート機能の使い方の例としてご参照いただければ幸いです。
同種の記事
本記事と同様、Xのアンケートの信頼性を問う記事としてはこちらの記事があります。こちらは、Xのアンケートは広くネット空間に客観的に意見を募っているように見えて、実はその母集団に偏りがある可能性を指摘した記事です。
私が読んだ当初は無料だったのですが、今は有料記事になってしまいました…🥲。ただ、こちらも婚活関連のツイートをネタに作成された記事ですので、ご興味のある方は合わせてご覧いただけると良いかと思います😊
アンケートで聞きたいことを聞くのはとても大変
前提として、アンケートで聞きたいことを聞くのはすごく大変だということを共有しておきたいと思います。社会調査士という専門資格もあるくらい、アンケートは質問も選択肢も作るのが難しいものなのです。
大学で社会科学系の専攻だった方はアンケート調査に関する科目を履修された方もいるかもしれません。いろいろと細かいルールがあるなと思われたことでしょう。でも、そうでもしないと聞きたいことは聞けないのです。
それは一体どういうことなのか。早速具体的事例を見ていきましょう。
事例①:選択肢が背反でない
まずはわかりやすいものから。
この設問のペインは、選択肢が背反ではないところです。つまり、「年収1500万になる」ことと「理想の女性と結ばれる」ことは両立できます。なのに、選択肢は一つしか選べないようになっています。
それどころか、年収1500万になったほうが理想の女性と結ばれる可能性は高まります。なので、打算的に考えると「年収1500万になる」を選んだほうがオトクということになってしまいます。
一つしか選べないのはXのアンケート機能の特性なので致し方ないのですが、打算的に答えた「年収1500万になる」に回答が引きずられ、そちらが本来あるべき数値以上に大きくなって出てしまう可能性があります。そうすると、恐らく設問が当初に聞きたかったであろう「愛と金、どちらが大事か」という疑問への回答は正確には反映されません。
それではどのように聞けばよいのでしょうか。元の質問をかなり改変してしまいますが、恐らくこれなら「愛か金か」が聞けると思います。
選択肢を排反にして、さらに「どちらも選ばない」という退路をカットしました。これでアンケートとしては成立します。
ただ、これでも「年収は引退まで今のまま」という設定がこれでよいのかはだいぶ迷いました。まだまだ改善の余地はありそうです。
事例②:ネガティブな聞き方をすると肯定的な回答が減る
次の例はXのアンケート機能を使っていないものですが、Xで拡散されていたものだったことと、設問の悪例として好例だったので載せておきます。個人が作ったものではなさそうだったのでそのままの掲載ですみません。
まず、誰が・誰に対して・何人に・どのような手法で取ったアンケートなのか不明なアンケートは信頼してはいけません。上記のアンケートも11人中8人が「思う」と答えれば「72%が"妥協してでも結婚したくない"と答えた」となってしまいます。
そのような調査の前提が怪しい、ということを認識した上で今回は「妥協してでも結婚したくない」という表現に注目したいと思います。
一般的に、アンケートではネガティブな言葉を使わないほうが良いです。本来あるべき数値以上にその選択肢を避ける人が多くなるからです。今回もこのような聞き方をしたら肯定的な答えをする人が増えるように思います。下の質問は上の画像のアンケートと同じことを聞いています。
いかがでしょう?だいぶ「そう思う」を選びたくなりませんでしたか?
最初の画像の例のように、否定的な質問文にすると人は「Yes」と答えるのを忌避してしまうのです。
事例③:選択肢がミーシーでない
また、Xのアンケート機能はシンプルなものですのであまり複雑なことは聞けません。一つのポストにたくさんの内容を詰め込みすぎると全ての選択肢を網羅できませんし、それ故に正確な分析ができません。
こちらは「場所」「支払い」「会う人のタイプ」三つのことを一つのポストで聞いてしまっています。
単純に選択肢が複雑で迷ってしまうというのもそうですが、選択肢のどの項目が結果に影響しているのか分からないため分析しづらくなっています。例えば、
という選択肢の組み合わせは、金銭的には男性にメリットしかないです。
ただ、実際にはこちらの選択肢の方が選ばれやすいように思います。
でも選択肢にないと本当にそうかどうかは分からないりません。「男性だって素敵な女性とお見合いしたいし、素敵な女性になら素敵なシチュエーションを用意したくなるよな」と予想しますが、あくまでも私の想像の域を出ません。結果として現れていないものは分析も考察もできないのです。
事例④:人はええかっこしいなのだ
最後に、こちらの例を紹介したいと思います。
これは、私ならこう聞きたいと思います。
理由は二つあって、一つは問題が出てきた文脈を踏まえた方が良いということ。もう一つは人は模範的な回答を選びがちというバイアスがあるからです。
まず1点目は、問題が出てきた文脈についてです。
かつて「女の子は頭空っぽでいい」と歌った歌詞が問題になったことがあります。
記事内でも書かれているように「女性が力を持つことを嫌がる男性」によって「女の子は頭空っぽでいい」とされ、その言説は維持されてきました。
その言説は、今でもなかなか強固なものがあります。なので、選択肢にもわざと男性の古券を揺るがしそうな「自分より」というワードを入れた方が良いです。そうすることで「賢い女性はモテるのか」というイシューに切り込んだ質問になります。
さらに「好きですか?」という聞き方よりも「結婚したいですか?」というワードを使うことによって、より問題を「自分ごと」として捉えてもらうようにしました。「好きになる」だけなら何の社会的制約もなく、綺麗事を言えてしまうので。
綺麗事を述べた実際の例で言うと、最近では育休に関する調査がありました。
この調査では育休は「取得しなくていい」という意見には男女ともに1割しか賛成しないのに対し、「自分は取得したいと思わない」と答えた男性は4割に達したという結果が出ています。
育休は取ったほうがもちろん良い。しかし、自分は取りたくない。このように、人は社会的に「良い」とされることを答えがちなのです。
まとめ:Xのアンケートは意見を募るには効果的
ここまでXのアンケートを散々信用ならないものであるかのように伝えてしまいました。すみません。ですが、社会調査として使うのはなかなかむずかしいというだけのことで、さまざまな意見を募るツールとしてはなかなか楽しいと思っています。
例えば、最近良いなと思ったアンケートの使い方はこんな感じです(元のアンケートを見失ってしまったので思い出して書いています)。
思わずほっこりしてしまいますよね。色々な人の意見が聞けてなるほどなーと思いながらアンケートを眺めていました。
私も婚活中迷ったときにはアンケートで意見を募って、大変助けていただきました。(例:「37歳だけどお相手の年齢に”30代半ばまで”と書いている人にお見合い申し込んで良いと思いますか?」など)
このように、意見を募るという使い方ではなかなか有用なツールだと思っていますし、他にも有用な使い方があればぜひ知りたいです。
Xを生かした婚活が、ますます発展すると良いなと思っています。
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